家族はときに最も信頼できる存在であり、ときに自分の人生の縛りにもなる存在かもしれません。
昨今は「毒親」といった過干渉な親らを指摘する言葉も流行。親の影響によって生きにくさを感じてきたことを告白する芸能人も散見されてきました。累計600万部を超える作家の浅見帆帆子さんは著書の中で「『家族』という縛りから抜け出そう」と書いています。一体どういうことなのか話を伺いました。
それぞれの個として生きる
── 家族という縛りから抜け出すと著書でも書かれていますが、どういったことなのでしょうか。
浅見さん:
著書『やっと本当の自分で生きられる』でも書きましたが、これからの時代の生き方には、いろいろな選択肢が出てきて、家族とも違うそれぞれが自分だけの価値観を持つ自立した「個」となっていくんですよね。
家族とは別である本人の意図や希望に沿って生きる人が幸せになっていく時代になります。つまり「親子だから同じ考えを持たないといけない」という考えはなくなっていくんです。これまでは親だから、子供の人生に意見をしたり、同じ考えになるよう勧めたりすることもありました。それが家族としての「縛り」です。家を継がなければいけない、そういったものも「縛り」です。
例えば、「親だから介護しなくてはいけない」という思い込みも必要ありません。
家族の関係が薄くなるということではなく、「これが絶対に正しい!」なんていう関係性はなく、それぞれの家庭で違っていいし、それぞれの「個」でも違ってよくて、それを選べる時代になってきたということなんです。自分とは違う価値観の相手を「そんな考え方もあるのね」と家族で認めていけるといいですよね。
そういう違いを認め合う存在同士になりたいなら、家族でも、相手を尊重して相手の好きにさせてあげること、認めて放置してあげること、自由を認めてあげることが大切な時代となってきています。大切というか、それができている人たちが幸せになってきているということです。
ひとりを楽しむ時代
── お互いの自由な選択を認めていくことが家族としての「縛り」を抜け出て良い関係になっていくんですね。
浅見さん:
そうするとラクになりますね。自分の子どもに対しても「そっちを選んではダメ」と言いたくなるのは、そっちに行ったら失敗すると思うからです。でもその親の経験や価値観は、あくまでその人の狭い経験だけのものですよね。時代によって価値観も変わることはできます。その親の判断が正しいかはわからないのです。特にこれからの時代は「これが正解、王道」というものはなくなって、各人が好きなことを選択していける時代になるので、ある程度まで子どもが育ったら、自身で自由に選択させたほうがいいですよね。
今、日本でひとり暮らしをしている人が多くなったのは各自の価値観が細分化してきている証拠でしょう。それは「独りぼっち」という寂しさの感覚とは異なり、ひとりを楽しむことができる本当の自立を表しているのではないでしょうか。
家族であるから一緒に考えなければいけない、考えに従わなければいけないという枠ではなく、家族であってもなくても、それぞれの価値観、好みでいろいろな人と繋がれる時代になっています。他人であっても、家族のような感覚の相手も出てきています。
それぞれが自分にとって居心地の良い人との関係性を探して、ひとりを楽しめる時代になってきていると思います。
PROFILE 浅見帆帆子
取材・文/天野佳代子 写真提供/(株)ホホコスタイル