共働き時代に合った私らしい生き方・働き方を模索するCHANTO総研。

 

「男性版産休」が国会で成立し話題になる前から、同様の制度を導入してきた株式会社リクルートマネジメントソリューションズ。

 

前回は、人事や広報の皆さんに制度誕生の経緯や想い、運用の秘訣を伺いました。

 

今回は、オリンピック開催の有無に翻弄されたコロナ禍の2020年夏に、制度を利用した加藤駿介さん・鶴田美有さんご夫婦にお話を伺います。

リクルートマネージメントソリューションズ_家族写真
加藤さん(左)鶴田さん(右)夫婦とお子さん

コロナ禍の初産でも大丈夫と思えた

—— 2020年夏に出産された鶴田さん。2020年といえばコロナ禍で、実家などのサポートも受けにくい状況でした。そんな中、子どもが満1歳の誕生月末日まで1日単位で取得できる「妻出産休暇」は、ありがたかったでしょうね。


鶴田さん:

はい、でも当初はコロナではなく、オリンピックを想定して「妻出産休暇」を利用する予定だったんです。

 

出産予定日だった2020年7月はもともとオリンピックの開催が予定されていた時期でした。私たち夫婦の家も実家も、どちらもオリンピック会場のある地域。影響を受けることはわかっていたので、里帰り出産はせず東京で産むことを考えていました。

 

初産でしたが、夫が「妻出産休暇」を取得できるから里帰りしなくても大丈夫かなと。

 

でも実際はコロナの流行でオリンピックは1年延期になりました。出産当時はコロナ禍で、親は出産に立ち会えないのはもちろん、孫を見に来ることさえもできませんでした。

 

産後も、コロナの感染拡大は収まらず“親に手伝ってもらう”という選択肢は、自然と消えていましたね。まさに、夫と二人で乗りきるしかない状況でした。

 

当初の想定とは違いましたが、そんな状況下で夫が「妻出産休暇」を使って、そばにいてくれたことは本当にありがたかったです。

 

何が一番ありがたかったかと言うと「話を聞いてくれた」ことです。

 

加藤さん:

私たちの場合、「妻出産休暇」の利用は、妻の精神的なサポートが一番の目的でした。

 

子どもの健診など外出の予定に合わせて利用もしましたが、それよりも妻の“話し相手”として家にいることが精神的なサポートに繋がったと思っています。

「ちょっと今いい?」が精神的な支えになる

—— 妻の出産当日から使える制度なんですよね?立ち会いのときに休暇は取得されましたか。


加藤さん:

はい、妻出産の当日から使える制度です。ですが、出産日がたまたま土曜日だったので休暇は利用しませんでした。子どもが1歳になるまでの間、20日付与される休暇制度なので、その後は1年間かけて定期的に利用していました。

 

—— 先ほど言われた妻の精神的サポートを目的とした利用ですか?


鶴田さん:

夫が休暇を取得して家にいてくれることで、私は夫に掃除をお願いしたり、睡眠をとったりすることができました。ほかにも、インターホンが鳴ったときや電話に出たいときなど「ちょっと今いい?」という瞬間に頼れたのは大きかったです。

 

産前はハードワークだったので、赤ちゃんと二人きりの毎日に閉塞感もありましたが、夫が休暇を取った日は「今日は大人と喋った」と思えました。

 

本当に些細なことですが、夫が家にいる日は、私の気持ちは安定していましたね。いち早く育児に慣れてもらい、パパとしての戦力を求めるより「夫婦の会話」を重ねていくことで、育児を通じたお互いの考えを理解しあい、家族一緒に成長していくような毎日を感じていました。

 

加藤さん:

そうした妻の状況に、自分が役に立てたのは嬉しかったです。

 

お互いストレスをためないよういろいろ工夫もしていますが、その中でも「夫婦の会話」は、妻を育児だけの生活にさせないため、とても大事なものだというのが私の実感です。

リクルートマネージメントソリューションズ_テレカン写真
鶴田さん(左)と加藤さん(右)

—— 1日単位で取得でき、自分流に使える制度のメリットをしっかり活用されていますね!

 

鶴田さん:

同時期に出産した知人の中には「夫の仕事が忙しく頼れない」などという話もあり、私たちはこの制度に随分助けられたと思っています。

多忙な管理職でも取得できたわけ

—— 加藤さんは、入社10年目、営業部門でマネジャーをされています。管理職という立場だと、休暇といえどもメールなどで部下に指示をしなくてはならない、といったことはありませんでしたか?


加藤さん:

そうですね、多少はありますがそう多くはありません。まとまった休みではなく、こまめに取得しているので、よほど急ぎの案件でなければ、部下から連絡が来るようなことはないです。

リクルートマネージメントソリューションズ_加藤さんとお子さん
加藤さんとお子さん

——管理職は多忙だと思いますが、仕事が終わらず結局「妻出産休暇」が取れなかった、という状況になったことは?


加藤さん:

成果を達成する責任はあるので、予定通り取得することは簡単なことではないのですが、 マネジャーでも取得できることを後輩たちに見せていきたい想いもあり、工夫して取得するようにしていました。

 

具体的には、マネジャーになる前から効率的に仕事をやりきる方法を確立しておいたり、 休暇を取る際はそのスケジュールに合わせて仕事の段取りを組んだりしたことが効果的だったと思います。

 

それに弊社には、「休暇を含む働き方の自由」を裁量を持って使える風土が根づいているので、「管理職だから取りづらい」といった雰囲気もありません。むしろ、上司も出産・育児への感度が高いので「妻出産休暇」に対する理解があります。

 

今後は、「妻出産休暇」取得者である私が、プロフェッショナルとして働く姿を後輩に見せられたら、と思います。


                    …

 

結果をきちんと出す働き方を目指してきたので、多忙により制度利用を諦めたことはないという加藤さんの言葉が印象的でした。

 

制度を活用することで、より生き生きと働き、仕事へのモチベーションも高めている加藤さん鶴田さんご夫婦。

 

社員想いの制度と効率的な働き方を目指す社員の姿勢が、より良い組織づくりの相乗効果をあげているようです。

【会社概要】
社名:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
設立年月日:1989年
業種:経営・人事コンサルティング
事業内容:人材採用、人材開発、組織開発、制度構築

取材・文/名塚千佳子