「年齢を重ね、仕事で責任ある立場になると“知らない”ではすみません。まずは、マナーについて正しく知ることが重要です」
弔事や慶事に慌てないため、心得ておきたいビジネスマナーの基本を、コミュニケーション・マナー講師の松原奈緒美さんに聞きました。
「冠婚葬祭」のマナー、実は学ぶ機会がほとんどない!?
さて、みなさんは今まで冠婚葬祭のマナーを学んだことはありますか?
もともとは葬儀や婚礼といった冠婚葬祭は「家」で受け継がれているもので、ある程度の年齢になると関わる機会がありました。そこで経験し、マナーや振る舞いを自然と身につけていったものです。
家族形態の変化や長寿社会になった今、「家」という枠で弔事や慶事に触れるより先に、「職場」やプライベートで経験することが多くなっています。
私たちは、家で冠婚葬祭のマナーを学ぶことなく育つため、社会に出て突然遭遇し、戸惑うことになるのです。
マナーは誰かが教えてくれるわけではありません。職場の研修で「ビジネスマナー」は学べても、冠婚葬祭マナーを学ぶ機会はほとんどないのが実情です。
20代では「若いから仕方ない」で済まされることも、30代・40代にもなれば「無知な方…」と周囲に評価されてしまいます。
特に、「葬」は突然訪れるもので、準備や学ぶ時間はかけられません。また、マナー違反をしても指摘される場がないために、マナーを間違えたまま年齢を重ねてしまうこともあるので注意が必要です。
そもそも「冠婚葬祭」とは
冠婚葬祭とは、日本に古くから伝わる四大儀礼のこと。社会生活のなかで欠かせないイベントでもあり、知識を身につけておくといいでしょう。
「冠」は成人式
古来の男子の成人の儀式(元服)のときに、冠(烏帽子)をかぶったことに由来しています。
「婚」は結婚に関連するお祝いごと全般
結婚を指し、結婚式や披露宴のほか、お見合いや結納などの結婚に関連するお祝いごと全般を意味します。
「葬」は葬儀に関する一連の儀式や行事
通夜に始まり葬儀・告別式などさまざまな儀式が行われます。地域のしきたりや遺族の意向もあり、マナーはひとつではありませんが、基本的な部分を抑えておくことがポイントです。
「祭」は一年の節目の行事
「祖先の霊をまつる」という意味からきており、法事やお盆などの祖先を祭る儀式を指しています。
それぞれが人の一生の節目であり、相手を敬うイベントです。職場などのビジネスシーンにも関係があり、その後のお付き合いにも影響するため、失礼のない対応や相手を思った振る舞いが求められます。
冠婚葬祭マナーはシーンや状況によって変化する
マナー講師をしていると、「この場合はどうしたらいいですか?」と、「正解」を気にされる方がいらっしゃいますが、マナーは正解がひとつだけではありません。
冠婚葬祭に限らず、マナーは基本を知ったうえでその場に合わせた上手な「引き算が大切」と考えています。
シーンや状況、地域、時代によってもマナーは変わります。その場に合わせて臨機応変に、相手を思いやった対応・振る舞いをすることが、マナー上手と言えるのです。
ただ、「正しいマナー」を理解したうえでないと、適切な「引き算」はできません。まずはマナーを学んで全体を知り、実践していくことで、状況に合わせた対応ができるようになるのです。
あなたのふるまいが会社の評価に。見られている意識を忘れずに
もうひとつ、忘れがちなのは「見られている」ということ。
仕事関係の葬儀や結婚式に参列する際は、個人というよりも「会社の代表」として見られることがほとんどです。たとえば結婚式では、席次に会社名や肩書きが入りますよね。親族や他の方からも意外と見られているものです。
大声で盛り上がったり派手な行動をしたり、マナーを無視した振る舞いをしていると、「あの会社の方はこういう振る舞いをする会社なのね」と判断されてしまいます。
常に見られていることを意識し、会社の代表として恥じない振る舞いを心がけましょう。
PROFILE 松原奈緒美(まつばらなおみ)
取材・構成/鈴木有子