世の爬虫類嫌いを、恐怖のどん底におとしいれた横浜のニシキヘビの大捜索で一躍、注目された白輪剛史さん(52)。伊豆で動物園を経営して、動物輸入卸業も営むなど、幅広く活躍しているが、 次に狙いを定めるのはー。
問い合わせが急増で…
「アミメニシキヘビの騒動で、知名度があがったのか、全国から爬虫類関連の問い合わせが増えましたね。
静岡でイグアナが目撃された、佐賀で双頭のカメが見つかったとか、栃木のお宅にいるというヘビを捕まえてくれという依頼もありました」
あわただしくも楽しそうに語る白輪さんだが、そんな相談に応じているのは爬虫類への“偏見”を解消したい思いもあるから。
「爬虫類というと、“気持ち悪い”という印象をもつ人が多いですが、そういう人に限って、直接見たり触ったりしたことがないんですよ。
無理に好きになってくれと言うつもりはありませんが、少しでも興味をもってくれる人がいればと、PRのつもりでやっています」
飼育や管理方法の知識が不十分
爬虫類の出没や逃走が最近、よくニュースになるが、どういう状況なのだろうかー。
「ペットとしての爬虫類が増える一方で、飼育や管理方法の知識が不十分な飼い主も増えているのが現状です。
捨てられたのではなく、逃げたものがほとんどだと思います。爬虫類は外に逃げてしまう習性があるので、二重、三重の管理が必要です」
イヌやネコと比べればまだ珍しく、“偏見”もあるので、目立ち注目されてしまうこともあるという。
5メートル×800キロの巨大ワニで…
受難が続く爬虫類の魅力を伝えようと、白輪さんが園長を務める伊豆にある動物園「iZoo」(イズー)で、6月から体長3メートル、体重100キロ(メス)と5.1メートル、800キロ(オス)のイリエワニを公開している。
「マレーシアの動物園で、その大きさに一目ぼれしました。かなりの反響があり、コロナ禍にもかかわらず、来場者は増えています」
動物商としての知識と経験にもとづいた『動物の値段』(角川文庫)という著書もある白輪さん。今回のイリエワニのお値段は…。
「今回はマレーシアの動物園との友好関係があるなかでの交渉だったので明かせませんが、通常であれば、一頭、2500~3000万円ですね。飼育施設の建築には2600万円ほどかかりました」
爬虫類好きの原点は…
そこまで爬虫類を愛する白輪さんの原点は、小学校時代のヘビだった。
「もともと爬虫類が好きでヘビやトカゲは飼っていたのですがある日、授業中に用務員さんが校庭に現れたヘビを追い払ってほしいと頼みにきたことがありました。
アオダイショウ(無毒)だったと思いますが、勉強嫌いだった私は、これで授業を受けなくていい特権意識に目覚めて(笑)、ますます爬虫類にのめり込みました。
高校生のころには自分で繁殖させて販売していたので、私はアルバイトもやったことがなく、人から給料をもらったことがないんです」
その後、会社を設立して海外を駆けめぐり、爬虫類を中心に多くの珍種を輸入してきた。ほかの生き物にはない爬虫類の魅力はというとー。
イヌやネコにはない“距離感”
「エサや世話の手間が省けるのが、爬虫類ペットの魅力のひとつです。私はイヌやネコを飼ったことがありませんが、毎日の世話が大変ですよね?
その点、爬虫類のエサやりは2週間に1回程度で済むことが多いです、イリエワニでさえ1か月のエサ代は2万円くらいです。ほえたり鳴いたりすることもないので、家事に仕事に忙しい方や女性にもお勧めです」
ちなみに、ニシキヘビのエサはネズミなので、冷凍庫での保存は家族の説得が必要だが…。
白輪さんも自宅の水槽で、2メートルほどのグアテマラワニを飼育しているそう。
「イヌやネコのように、スキンシップができない“距離感”というのが、爬虫類や特にワニの魅力でしょうか。かわいがろうとしたら食べられてしまいますからね」
そう笑う白輪さんが狙う次の“獲物”は、インドネシアに生息するオオトカゲで体長は2~3メートルあり、鋭い歯と毒をもつ…。
「コモドドラゴンです。すでに交渉に5、6年かかっているので、今までで一番難しい仕事かもしれません。
生態や輸送については大したことはありませんが、インドネシアの特別天然記念物のようなトカゲなので、国同士の政治的問題なども絡み、難航しています…」
ワニのような獰猛(どうもう)の目で、カメのように鳴りを潜めながら、いざとなればトカゲのように素早く…白輪さんは次なる珍獣を狙っている。
PROFILE 白輪剛史さん