ネットでよくみかける「家計シミュレーション」。収入や家族構成、マイホームの購入状況などのデータを入力し、将来必要なお金や毎月の貯金額などが割り出せます。
ただ、家計再生コンサルタントの横山光昭さんは、「家計シミュレーションはFP(ファンナンシャルプランナー)と相談しながらのほうが圧倒的にいい」と言います。それはなぜでしょうか。
月いくら貯めるべきか、即答できますか?
なぜFPと一緒に、家計シミュレーションをしたほうが良いのか。その理由は、データの入力についてアドバイスを受けると、シミュレーションの精度が格段に違ってくるからです。
たとえば「老後資金がいくら必要ですか?」の入力項目があったとしましょう。パッと答えられますか?「5000万円あれば…、いいかな」とハッキリ答えられない人がほとんどでは?
老後に必要な金額は、人によってまったく異なります。世の中では2000万円必要、3000万円はあったほうがいいなどと言われますが、持ち家の有無や老後の生活スタイルなどのデータによって変わってきます。
いっぽう、月々貯めるべき金額も人によって異なります。こちらも、将来必要な貯金はもちろん、現在の貯金額や資産運用額、住宅ローンや子どもの有無、子どもの進路など、複数のデータの組み合わせで決まります。
つまり、老後に必要な金額も、月々の貯金すべき額も、一つひとつのデータを細かく考えて入力しないと、正確な算出ができません。それをひとりで行うのは、想像以上に難しいのです。
しかし、シミュレーションで金額がはじき出されると、信じてしまいがち。すると「月10万円貯めないと…」などと、データを鵜呑みにして、ムリな節約を始めたり、ストレスをためこむようになりかねません。
FPにシミュレーションを相談するメリット
そうならないためには、FPに家計シミュレーションを相談するのが得策です。FPによってはオリジナルの家計シミュレーションソフトを持っています。私が社長を務めるマイエフピーでも同様です。
FPが質問をしながら、細かい条件などを調整しつつ、データを入力していきます。有料ですが、だからこそ、より自分に合った精度の高いシミュレーションができるわけです。
高精度のシミュレーションをすると、「このままじゃまずい…」と落ち込む人もいるのですが、その結果は、あくまで「そのままの状態が続けば」の話。そこから改善すれば、未来はいくらでも変えられます。これは逆もしかりで、シミュレーションの結果が良くても油断していると、将来、足元をすくわれます。
1~2年に1回程度、定期的に家計シミュレーションを受けると良いでしょう。すると、貯金や運用ができているか、振り返る良い機会になるはずです。
シミュレーションがムダになるケースとは?
ちなみに、マイエフピーでは、すべてのお客様に家計シミュレーションをするわけではありません。
たとえば、独身で賃貸に暮らしている方。結婚するかどうかもわからず、子どもも何人かわからない。家はたぶん買うけどまだわからない…。このように将来の状況がまだ定まっていないと、シミュレーションは妄想でしかありません。
これではさすがにシミュレーションに説得力が保てません。ですので、このケースでは「お金をいただいてもできません」とお断りしています。
せっかく有料の家計シミュレーションを利用するなら、家族構成や住宅ローンの返済額などがある程度固まるまで待つことをおすすめします。それらの要素が確定してくれば、精度の高いシミュレーションができるはずです。
監修/横山光昭 取材・構成/杉山直隆 イラスト/村林タカノブ