共働き時代に合った私らしい生き方・働き方を模索するCHANTO総研。

 

靴磨きや靴の修理を展開しているShoe Shine WORKS合同会社は、今年4月から靴磨きの副業サポートを始めました。靴磨きを趣味とする人の可能性を広げていく挑戦です。代表の菊池政寛さんに話を詳しく伺いました。

shoe shine WORKS 代表  菊池さん
Shoe Shine WORKS合同会社 代表社員 菊池政寛さん。関西学院大学を卒業後、大手百貨店入社。その後バイヤーとして欧州での買付けなど行なうフリーランスに。Shoe Shine WORKSには入社して8年。現在は、経営・営業・労務・経理・事務など幅広く業務をこなしている。

週末限定の副業として本業と無理なく両立

── 靴磨きの副業と聞いた時は、斬新で驚きました。どんな事業なのでしょうか。

 

菊池さん(Shoe Shine WORKS):

靴磨きが趣味で、仕事にしたいという方のためのサービスです。働き方は、希望に合わせてアルバイト勤務とフランチャイズ制度の2種類から選べるようになっています。

 

アルバイト勤務では、時間給で働いた分だけ安定した収入を受け取ることができます。また、時間も融通が利くなど自由度が高いため、家庭やプライベートの時間を優先して副収入を得ることが可能です。

 

フランチャイズ制度は成果報酬型です。仕事の裁量を自分で調整できるなど、責任と大きなやりがいをもって仕事に向き合えることができます。収入も自分次第です。

 

── フランチャイズでは土日祝日の週末限定になるそうですね。これなら本業と無理なく両立できそうです。

 

菊池さん(Shoe Shine WORKS):

週末に責任を持って靴磨きをすることで、経営を身につけ、実績を積むことも可能です。仕事のスキルとして経営を学びたいという意欲ある方にもやりがいのある制度だと思います。

 

また、このフランチャイズ制度では、FC加盟者のリスクをなるべく少なくした仕事を提供したいと考えています。通常は、本業を退職してフランチャイズ加盟をするという、人生を駆けた選択になることが多いと思っています。でも、経営が思い通りに軌道に乗るかは、実際に始めてみなければわかりません。しかも、失敗はその後の人生をも大きく左右します。

 

どんなチャレンジにも成功があり、失敗もあります。Shoe Shine WORKSのフランチャイズ制度は、そのどちらの場合でも加盟者の方の背中を押す機会にしたいと考えています。

成功も失敗もあるのが当たり前。技術面から本部でサポート

── 具体的にはどのように後押しをするのですか?

 

菊池さん(Shoe Shine WORKS):

成功の兆しがあれば、さらに成果を出せるようにサポートします。初期段階では元の本業を維持した形でスタートし、失敗して事業が軌道に乗らない場合は、元の本業に戻れる道筋を残しておきます。

 

また、技術や営業面のサポートは、本部でしっかり行っていきます。アルバイト勤務の場合は、現場で実践をしながら接客をはじめ靴磨きの仕事に必要な業務を教育します。

 

フランチャイズの場合は、加盟契約後に技術指導の場をつくります。計5日計40時間を目安に、加盟者の方の技術習得のペースに合わせて進めていきます。その日程で習得が間に合わない場合は追加費用が発生しますが、加盟者の方が納得できるまで技術指導に付き添っていきます。ただ、実際のお客様からのご依頼については、必要に応じて修繕依頼品を本部がサポートするなどして、Shoe Shine WORKSのクオリティを維持します。

shoe shine WORKS 店内

── 副業といえば、本業とどちらにも良い効果を生むことが期待される働き方だとされています。Shoe Shine WORKSの靴磨きでは、そのためにどんなことが必要だと思いますか?

