共働き時代に合った私らしい生き方・働き方を模索するCHANTO総研。
オリジナル化粧品ブランド「マナラ」の開発・販売などを展開する株式会社ランクアップ。「たった一人の悩みを解決することで多くの人の幸せに貢献する」。そんな思いが込められた製品は、女性だけでなく男性からも支持されています。
女性社員の半数がママ社員というランクアップでは、女性が長く活躍し続けるためのサポートが充実しています。病児シッターの自己負担額は1回300円、また子連れ出社も可能です。
こうした充実した取り組みを始めた背景には、ランクアップを設立した代表取締役の岩崎裕美子さん自身の経験と想いがありました。
ママ社員もフルタイム社員と同じ責任のある仕事で活躍
── ランクアップでは、子育て中の女性も、妊娠前と同じように責任ある仕事を任されるそうですね。
岩崎さん(ランクアップ):
そうなんです。ママ社員も、フルタイムの社員と同じように責任をもって仕事をしています。産休・育休をとって復職した際も、妊娠前よりも負担の軽い仕事で働いてもらうのではなく、限られた時間で同じ責任感を持って業務にあたっています。それができる秘訣は、長時間労働をしないことです。
── 長時間労働、ですか?
岩崎さん(ランクアップ):
はい。私は以前、いわゆるブラック企業で働いていたことがあって。当時、その会社では深夜残業が当たり前で、結婚や出産しながら働くことは諦めるしかない環境でした。
その辛い経験から、「女性でも一生活躍し続けられる会社を作ろう」と一念発起して起業したのがランクアップです。
長時間労働を禁止し、子育てしながら働ける環境を作りました。その結果、女性社員の出産が増え、今では女性社員の約半数がママ社員として活躍しています。
── 岩崎さんご自身の辛い経験があって、出産後も安心して働ける環境づくりを実現したのですね。ランクアップは子連れ出社制度もあると聞きました。
岩崎さん(ランクアップ):
子連れ出社は、私自身の悩みから始まった制度です。あるとき、夏休み中に子どもを学童に預けていたのですが、「学童に行きたくない!」と泣き出してしまったことがありました。
でも、子どもを預けられる場所がないと仕事ができません。そこで仕方なく子どもを連れて出勤したのですが、子どもは私が働く姿を見ながら宿題やお絵描きをして過ごしていて、特に問題なく働けることに気づきました。
このことがきっかけで子連れ出社を制度化しました。この制度は子育て中のママ社員から大好評で、夏休みなどの長期休暇は、ママ社員の横で宿題をする子どもたちが増え、子育てしながら働くママの強い味方といえる制度となったと思います。
病児シッターは1回300円。子どもの病気時の負担を軽減
── 子どもが病気にかかったときには、病児シッターを自己負担300円で利用できるそうですね。
岩崎さん(ランクアップ):
そうなんです。ランクアップの設立時は、長時間労働さえなければ子育てしながら働けると思っていました。でも、そこには大きな落とし穴があって。
それは子どもの突発的な体調不良です。保育園や学校に通う子どもたちは、風邪をうつされるなど体調不良を起こしやすいですよね。子どもが体調不良になると、たいていママが看病のために会社を休まなくてはなりません。
そのため、ママ社員は子どもの看病で突発的に会社を休むことが多くなります。急な休みが続くと、同僚からは「ママにはやっぱり責任ある仕事は任せられない」と評価される恐れがありますし、ママ本人も「会社や同僚に迷惑をかけている」という気持ちになりがちです。最終的には退職という選択を選んでしまうかもしれません。
さらに、責任ある仕事を任される場合は、子どもが病気でも、どうしても穴をあけられない業務があります。そんなときに休まなくてすむために、病児ベビーシッター制度を導入したのです。
この制度のおかげで、どうしても出勤しなくてはいけないときは、病児シッターを頼むことで出勤できるため安心して仕事に専念できます。同僚の負担も減るので、過去にはウイルス性の風邪の流行期などに月に20万円分利用する社員も。本当に助かるという声が多数寄せられています。
コロナ禍をきっかけにスーパーフレックス制度を導入
── 「やりがいのある仕事を続けたい」という働くママたちの悩みに寄り添ったサポートが充実していますね。ほかにも独自の取り組みはありますか?
