男性社会というイメージが強かった証券業界にあって、他企業に先駆けて女性社員の働きやすさを追求してきた大和証券。2007年に「女性活躍推進チーム」を発足させて以来、在宅勤務の導入や、保活サポートなど様々な制度を整えてきました。
男性育休の取得率はすでに100%を達成しているといいます。そんな大和証券が最近スタートさせたのが、男性社員向けの「妊婦エスコート休暇」と、女性社員同士が情報交換できる社内SNS「ANSWERS」です。どのような狙いがあるのか。同社人事部の高島正行さんと宮地志歩さんにお話を聞きました。
社長肝いりでスタートした女性活躍支援
──2007年に「女性活躍推進チーム」を発足させたというのは、ずいぶん早い印象です。
高島さん:
当時の社長が先進的な考え方を持っていて、ワークライフバランスや女性社員の働きやすさを重視していたんです。「女性が活躍しないとこれからはダメだ」ということで、女性がいなかった部署に女性を配置したり、4名の女性が同時に役員に就任したりしました。
当時の支店、特に店舗の裏の事務所部分は綺麗とは言いがたかったのですが、お客様に見えない仕事スペースも改装をしたり、女子トイレを改修したりして、職場環境も改善したと聞いています。それも女性活躍の一環だったんです。今ではすっかりきれいですよ。社長が交代してからも、女性が働きやすい職場にするために、さまざまな取り組みを続けています。
男性育休100%の先へ「大変なのは産後だけじゃない」
── 最近ではどのようなことをしていますか?
宮地さん:
2020年4月に「妊婦エスコート休暇」を新設しました。配偶者が妊娠中の男性社員向けの制度で、妊娠23週までは月1回、24~35週は月2回、36週以降は週1回休めます。妊婦検診に付き添ったり、両親学級に参加したり、パートナーのサポートや育児に関することなら休む目的は何でも構いません。
高島さん:
これまでも年休という形で休むことはできたのですが、休みやすくする狙いで「妊婦エスコート休暇」と名前を付けて制度化しました。
上司としても、こういう制度があったほうが、「おめでとう、休んできなよ」と自然な流れで声掛けをしやすくなると思います。そういう風土を醸成する目的もあります。
── 男性育休は社内でずいぶん浸透してきて、次は産前のサポートを充実させたのですね。
高島さん:
そうですね。男性育児休暇に関しては「育児サポート休暇」という名前を付けて2014年から推進してきました。「絶対休むように」と呼びかけて、今では利用率はほぼ100%です。複数回取る人もいるので100%を超えていると思います。
ただ、営業の人なんかだと1日しか休まないこともあって、それだとあまり育児参加という感じにならないので、20年4月から休暇の期間を「原則1週間以上」とすることにしました。
その流れで、「産後だけでなく、産前も大変だよね」ということになり、同じタイミングで妊婦エスコート休暇を新設することにしたんです。社内周知はもちろん、上司から対象者に休むよう声掛けをしますし、社長や役員、人事部が対象者の上司に声掛けをすることもあります。
女性社員がロールモデルと出会う場を提供したい
── 同じ悩みを持った社員が情報交換できる、社内ネットワークの構築も進めていると聞きました。
宮地さん:
2021年4月に、同じ目標や課題をもつ女性社員同士が情報交換できる仕組みを作りました。「仕事と育児を両立?」「資格取得にチャレンジしたい!」「語学力を高めたい!」「キャリアを描こう!」「他の部署はどんな仕事?」など、テーマ別に9つのグループを設けています。興味のあるチームに参加して、社内SNSで情報交換や悩み相談ができます。
SNSだけでなく、グループでランチミーティングをすることもあります。それから、「こういう相談をしたい」という具体的な希望があれば、グループの中からロールモデルとなりそうな社員を人事部が紹介もします。
── 反応はどうですか?
宮地さん:
参加者は結構多いです。私が関わっている「仕事と育児」のグループは300名弱ほど参加しています。それから、「他の部署はどんな仕事?」というグループも人気です。
女性はライフイベントも多いので、その時々で課題や悩みを持つことがあります。全社員の約半数が女性なので、決して女性が少数というわけではないのですが、支店単位で見ると同じ境遇の人がいないケースが多いんです。そこを上手くつなげていければと思っています。
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「職場で悩みを打ち明けるのに抵抗を感じる」「誰に相談したらいいのか分からない」「自分だけが悩んでいるように感じる」という働く女性は少なくありません。「ANSWERS」は長年女性の活躍支援に取り組んできた会社だからこそできる、女性の気持ちに寄り添った取り組みだと感じました。
取材・文・撮影/木村彩