職場でのなにげない会話で、突然同僚からマウンティングされたら、マタハラをされたら——まさかの事態の対応策を、コミュニケーションのプロ・吉原珠央さんに伺います。
マウントは「そう」で受け止める
── 友人の話ですが、同性の同僚から職場で急にマウントを取られそうになり、辛かったと聞きます。
吉原さん:
相手から言われるマウントには、「へー、あ、そう」でひたすら受け止めておきましょう。「すごいね」と言いすぎても、言わなすぎるのも失礼になることがあります。「すごい」と言ってほしくて続けて話されても困ります。
同性間でのマウントといっても、その内容はさまざまです。子供のいる/いない、第一志望の学校に子供が受かった/落ちた、持ち家/借家、子供が受験する/しない、結婚する/しない、いろいろですね。
マウントしたくなくても、つい言った言葉がマウントに捉えられてしまうこともあります。
すべてが自慢話やお節介で嫌だなだと思わず、「すごいね」「おめでとう」「社会人生活が楽しいといいね」などとひと言認めてあげる言葉を持つことも大切かもしれません。
相手の抱えている気持ちもおさまります。
たとえばさらに「お子さんは浪人中?受験しないの?」など踏み込まれてきたときは、自論をしっかり持っていること。自分の気持ちを大事にしながら「どうなるんだろうね」などと穏やかにかわしてみましょう。
論破はする必要がありません。論破すると血だらけになりますから。最後は相手とまったく意見が違っても「家族それぞれ、人それぞれだよね」などと言って終わりましょう。
産休前は気配りを言葉に
── これも友人の話ですが、産休、育休をとる際、職場で遠くから「休まれてあの部署、大変だよね」などという声が聞こえたらどうしますか。直接的ではなく聞こえてくるマタハラに近い声です。
吉原さん:
遠くで言われたら、こらえて、あとで仕事で声をかけるかもしれませんね。「来月からしばらく休むことになりご迷惑をおかけするかもしれませんが、こちらの資料をまとめてみたので、お願いします」と言って資料を渡したり。
休みを取ることは権利として認められているので、本来必要はないのですが、戦略的に自分が復帰しやすいよう「皆さんに役立つ情報も休み中にキャッチしておきますね。できることは準備しておきます」などというコミュニケーションを取っておけたら、余計な波風を立てず、周りも「ゆっくり休みなよ」と送り出せますよね。
── なかなか難しいですね。
吉原さん:
思いや性格を変えるわけではなく、相手の立場や心情に合わせて言動を変えるだけで関係が変わります。
──気配りを思っているだけではなく、言葉にして伝えることが大事なんですね。
吉原さん:
はい、それに、嫌だなと思う人に会うということは悪いことだけではありません。新刊にも書いたのですが8個のメリットがあるんですよ。
── 8個も!
吉原さん:
まず、嫌な人と出会って、腹立たしいと傷つくと、自分には安心できる家族がいると思い、家族に優しくなれます。
そして、「気の合う他人」は特別なんだと再認識できて、親しい友人を大切にしたくなります。友情を大切にできます。
3つ目に心の拠り所となる楽しいことを見つけようとするようになります。感情が乱れたことをきっかけに、「部屋の模様替えをしよう」などポジティブな行動が促されます。
4つ目は体を労ろうとすること、5つ目は自分の大切にしている価値観を見直すきっかけになります。
6つ目は励ましたり、共感したりしてくれる存在の大切さに気づいて、味方を増やそうと新たな出会いを積極的に捉え、行動しようとします。
7つ目は、感情的にならなかったとき、自分って我慢強いな、など自分の強みに気づくことができます。逆に感情的になったときも、自分の弱い部分に気づけます。
8つ目はストレスに対するレジリエンス(弾力性)を強化できるため、「嫌な人」に出会うことで、出会う前よりメンタルをしなやかに鍛えられていることになります。
── 友人の大切さが分かり、自分が大切にしたい相手が見えてくるかもしれませんね。
イメージコンサルタント。プレゼンテーション、コミュニケーションをメインにしたコンサルティングを行うほか、「体感して学ぶ」と言うオリジナルのメソッドで企業向け研修や講演活動を全国で実施。またストレスフリーをコンセプトにした化粧品、ファッションアイテムなどを扱う「PURA Tokyo」を立ち上げ、会社を経営。著書は「『また会いたい』と思われる人の38のルール」「その言い方は『失礼』です!」「だから、あの人は嫌われる」など多数。
取材・文/天野佳代子