不登校への無理解

「日中どんなに育児でイライラしても、子どもの寝顔を見ると可愛くて苦労もみんな忘れてしまう」なんてことをおっしゃる方も多いですが、皆さんはいかがですか?

 

確かに子どもは可愛い。寝顔はなお可愛い。でも、そんなにスッキリ苦労を忘れてしまえるものでしょうか…?

 

我が家の同居義母(70代後半)の子育て論はというと…?

「学校に行きたくない孫」を不思議がる義母

長引くコロナ禍で、楽しみにしていた学校行事も軒並み延期、外出も思うようにできなかった頃、我が家の子どもたち二人とも、学校へ行き渋っていた時期がありました。

 

いじめられていたり、何か決定的に辛いことがあるわけではないそうなのですが、なんとなく疲れる、毎日学校に行きたくない気持ちになる、とのこと。

 

私と夫は、こんなご時世だしそれも無理もないことか…と、あまり無理強いしないように、担任の先生やスクールカウンセラーの先生にも調整をお願いし、基本的には見守る方針でいました。

 

遅刻しても、保健室登校にしてもいいし、どうしても行きたくないときは行かなくてもいいよ、という方向で、まずは本人の気持ちをゆっくり休ませるのが先決だという結論に達したのです。

 

そこで納得がいかないのが、根っからポジティブで気力!体力!活力!というタイプの義母。

 

これまでの同居経験から、表立って子どもたちに過度に干渉することはないのですが、子どもたちがいない時、私に向かって言うのです。

 

「どうして孫ちゃんたちは学校に行きたくないのかしら?私が子どもの頃なんて、家にいても手伝い(農業)をさせられるだけだし、学校に行っていた方が楽しかったのに。学校に行きたくないなんて思ったこと一度もなかったわ」と。

子どもに無理強いはできないから

私自身、どちらかというと学校に行きたくないほうの子どもだったので、義母の意見にはまったく同意しかねます。

 

「学校に行かないなんて言ったら父親に殴られたわよ。学校より家のほうが居心地がいいのがいけないのかしら…」などと真顔で言う義母。

 

いやいや、答えが出てるじゃないですか…。

 

「畑を荒らす害獣じゃないんですから、居心地の悪い環境を作って学校に追い出すような発想はどうかと思いますよ?

 

たぶん昔も学校に行きたくない子はたくさんいたけど、そういう風に行かないと殴られたりするから仕方なく行ってたんじゃないですか?」

 

と、精一杯の抵抗をしましたが、義母はまだ納得がいかない様子。

 

こういう感覚、やはり年代的な隔たりを感じたりもします。昔の子どもはまた大変な面がたくさんあったとは思いますが、今の子どもの抱える悩みと単純に比較できるものではないですよね…。

 

我が家の子どもたちは、紆余曲折あり、たまに息抜き的に自主休校を挟みながら、今ではそこそこ楽しそうに学校に通っています。

 

もはやおんぶも抱っこもできないほど成長した二人の背中を見ながら、学校に行けと無理強いすることがそもそも不可能だよなぁ、本人が納得しないと…とつくづく思うのです。

働いていた義母、食事はどうしてた?

また、最近になって私が新しい仕事を始め、義母に夕飯の支度をお願いすることも増えてきました。

 

「私も息子たちが中学生になってから働きはじめたけど、ご飯作ってくれる人はいなかったわ~」という義母。

 

私に対する若干の嫌味を感じてイラっとしつつも、「じゃあ食事の支度大変だったんですね、いつ作ってたんですか?」と聞くと

 

「…いつ作ってたかしら。から揚げとかトンカツとか買ってきて、野菜のあんかけ作ってそれをかけたりしてたわね」とのこと。

 

総菜をめいっぱい活用してるじゃないですか…!と叫びたいのをこらえ、「でも毎日揚げ物買ってくるわけじゃないですよね?朝とか週末とかに作り置きしてたんですか?」と聞くと、

 

「作り置きはあんまりした記憶ないわね~…毎日何食べてたのかしら。大変だったことって忘れちゃうものね」とあっけらかんという義母。

 

ちなみに夫や義父に同じ質問をしても、「…何食べてたっけ?」「…何かは食べてたと思うけど(そりゃそうだ)…」と、さっぱり要領を得ない返答です。

 

そんなことある?家族そろってどれだけ過去にこだわりがないのだ…?

私は絶対、育児の苦労を忘れない

そういえば義母は、私に3人目の子を産むことを勧めるときも「大変だけどそんなこと過ぎちゃえばみんな忘れるわよ~」と何度もいいました。確かに、義母は(そしてたぶん義父も夫も)そういうタイプなんだな…とつくづく感じたエピソードでした。

 

ちなみに私は無理です!

 

息子が寝なかったことも落ち着きなかったことも、娘が頑固だったことも、ご飯作るのめんどうだったことも全部、克明に覚えてます!とあらためて義母との性格の違いを痛感するのでした。

 

私も、年を重ねればいつか、この家事育児や、三世代同居の苦労を忘れる日が来るのでしょうか…そして忘れたほうが幸せなのでしょうか…なんとも哲学的な問題です。

 

文/甘木サカヱ イラスト/ホリナルミ