「なんとなく知っているようで、知っていない…不安になったり、迷ったりするのが多いのが香典マナーではないでしょうか」
今回はビジネスマナーとして押さえたい香典マナーを、コミュニケーション・マナー講師の松原奈緒美さんに伺いました。
仕事関係の訃報の際は、香典の出し方を確認する
香典とは、お通夜や葬儀・告別式に参列する際に故人にお供えする金銭を指します。 プライベートの弔事では、個人で香典を出しますが、仕事関係の場合は会社で出したり、職場で取りまとめたりと、さまざまです。
故人が会社の同僚や上司、取引先など、関係によって金額の相場や香典の出し方が異なります。
組織同士のつながりがあれば、法人名で会社として出すことが多く、総務部などで花や弔電を手配するケースや、香典の金額が会社ごとに決まっていることもあります。
故人が社員の場合も同様で、まずは上司や会社に確認をするのが安心です。 法人名で行う場合、「一同」や連名で取りまとめる場合、個々で行う場合など、出し方が多岐に渡ることを知っておきましょう。
香典の金額の相場は?
香典は、部署などで連名で出す場合もあれば、ひとりずつ個別に出す場合もあり、故人との関係性によって異なります。ビジネスシーンでは、会社として法人名で出す場合もあるでしょう。
複数で出し合うか「個人」で出すかで金額が変わる
故人が会社の同僚や上司の家族の場合は、部署内で出し合う「連名」が多いのではないでしょうか。その際は、1,000円程度、多くても3,000円を出し合って取りまとめます。
また、個別に出す場合もあり、金額は3,000円〜10,000円程度が一般的です。「とてもお世話になったから」と多く包もうと思う方もいらっしゃいますが、上司よりも多く出さないように気をつけましょう。
仕事関係の場合
- 個人で出す場合 3,000〜10,000円程度
- 連名で取りまとめる場合 1人あたり1,000円程度(〜3,000円)
社内で取りまとめて香典を出す場合は、並行して個人でも出すと、香典が重なりマナー違反となってしまいます。
仕事関係の香典は、会社や同僚との間で意思疎通をはかっておくと安心です。
香典には新札は使わないのがマナー
結婚式でのご祝儀には新札を入れるのがマナーですが、香典の場合は準備をしていた印象を与えるので新札は使いません。
どうしても新札しかない場合は、折り目をつけて入れれば失礼にはならないでしょう。
香典袋の表書き、名前の書き方、渡し方のルール
香典に使用する香典袋にもルールがあります。
表書きは宗教によって異なる
香典袋の表書きには、さまざまな種類があり、宗教により異なります。 可能であれば事前に宗教を確認したうえで参列しましょう。 仏式 …「御霊前」「御香典」 ※例外として浄土真宗の場合は「御仏前」。「御霊前」は使いません。 神式 …「御霊前」「御玉串料」「御榊料」 キリスト教式 …「御霊前」「御花料」「献花料」 宗教がわからない場合、仏式だとわかっていれば「御香典」を選べば、宗派を問わず使えます。仏式、神式、キリスト教式がわからない場合は、「御霊前」を用意するとよいでしょう。
ちなみに仏式の場合、四十九日までは「御霊前」としますが、四十九日を過ぎると故人が成仏して仏になるという仏教の考えから「御仏前」を用意するのが一般的です。
また、蓮の花が描かれている香典袋は仏式用ですので、神式やキリスト教式では使わないように注意が必要です。
連名では人数によって記載方法を変える
部署内で出し合う「連名」とする場合、人数によって記載の仕方が異なります。
3名までの場合は、表書きに全員の名前を記載。上書きの下に目上の方の名前を記し、そこから左へ全員の名前をフルネームで書いていきます。
4名以上の場合は、表書きには「◯◯一同」と記載して、全員のお名前を書いた中紙を入れることを忘れてはいけません。
これがないと、ご遺族がどなたからいただいたのかを確認しなければならなくなり、手間をかけてしまいます。中紙にも、縦書きで全員の名前を記載してください。
香典袋は袱紗に入れて持参する
香典は、通夜か葬儀・告別式のどちらかに持参します。受付でお悔やみの言葉とともに渡し、記帳をします。
このとき、香典をそのままバッグやポケットに入れてはいないでしょうか?袱紗で包んでお持ちして、受付で袱紗から出しましょう。
香典を後日お渡ししたい。郵送時のマナーは?
通夜、葬儀・告別式への参列は、やむをえない事情やコロナ禍での事情で、参列を控える場合もあるでしょう。そんなときは香典を郵送することもできます。
香典を送る際は、郵便局からの現金書留を利用します。現金書留の封筒は、香典袋が入るサイズになっています。現金をそのまま入れないように注意しましょう。
現金書留の封筒に、住所の記載はありますが、香典袋にも、名前と住所を忘れないように記入します。香典袋といっしょに、お悔やみのお手紙を添えると、より丁寧な印象になります。
香典マナーにも細やかに気を配りましょう
通夜や葬儀・告別式に参列する際、必ず持参するのが「香典」です。
金額や香典袋の書き方、渡し方など、香典にもさまざまなマナーがあります。遺族の悲しみに寄り添う気持ちで、細かな部分まで心配りができるといいですね。
会社の代表として失礼のないよう参列するためにも、日ごろから最低限の香典マナーを覚えておきましょう。
PROFILE 松原奈緒美(まつばらなおみ)
取材・構成/鈴木有子