 

菊池さん(Shoe Shine WORKS):

まず、靴や靴磨きが好きという気持ちが大切ですね。特に最初の頃は、加盟店オーナー自らが現場に立ち、靴磨きをすることが多くなるからです。また、手作業が多いアナログな仕事です。靴磨きをしている本人が楽しまなければ、お客様を楽しませることはできません。靴への思いと、技術の上達があってこそファンやリピーターを獲得できます。その後、初めて効率や生産性を求めていく経営の観点が必要となってきます。そのため、目先の投資として考える方には向いていないかもしれません。

 

── 副業を希望する方との関わり方について、大切にしていることはありますか?

 

菊池さん(Shoe Shine WORKS):

職人の世界では、ひと昔前まで師匠と弟子といった主従関係が強く、「技術は背中を見て学ぶ」ことが当たり前でした。でも、今は時代が違います。Shoe Shine WORKSでは、なごやかな雰囲気など働きやすい環境を心掛けています。

 

また、靴磨きは、技術だけでなく接客なども大きな価値だと思っています。挨拶や気配り、周囲への配慮など、人柄やそれまでの経験が感じられるような所作もこの仕事では大切なスキルになります。

 

さらに会社経営はチームプレーなので、みんなでお互いを認め合い支え合いながら仕事をすることを大切にしています。そういった価値観も、靴磨きの副業で良い効果を生むことができたらいいですね。

新しい副業のスタイルを全国へ広げたい

── 靴磨きの副業を広げることで、期待されることは何ですか?

 

菊池さん(Shoe Shine WORKS):

多くの加盟者が靴磨きの副業にチャレンジすることで、Shoe Shine WORKSの靴磨きを全国各地の方々に知ってもらう機会が増えることです。Shoe Shine WORKSの認知度が上がれば、靴磨きをしている方にとってもよりやりがいのある仕事になると思うんです。

 

靴磨きは、通常は多店舗展開が難しいのですが、あえて店舗を持たないスタイルで事業拡大していきたいと考えています。まだまだ始まったばかりの事業ですが、一緒に広げていくことで新しい副業スタイルをつくっていってもらえるとうれしいです。

 

── 今、実際に靴磨きを副業として始めている方はいるのでしょうか?

 

菊池さん(Shoe Shine WORKS):

事業や人材募集の本格化はこれからになりますが、現在、お子さんが2人いる30代のアルバイトスタッフの女性がフランチャイズ加盟にも興味を示していて、とても積極的に仕事に向き合ってくれています。

shoe shine WORKS 外観

── 今の時点でどんな課題がありますか?また、それにどんなふうに向き合っていきたいですか?

 

菊池さん(Shoe Shine WORKS):

始めることすべてに前例がないことでしょうか。靴磨きを本業にしようという人もそうですが、それを副業にしようと考える方はそれほど多くありません。人材募集に向けてShoe Shine WORKSを一人でも多くの方に知ってもらうこと、また高度な技術サポート体制を確立させることが、今、大きなハードルとして感じている課題です。

 

現在、東京で行っている週末限定のビジネスモデルを、関西や中部地方など他エリアでも展開できないか、様々なルートを通じて進めています。こうした基盤を築きながら、人材募集も丁寧に行っていきたいと思っています。

 

── 一つひとつのハードルを越えながら、靴磨きでどんな社会を実現したいですか?

 

菊池さん(Shoe Shine WORKS):

失敗が広く許容できる社会でしょうか。失敗が許されない企業社会では、いつまで経ってもイノベーションは生まれません。副業が自身の経験の肥やしとなり、結果的に本業に生きることは多々あると思います。挑戦もできるし、失敗もできる。そんな許容性が今の日本の労働社会には求められていると思います。

 

 

「靴磨き」に的を絞った副業。しかも週末限定。靴に想いのある人にとっては始めやすく、誰にでもできるわけではない技術を究める機会でもあります。経営の実績を積めるなど本業にも生きるスキルを提供していることも大きな特徴。新しい副業のあり方をつくろうとしているShoe Shine WORKSのチャレンジにこれからも注目したいと思います。

【会社概要】
社名:Shoe Shine WORKS合同会社
創業年月:2010年12月
業種: サービス業
事業内容:靴磨き修理

取材・文/高梨真紀