優しいはずの子どもがだんだん親に反抗的になり、ついに「クソババア」「うっせーな」などと暴言を吐く。思春期には多くの子が通る道だと思いつつも、どう対応すべきか戸惑う親も少なくないと思います。子ども心理に詳しい東京成徳大学教授の田村節子さんは「そのとき親が対応を誤ると、子どもがうまく自立できず、後々大きな問題に発展することもある」と言います。「クソババア」の裏にある子どもの心理と、親のNG行動とは?田村さんに詳しく教えていただきました。
親という壁を突破して自立する
── 反抗期に、親を拒否するような言葉を言う子どもの心理はどのようなものなのでしょうか?
田村さん:
女の子の場合、多くは小学4年生ごろ、男の子がそこから1~2年遅れて本格的な反抗期に突入します。それまでは親の言うこと、先生の言うことは絶対です。でも自我の芽生えが進むと、自分で自分のことは決めたくて、親に口出しされるのが嫌になっていきます。乱暴な言葉で親を拒否するようになるわけです。
「クソババア」とか「うっせーな」を、私は「思春期語」と呼んでいて、翻訳すると「お父さん、お母さん、放っておいてください」になります。実は、そういうことを言う前に、少し反抗してみるとか、子どもなりにサインを出していたりするんです。でも、そこで親がひかなかったりして、子どもの心に不満がくすぶり続けると、ある日、何かのきっかけで乱暴な言葉が出てきます。
でもそのとき、親がそれ以上踏み込まなければ、それ以上、反抗を強めることはほとんどありません。それに「放っておいてください」と同時に、「困ったら必ず助けてっていうから」という気持ちもちゃんとあります。

── 自立するためにいったん親と距離をとる必要があるんですね。
田村さん:
そうです。反抗期は、蚕で言えば、今まで幼虫だったのが自分の周りにまゆをつくっているような状態です。まゆという壁で親と距離をとって、自分なりに決断をする機会を少しずつ増やすなど、じっくり自分をつくっていきます。
まだ一人では不安だから、実際には友達とくっついているわけですけど、親とは壁を作って、自分なりにいろいろと試しながら成長していく。それが反抗期です。自分をつくり終えて、殻を破って出てきたら、もう平気なんですが、その途中で親が間違った行動をとると、上手く自立できません。