共働き時代に合った私らしい生き方・
「世界一楽しいショッピング体験をつくる」をビジョンに、友達や家族と“シェア買い”ができるアプリ「カウシェ」を運営する株式会社カウシェ。
2021年3月、副業メンバーも昇給・昇進できる人事制度を始めました。副業ながらも成果次第で望むキャリアが手に入るこの取り組みについて、生み出した理由、導入後の効果などを、副業メンバーとして活躍している広報担当の大塚早葉(おおつかさよ)さんにお聞きしました。
副業のメンバーにもチャンスの機会を作る
── この春導入した人事制度「KAUCHE de WORK」の特徴を教えてください。
大塚さん(カウシェ):
専業の社員ではない副業メンバーも昇給や昇進、ジョブローテーションができる制度です。具体的には、半期ごとに行われる目標設定や評価の振り返りにもとづいて、組織内の評価で上位20%程度に入ったメンバーに対し、昇給・昇進を行います。評価次第では副業メンバーも収入を上げ、カウシェでキャリアアップすることも可能です。
また、今年5月には副業メンバーを対象にジョブローテーションをする制度も追加しました。半期の振り返りをもとにメンバーが申し出ることで、会社と意向が合った場合は、異動が可能になります。
── なぜこうした人事制度を作られたのでしょう。
大塚さん(カウシェ):
カウシェでは、人事制度のポリシーとして「自律・自燃型組織」を掲げています。「自律・自燃型組織」とは、自ら働く環境を楽しみ、熱量を最大化する組織のことです。
こういった組織を目指すため、メンバーに対して評価を行うときも一方的に評価して終わりではなく、評価をもとに自発的に成長する機会を作り、カウシェで働くことを楽しんでもらいたいと考えており、その実現をサポートするため「KAUCHE de WORK」を制定しました。
── そもそもこの「KAUCHE de WORK」はどんなきっかけで生まれたのですか?
大塚さん(カウシェ):
カウシェは昨年4月に代表の門奈剣平が一人で創業しました。当時、国内初の「シェア買いアプリ」としてトップランナーを目指していた門奈は、EC化率が急速に増加する国内の市場環境を考慮して、事業を早急に立ち上げる必要性を強く感じていました。
その中で、友人や知人などに副業として事業立ち上げのサポートを求めたのです。そうして即戦力となるメンバーが集まり、事業の加速化に成功しました。
── 必要に迫られて集まってもらった副業メンバーが事業に大きく貢献したことから始まったのですね。「KAUCHE de WORK」を立ち上げる際には、どんなことにこだわりましたか?
大塚さん(カウシェ):
専業の社員だけでなく、副業として事業に関わるメンバーにもより活躍できる場を提供するきっかけとなることです。メンバー全員が「自律・自燃型」の働き方を実現して、自身の成長や事業に対する熱量を拡大していける環境にしたいんです。
「KAUCHE de WORK」は発案から企画、リリースまで、たった約1か月半で行いました。すでに一度、評価のサイクルを回しています。カウシェのバリューの一つである「Try first(まず、やってみる)」を体現した事例にもなりました。
業界でも珍しい副業メンバーに対する昇給制度に関しても、まずはいち早く着手することで、副業メンバーが活躍できる環境づくりに対する経験やノウハウなどを蓄積していきたいと考えています。
副業メンバーのスキルを切り売りではなく、成長の強みに
── 「KAUCHE de WORK」を立ち上げるにあたり、何か課題はありましたか?
大塚さん(カウシェ):
想定していた課題は、副業はスキルの切り売りととらえられることも多く、個人としての成長につながらない可能性があることです。
そこで、「KAUCHE de WORK」の運用においても正社員と同様、期の初めに評価者とメンバーがともに納得のいく目標設定を行って、カウシェで働くこと自体が、副業メンバー自身の成長や熱量の拡大の場になることを目指しました。
結果として、優秀な副業メンバーに、国内外どこからでもどんな形でも、中長期的にカウシェにコミットし続けてもらえるようになり、事業の成長へとつながっています。
── カウシェでは、「Enjoy Working」として楽しく働ける環境づくりを大切にしているとお聞きしました。副業メンバーに対してはどんな環境が必要だと考えていますか?
