「職場や仕事関係の方への結婚・出産祝いは、相手の状況に配慮してお祝いするのがマナー。それ以外のお祝いも、同僚と相談して決めるとよいでしょう」

 

ビジネスーシーンにおける結婚祝いと出産祝いについて、コミュニケーション・マナー講師の松原奈緒美さんに教えていただきました。

結婚・出産の報告。まずは「おめでとう」の気持ちを伝えて

30〜40代の働く女性にとって、職場の同僚の結婚や出産のお祝いは、身近なお祝いごとではないでしょうか。

 

報告を受けたら、まずは「おめでとう」の気持ちをしっかり伝えましょう。

 

聞きたいことがたくさんあるかもしれませんが、詮索をするようにプライベートに立ち入ったり、ネガティブな話題を持ち出したりしないように配慮することも大切です。相手の状況に合わせた会話ができればマナー上手。

 

また、おめでたい話題とはいえ、結婚や妊娠、出産はセンシティブなことでもあります。勝手に周囲に広めたりせず、相手の意思を尊重し静かに見守るように心がけましょう。

結婚のお祝いマナー

仕事関係の結婚のお祝いも、プライベートでのお祝いと大きく変わることはありません。気をつけたいポイントをご紹介します。

招待状が届いたら返信は1週間以内に

結婚式や披露宴、パーティの招待状をいただいたら、万事繰り合わせて出席することが基本のマナーです。

 

また、返信はできるだけ早く行います。なぜなら、出席の返事が早いほど、お祝いの気持ちが相手に伝わるからです。

 

主催者の新郎新婦は、返信の出欠確認で招待客の席次や料理のコース、引き出物を決めるため、早い方が準備にも余裕が生まれます。招待状が届いたら、2〜3日中、遅くとも1週間以内には返事をしましょう。

 

招待状の返信は、「御」「御芳」の敬称などを二重線で消す、「出席させていただきます」と文章にする、切る意味の句読点をつけずにお祝いのメッセージを書き添えるなど、返信はがきの書き方のマナーを守ることも忘れずに。

お祝い金の目安とマナー

披露宴に招待されている場合は、プライベートでの出席と同様に、個々にご祝儀を用意します。

 

金額の目安は、「披露宴の食事代や引き出物代+お祝いの気持ち」と考えます。

 

一般的な相場は「3万円」ですが、40代以上である程度の役職がある場合は、3万円〜5万円とされています。迷った時は、自分と似た立場の方にそれとなく聞いてみるといいかもしれません。

 

祝儀袋の水引は、結婚の場合は「結び切り」を選びます。蝶結びの水引は「ほどいて何度でも結べる」ことを意味するため、結婚のお祝いには用いません。間違える方が意外と多いので気をつけましょう。

 

ご祝儀には新札を用意します。ご祝儀袋には表書きに自分の名前をフルネームで記載し、中袋にも忘れず住所・氏名を書きましょう。用意したご祝儀は、必ず袱紗に包んで持参します。

職場でお祝いを贈る場合の注意点

職場や部署でお祝いを贈る場合は、会社の慣例があればそれに従いましょう。

 

仕事関係の場合はお祝い金を贈ることが一般的です。個人の場合は5000円~10000円程度。

 

関係性が深ければ、それ以上贈る場合もあります。連名の場合は、3000円程度ずつ出し合うことが多いでしょう。

 

また、品物で贈る選択肢もあります。定番の結婚祝いの品といえば、キッチン用品や家電製品、食器のセットなどがありますが、趣味の押しつけにならないように注意してください。

 

リクエストを伺うなど、相手に喜ばれるものを選ぶことが第一です。職場で取りまとめるときは、なかなか買えない特別感のあるものを贈るのもいいですね。

 

結婚祝いの贈り物でタブーとされているのは、「縁が切れる」「割れる」ことをイメージさせるナイフや包丁、鏡などが挙げられます。

 

