「時間は平等にあるはずなのに、自分の時間を作る余裕がない」 「目の前にあるやるべきことが多すぎて、何をするにも時間がたりない」

 

日々、仕事に家庭に向き合うママにとって、時間に対する悩みは尽きません。

 

助けを求めた先は、著書『サキドリ: じぶん時間ゼロ、ダメ主婦、ダメ社員だった私が人生を取り戻した小さな習慣』で独自の時間術を提案している田内しょうこさん。

 

心身ともにリラックスできる自分時間、一体どうやって作り出せばいいのでしょうか?

仕事も家事も育児も…頑張り過ぎていませんか?

在宅勤務で通勤ナシでも「自分時間」はなぜ増えない!?私たちの抱える課題

』のアンケート調査では、意外と多くの方が自分時間を取れていない状況が浮き彫りになりました。

これには、ママたちががんばりすぎていることが背景にあると田内さんはいいます。

 

「テレワークで突然、自宅が仕事場になり、家庭と仕事の切り替えがうまくいっていない方が増えたように感じます。

 

『家にいる分、仕事も家事も育児も全部ちゃんとやらないと』と必要以上にがんばりすぎてしまう。

 

私もそうでしたが、自分時間を『ご褒美』のように考え、自分のための時間を取ることに罪悪感を抱いてしまうママが多いのではないでしょうか。

 

やるべきことが終わってから自分時間をとろうと考えても、結局、時間がとれないまま1日が終わってしまいますよね」

自分時間は「あと回し」ではなく「サキドリ」を!

自分時間がとれない状況は、気分転換ができずストレスが溜まり、自分も家族も幸せにならないという悪循環に陥る可能性も。

 

そうならないためには、まず、“自分時間をサキドリする”ことが重要です。

 

「大切なのは、短くてもいいので自分時間を『先に』決めて確保すること。まさに時間のサキドリです。

 

ご褒美としてではなく、仕事や家事と同様に取るべき時間として確保する。そして決めた自分時間には、他のことは考えず集中して楽しむ、という意識の切り分けもしっかり行うこと。

 

充実した自分時間は、明日へと続く元気につながっていきます。

私の場合は、朝5:30から始まるピラティスの予定をサキドリ。週1のルーティーンが、幸せであり、自分の自信になっています。

 

散歩をしたり甘いものを食べたり、昼寝をしたって何だっていい。1日10分でもいいので、自分の時間を確保して楽しむことから始めてみましょう」

暮らしに余裕を生む サキドリ時間術

サキドリの習慣は、自分時間を確保するためだけでなく、日々のタスクを効率的に行うためにも役立ちます。

日々のタスクを分解・整理して「サキドリ」

「家事に限らず何でもそうですが、『ひとかたまり』で考えてしまうと、あれもできていない、これもやらなきゃで、余裕が持てなくなってしまいますよね。

 

そうならないためには、それぞれ小さな作業に分解するという整理を行ってみるといいかもしれません。

 

たとえば肉じゃが作りで考えてみましょう。工程を分解すると5つの作業(タスク)に分けることができます。

 

①材料を切る


②炒める


③水と調味料を入れて煮る


④追加の調味料を加えてさらに煮る


⑤火を止めて味を染み込ませる 

 

ひとつひとつを見ていくと、どれも隙間時間に行えるような“小さな作業”に見えませんか?

 

分解した作業をちょこちょこサキドリして行っていくと、時間がかかる煮込み料理だって、簡単にできてしまいます。

 

あるいは、料理の準備のついでに、次に使う予定の野菜を切ってしまうなど、作業をまとめて行うと、次の料理の手間を省けるというメリットもあります」

自分の中の常識を疑う!自分にあった時短方法で効率化

分解した作業のサキドリが難しい場合は、タスクの洗い出しをするだけでも『これだけしっかり家事や育児をやっている!』という自信に。

 

それだけでなく、本当に自分がやるべきことを絞っていくためのヒントにもつながります。

 

「料理は工程が多いので、カット野菜を利用したっていいし、献立を考えるのに時間がかかっている場合は調理キットを使うのも立派な時間術。

 

どうしても料理を作るのがつらいときは、お惣菜や宅配サービスを利用するのもアリ。そこに罪悪感を感じる必要はないし、自分にあった方法を選択して効率化していくといいと思います。

 

日々当たり前になっている作業も、意外と省ける部分はあるもの。“自分の中の常識を疑ってみる”ことで、新たな時短ポイントを発見できることだってあります」

家事参加の推進は、未来の自分時間への種まきに

「改めて日々の家事に向き合うという意味で、家族でいっしょに『家事タスクを見える化する機会』を作ってみるのもいいですね」

見えない家事が明確になると、パートナーへの依頼や家事分担もスムーズ。

 

ゴミ出しをお願いしても、ゴミ袋がセットされていない…そんな認識の違いから起こるストレスが減るばかりか、誰もがこまめに家事に取り組めば、気持ちにも時間にも余裕が生まれます。

 

「これからの時代は、性別に関係なく、家事育児を担っていくことがますます当たり前に。そういった意味でも、前向きに家族を巻き込んでいくことも必要かもしれません。

 

我が家では、コロナ禍の機会に、自分のことは自分でやるというサバイバル生活にチャレンジ。結果、『ママやって』から『自分でやる』という意識改革にもつながりました。

 

ここで、大切にしたいのは、あくまで“やらせる”のではなく、“楽しみながら取り組む”ということ。

 

お子さんが小さい場合は、お米を研いだり、野菜の皮むきだったり。簡単に取り組めるサキドリ習慣を、いっしょにやってみるのもいいですね。

 

積み重ねた成功体験は、宿題を先にやっておくなど、意外なところで生きてくることだってあります。

 

家族の家事参加は、最終的にはママの自分時間の確保につながるだけでなく、子どもの生活力が身につくよさも。

 

子どもたちが大人になって家庭を持ったときの自分時間創出にも、プラスに連鎖していくのではないでしょうか」

小さな「できた!」を大切に。楽しみながら自分時間を作ろう

田内さんのサキドリ術は、小さな習慣から、未来につながる習慣まで、時間に対する向き合い方の選択肢を広げてくれるものばかり。

 

「仕事に家事に育児に追われて八方塞がりのなかでも、ぜひ予定を決めて、まずは自分時間を確保してみてください。

 

たとえ短い時間だったとしても、この小さな『できた!』をぜひ大切にしてほしいと思います。

 

時間のやりくりは、自分に合った方法を選択、実行すればいいし、うまくいかなかったら微調整していけばいい。

 

自分らしさを大切に、無理せず楽しみながら時間を生み出していきましょう」

 

PROFILE 田内しょうこさん

料理家・ライター。アメリカ・カリフォルニア州のミルズ女子大学を卒業後、出版社勤務を経て料理研究家に。雑誌、ウェブなどのメディアで活躍するほか、忙しく働く女性や共働き家庭のための食事法や時短術を、教室、セミナーで伝えている。著書に『サキドリ』『時短料理のきほん』(草思社)、『働くおうちの親子ごはん』(英治出版)ほか。

取材・文/鈴木有子