大塚さん(カウシェ):
副業メンバーにとって新しいチャレンジができる環境を整えることが重要だと考えています。そのためにはコミュニケーションの場が大きな力を発揮します。
カウシェでは、業務上の定例の会議に加えて、1on1をはじめとしたコミュニケーションの場を設定しています。その中でも、2020年10月からは毎月末に、副業メンバーも交えた全社ミーティング「KAUCHE Family Meeting(KFM)」を開催しています(※現在はオンラインにて開催)。
「KAUCHE Family Meeting」では、各部門の進捗発表、お互いを知るためのコンテンツ、代表の門奈がビジョンを語るMonthly MON Timeを設け、副業メンバーも事業の状況を把握できるように工夫しています。
この「KAUCHE Family Meeting」では、時間の都合上、参加が難しい副業メンバーには録画を共有しています。会の中で、進捗報告を副業メンバーが行うシーンもあり、正社員と副業の垣根を低くしたいと思っています。
副業でも昇進。「期待以上の結果を残そう」と意気込む人も
── 副業メンバーにはどんな方がいるのでしょうか。
大塚さん(カウシェ):
現在、全体の8割にあたる31名の副業メンバーが活躍しています。大手企業やベンチャー企業に在籍している人から、フリーランスの人まで幅広く、地方や私のように海外から参画している人もいます。産休・育休前後の女性もたくさん活躍しています。
── 副業メンバーとして働いている方の声を聞かせてください。
大塚さん(カウシェ):
「KAUCHE de WORK」を通して昇進した副業メンバーからの声を紹介します。
副業は、与えられた給与分の仕事をして「役割をこなす」意識になってしまうこともあると思います。でも、カウシェのように副業でも昇進する制度があると、「期待以上の結果を残そう」という意識になり、結果として会社と自分に対してプラスの効果が出るのではないでしょうか。今後、副業が世の中に浸透していく中で、副業や業務委託の評価制度を実践する企業がほかにも生まれてくるのではないかと期待しています。
昇給以外にも定期的に自分の行ってきたことの棚卸しとフィードバックをもらえる機会があるのは、自分のキャリアの見直しにもなってありがたいです。
── 「KAUCHE de WORK」は、企業とメンバーとの信頼関係を育てるきっかけにもなっているのですね。大塚さんも副業メンバーの一人と伺いましたが、この働き方を始めた理由は何だったのですか?
大塚さん(カウシェ):
夫の転勤で香港への移住が決まり、前職を退職したのがきっかけです。退職する際、SNSでそのことをつぶやくと、カウシェをはじめスタートアップ企業数社から「PRをサポートしてほしい」とオファーをもらい、香港に移住後もフリーランスとして働くことになりました。
カウシェでは専業と副業で分け隔てを感じることがあまりありません。情報共有についても、役員会議のような経営に関わる情報にも副業メンバーがアクセスできるため、会社が長期的に目指す姿についても、把握し、議論することができます。
やる気さえあれば活躍できますし、結果を残せば、「KAUCHE de WORK」の制度によって昇給・昇進など自分にもしっかりと返ってくるため、副業やフリーランスとして働くにも魅力的な場所だと思っています。
── 重要な情報が公平に共有されるのは、副業メンバーのモチベーションにもつながりそうですね。今後はどのような取り組みを予定していますか?
大塚さん(カウシェ):
評価制度については、半期ごとの評価期間が終了した後、全メンバーからフィードバックをしてもらって課題解決や対策を続けていきます。
また、これからもっと多様なメンバーを仲間に迎え入れながらしっかりと彼らの意見を聞いていくことで、もっと多様性が活きる組織になることを目指しています。
そして、私たちのバリュー 「Enjoy Working」 が意味する「泥臭くハードなことも含めて心から楽しむ」を、メンバー1人ひとりが追求できるように支援していきたいです。
…
カウシェの「KAUCHE de WORK」は、企業側から挑戦の場を提供することで、副業の方がもっと主体的に自由に仕事を楽しむ可能性をつくったと言えるでしょう。この取り組みを発端に、副業従事者の新たなチャレンジや成長が広がっていくに違いありません。
【会社概要】
社名:株式会社カウシェ
設立年月日:2020年4月1日
業種: 情報通信業
事業内容:シェア買いアプリ「カウシェ」(https://kauche.com/)の運営、ECサイトの運営コンサルティング
取材・文/高梨真紀