ちなみに、現在では、相手に喜んでもらえるものを第一に考え、希望するのであれば贈っても失礼には当たりません。とはいえ、気にされる方もいらっしゃるので、タブーな贈り物について知っておくと安心です。

出産のお祝いマナー

「おめでとう」の気持ちを込めて贈る出産祝いは、早まらず、出産報告を受けてから贈りましょう。

お祝いを贈るのは1か月以内が理想

出産祝いを贈る時期は、一般的には産後1週間〜1か月以内が一般的です。

 

ただ、出産の知らせがなかなか届かない場合もあります。母子の健康状態が関係していることがあるため、相手がどんな状況なのかが確認でき、落ち着いてから贈るのも大切な配慮です。

 

出産祝いには、お祝い金を贈る場合と品物で贈る場合とあります。最近では、親族以外の場合は品物で贈るケースも多いようです。

出産祝いの金額相場は?

職場で出産祝いを用意する場合は、部署での取り決めがあったり、何人かの連名で出産祝い金(10,000円程度)を用意したりする場合があるかもしれません。

 

個人で包む場合は、上司から部下などには5000円~10000円程度、同僚は3000円~5000円程度などが一般的でしょう。1000円などの場合は、皆様で連名にすることの方が多いですね。

 

祝儀袋は、「蝶結び」の水引を選びます。ほどけても結び直せることから、出産などの何度あっても喜ばしいお祝いに使われます。表書きは「御祝」「御出産御祝」としましょう。

 

なお、連名で出す場合は、3名までは表書きに名前を記載し、それ以上の場合は、中紙に全員の名前を書いて入れます。誰からいただいたのかわからないと、お返しの際に調べる手間がかかってしまうので注意が必要です。

喜ばれる出産祝い。プレゼント選びのポイント

出産祝いの品物は、結婚祝い同様に、相手が喜ぶものを贈ることが何より大切です。

 

品物を選ぶ場合は、少し先に使えるものがおすすめです。出産直後に使うものは、おふたりや親族が用意されている場合が多いので、3か月先や半年後などに使えるものを選ぶと喜ばれます。どんなものがよいのかリクエストを伺うのもいいですね。

 

一方で、タブーもあります。「ハンカチ」は涙をぬぐうものとして別れを連想させるため、適さないと考えられています。また、「縁を切る」の意味もあるハサミやナイフといった刃物は選ばないようにしましょう。

仕事関係のお祝いごとは意外と多い!?

仕事関係の「お祝い」は、結婚祝いや出産祝いに限りません。

 

同じ職場で働く人の昇進や栄転、退職のお祝い、取引先や仕事関係の「開店・開業祝い」「発表会・展覧会のお祝い」「受賞のお祝い」など、多岐にわたります。

 

開店・開業祝いや発表会・展覧会のお祝いは、会社の慣例や前例に従い、会社や部署としてお祝いをします。

 

栄転や昇進、退職を祝う場合は、部署単位でお祝いするのが一般的です。個人でお渡しする場合は、会社の方と足並みを揃えるなどの配慮も忘れずに。タイミングを逃さずお祝いできるといいですね。

相手の状況に配慮したお祝いを

人生の節目に関するお祝いごと。

 

おめでたいことではありますが、仕事関係では特に、相手の状況に配慮した対応が求められます。

 

本人から嬉しい報告を聞いたら、まずは何より先に「おめでとう」の言葉と気持ちを伝えること。そのあと、どうお祝いをするかは、職場の方と相談しながら決めていきましょう。

 

PROFILE 松原奈緒美(まつばらなおみ)

コミュニケーション・マナー講師 EXSIA代表。マナーやコミュニケーションの専門家として、企業研修・講演を行っている。年間150回登壇し、3万人以上を指導。テレビ出演などのメディアでも活躍。NPO法人日本サービスマナー協会ゼネラルマネージャー講師としてプロ講師養成も手掛ける。

取材・構成/鈴木有子