岩崎さん(ランクアップ):
2020年は、コロナ禍で小学校が休校した場合に備えて、スーパーフレックス制度を導入しました。突然の休校で子どもが家にいる場合にスムーズに業務を行うにはどうすればいいか悩んだ結果、始めた制度です。
ルールは、朝5時~夜22時までの間に8時間働くこと。例えば、朝5時~9時まで4時間働いたら、日中は子どもと過ごし、17時~21時まで4時間働くというワークスタイルが可能になります。パパが在宅している場合は、子どもの世話をパパと分担しながら働けると好評です。
さらに最近「土日の仕事もOK」という制度を試験的に導入しました。ママが平日会社を休んで子どもの世話をする代わりに、土日は家族に子どもを見てもらって働くというものです。社員から自発的に上長へ申請して利用できるので、さらに柔軟な働き方が可能になると期待しています。
使わない制度はなくし本当に必要な制度で社員を支える
── 斬新で個人の悩みに寄り添った制度だと思います。これらの制度を活用されている社員の声を聞かせてください。
岩崎さん(ランクアップ):
製品開発部に所属しているママ社員の声を紹介します。
ランクアップでは必要な制度はスピーディに取り入れて、使わない制度はどんどんなくしていきます。その柔軟性や、社員が本当に必要としている支援策を導入する、という経営者の考え方が好きです。私は社内でも出産が早かったほうなので、病児シッターや子連れ出社などを最初に使った一人でした。また、スーパーフレックス制度は私が改善提案を出しました。自分で勤務時間の裁量をしながら働けるのは、例えば子どもの行事や面談で決まった時間に行かなければいけないときなどはとても助かります。
制度があっても活用されないのでは意味がなく、活用しやすい制度を導入していくことが大切だとランクアップでの環境を通して思います。ステージが変わっても仕事を諦めずにいられる環境は本当にありがたいです。
男女問わず活躍し続けたい人が諦めずにすむ社会に
── 一人ひとりのライフスタイルにあわせて柔軟に働く環境を改善しているのがよくわかりました。今、感じている課題は何でしょうか?
岩崎さん(ランクアップ):
復職後、ママだけが疲れる環境になりがちな日本の現状に課題を感じています。夫婦で一緒に子育てに参画していく意識が社会全体で必要だと思います。日本中の企業で「女性活躍推進」や「パパも使える制度」と、性別を限定しない制度ができることが理想です。
社内にも課題があります。働きやすい制度を導入すればするほど、ママ社員の配偶者側が「ママの会社は休みやすいよね」と判断してしまい、結局ママ社員に負担がかかる場合があるんです。
本来なら病児ベビーシッター代金は、パパの会社に半額を負担してほしい。ただ今の時代、育児でパパが会社を休んでばかりではパパが職を失う可能性があるのも現実です。それもあって結局ママのほうが多く子育てに関わっている状況は否めません。
現状はいまだに女性に負担がかかっている子育てですが、将来は男女問わず、一生活躍し続けたい人に諦めて欲しくない。誰もがライフステージの変化によって諦めなくてもいい社会を目指して、これからも挑戦を続けたいです。
…
代表の悩みから生まれた「やりがいのある仕事を諦めない環境づくり」は、ママ社員一人ひとりの想いや事情に寄り添い、日々アップデートされています。誰もが活躍し続けられる社会が実現するよう、ランクアップの取り組みが広がることを願ってやみません。
【会社概要】
社名: 株式会社ランクアップ
設立年月日: 2005年6月10日
業種: 卸売業・小売業
事業内容: オリジナルブランド「マナラ」「アールオム」「アクナル」の開発および販売
取材・文/高梨真紀