「中学受験」って、裕福な家庭の話じゃないの?家計再生コンサルタントの横山光昭さんに聞くと、「収入がそこまで高くなくても、子どもを私立中学に通わせている人はいます。やりくりすれば可能です」といいます。

 

ただ、「収入よりも重要なことがある」と付け加えます。それは何でしょうか?

実際、私立中学に通うといくらかかるの?

まずは私立中学に通うと、どれぐらいお金がかかるのでしょうか?データから見てみましょう。

 

文部科学省の「平成30年・子どもの学習費調査」によると、私立中学校に進学した場合にかかる年間の学習費は約140.6万円でした。月で割ると11.7万円。ちなみに、公立の場合は48.8万円なので、月4万円程度。やはり私立はそれなりにお金がかかります。

 

私立中学にかかるお金はそれだけではありません。大きくのしかかるのは「塾」の費用です。難関中学の試験対策をするために、最近は、小学3年の2月から進学塾に行くことが主流になっています。だいたい3年間通うと考えた方が良いでしょう。

 

進学塾に入ると、月々の授業料だけでなく教材費や季節講習、テスト代など、多くの費用がかかってきます。塾にもよりますが、費用は3年間で200250万円が相場です。加えて、受験料も1校につき2万円はかかります。塾の費用も考えると、教育費は、小学4年から中学3年の6年間で600万円以上かかるといって良いでしょう。

 

このように、私立中学にまつわる教育費の負担は決して小さくありません。教育費をかけすぎたことで、家計を圧迫し、自分たちの老後資金がなくなってしまったケースを、私もいくつも見てきました。

 

ただ、親が高年収の人しか進学できないかというと、そうとは限りません。子どもが小さなころから、他の出費を抑えて、私立中学の進学費用を貯めている。その条件がクリアできる家庭なら、進学は十分可能です。要は私立中学にかかる費用を甘く見ないことです。

親の意思だけで中学受験させると、家計にも悪影響

中学受験に関して重要なのは、親の年収よりも「子どもの意思」です。子ども自身が本当に私立中学に行きたいのか。行きたい明確な理由があるのか。これは、子どもの教育上はもちろん、家計にも大きく影響してきます。

 

子どもが中学受験に消極的なのに、親が強引に行かせようとすると、さらに出費がかさむことが少なくないからです。大手の進学塾は生徒数が多いので、手取り足取り教えてくれるわけではありません。そのため、子どもの意欲が低いと、ついていけなくなりがちです。

 

それでも我が子を私立に行かせたい親はどうするか。進学塾に加えて、個人指導の塾にも通わせるようになります。すると、さらに費用がかさみます。ある個人指導塾は、仮に小学6年生に週2回通塾させると、月2.5万円。年間にすると30万円の追加出費です。

 

こういう想定外のお金を使っていると、貯金がさらに減ってしまいます。すると、その他のリスクが降りかかってきたときに対応できなくなるわけです。

子どものやる気が低ければ「撤退」も大切

私は教育の専門家ではありませんが、ファイナンシャルプランナーの立場から言っても、私立中学受験は途中で「撤退」することも大切だと思います。本人のモチベーションがないのにムリに行かせても、良いことはありません。

 

実際、横山家では公立中学に進んだ子も、私立に進んだ子も両方いるのですが、私立に進学したのは完全に本人の意思です。私立に行きたい子は小学6年の時だけ塾に行くことを許可しましたが、自分が行きたいと言っただけあり、よく勉強していました。こうした経験から、私立受験は本人の意思次第だと痛感しています。

監修/横山光昭 取材・構成/杉山直隆 イラスト/村林タカノブ
参考/文部科学省「子どもの学習費調査」 https://www.mext.go.jp/content/20191212-mxt_chousa01-000003123_03.pdf
日能研 https://www.nichinoken.co.jp/guide/before/05.html
SAPIX https://www.sapientica.com/faq/
早稲田アカデミー https://www.waseda-ac.co.jp/cost/