種類の多いホワイトニング。その違いは?

ここ数年、歯を白くする「ホワイトニング」の認知度が高まっていますが、そのブームには危険もあると、歯科医師として治療にあたる森下真紀先生。

 

「専門医の立場からいえば、効果的なのは歯科医院で行う『オフィスホワイトニング』だけ」。それでは、巷にあふれるホワイトニングの効果ってどうなんですか?

「ホワイトニング」といっても効果はバラバラ

「最近インターネットで『ホワイトニング』を検索すると、『セルフホワイトニング』という言葉がたくさん出てきます。驚くほど価格が安いのですが、注意が必要です」

 

ホワイトニングとは歯を白くする施術のこと。ネットでは「オフィスホワイトニング」「セルフホワイトニング」「ホームホワイトニング」など、いろいろな種類のホワイトニングが見つかります。

 

「歯科医が行っているのが『オフィスホワイトニング』です。歯の色を、本来の色よりも白くする施術です。薬剤により歯の最表面にあるエナメル質の構造を変化させることで、歯を白くさせます」

 

オフィスホワイトニングは、効果が高いものの自由診療。1回1万5000円~5万円程度とけっこうお高いのが難。また、白さを持続するためには、定期的に施術を受ける必要もあります。

流行りの「セルフホワイトニング」とは?

セルフホワイトニングは、薬剤を使って歯の表面に付着した汚れを浮き上がらせ、除去する施術です。エステサロンや美容院など歯科医院外で行われ、1回3000円~5000円程度。

 

「セルフホワイトニングは歯の汚れを取り除いてきれいに見せる効果はあります。ただし自身のもとの歯の色以上に、白くすることはできません」

 

ネットで買える“ホームホワイトニング”商品は要注意

「ホームホワイトニング」は医師の管理のもと、患者が自宅で行うもの。一人ひとりに合わせて作ったマウスピースに薬剤を塗布し、一定時間装着します。

 

ホームホワイトニングはオフィスホワイトニングと同様、薬剤を使用し、自分自身の歯の色よりも白くさせる効果があります。オフィスホワイトングによるホワイトニング効果を持続させるため、オフィスホワイトニングとホームホワイトニングの併用をすすめる歯科医院もあります。

 

注意したいのは、インターネットでも「ホームホワイトニング」と似た名称の商品が販売されていること。価格は3000円〜2万円程度。一見、紛らわしいのですが、歯科医師が提供するホームホワイトニングとは別物です。

 

「日頃のケアに加えて、歯科医院での保険適用内の定期検診とクリーニング(※)を行うだけでも、多くの汚れは除去でき、歯の白さを実感できます。

 

特に、飲食や喫煙などによる歯の黄ばみが気になる人であれば、なおさらその効果を感じることができるはず。コストを考えれば、セルフホワイトニングや通販のホームホワイトニングを試す前に、一度、歯医者で掃除してもらってから考えてはどうでしょうか」

(※)審美目的のクリーニングの場合、保険適用外になる場合があります。

コーヒーやお茶を飲む前後のアレが効果的

それではオフィスホワイトニング以外で、歯を白くすることはできないのでしょうか。森下先生は、「まず、歯につきやすい汚れを除去していくのが第一。それほど費用をかけずに行えますよ」といいます。

 

「茶、コーヒー、ワインなどの常飲や喫煙習慣は、歯を黄ばませる原因です。日々の食事で意外と色がつくもの。ホワイトニング効果を謳う歯磨き粉は、着色や汚れを浮かせて取り、つきにくくする効果があるので使って損はありません。

 

大事なのは、ある程度の金額のものを選ぶことです。最近では歯を傷つけずに汚れをとる、ホワイトニング用の歯磨き粉も出ています」

 

ただし、歯の黄ばみを取ろうとするあまり、歯磨きの度に力を入れてゴシゴシ磨くのは問題と森下先生。歯磨きはいつでも「力を入れすぎず、やさしく」です。

 

そうしないとエナメル質に傷がついたり、歯ぐきを傷めてしまう恐れがあります。またコーヒーや紅茶を飲む前と後に、水でブクブクうがいをするのもよい方法だそう。色素を定着させにくくしてくれます。

 

先生は患者さんに、3か月に1回の定期検診をすすめています。その際にクリーニングも一緒に行えば、普段の歯磨きで落とせない黄ばみがきれいになると森下先生。

 

「もともと黄ばみのある日本人の歯でも、本来の色を取り戻せば印象は変わります。オフィスホワイトニングができないからとあきらめず、身近なことから試してはいかがでしょうか」

歯の健康が思っている以上に大事な訳

PROFILE 森下真紀さん

森下真紀先生
歯科医師・歯学博士・歯科総合研究所代表取締役社長(https://www.shikasouken.co.jp/)。東京医科歯科大学卒業。英国キングスカレッジ・ロンドン歯学部に留学後、東京医科歯科大学大学院にて博士号を取得。著書『世界の一流はなぜ歯に気をつかうのか』(ダイヤモンド社/2020年)

取材・文/長根典子

歯の健康が思っている以上に大事な訳