在宅ワーク続きで、運動不足が気になる…。毎日バタバタで自分のことは後回し、ちゃんと栄養取れてるかな…。ああ、生活習慣、見直さないと。と、薄々わかってはいるものの、一歩行動に踏み出すのって、なかなかできないものです。

 

そんな人に、ぜひ知ってもらいたいのが「生活習慣病」の怖さ。まだまだ若いし…と思いきや、立派な予備軍となっている可能性があるそうです。そこで、わたしたち30〜40代のビジネスパーソンがとくに気をつけるべきことについて、医師・近藤慎太郎さんにお伺いしました。

「生活習慣病」とは…不摂生によるもの?

生活習慣病には、大きく「高血圧」「糖尿病」「脂質異常症」「高尿酸血症」の4つがあります。これらの症状がでると動脈硬化につながり、心筋梗塞や脳卒中などの重大な疾患を引き起こしてしまいます。

 

厚生労働書が発表する日本人の死因の上位は、1位:がん、2位:心疾患(心筋梗塞など)、3位:肺炎、4位:脳卒中となっている現状。上位の死因ともなる疾患を引き起こすのです。

 

さらに脳卒中に関しては、死には至らないとしても患者数自体はとても多く、日常生活に制限のある後遺症が残っている可能性の高い疾患となっています。健康に生活ができないのです。いまの生活を見直すだけで、先の健康な生活につながるのだとしたら、気をつけはじめるのは、まさに「いま」なのです。

 

生活習慣病は、加齢とともに発症、進行すると考えられていましたが、子どもの頃からの生活習慣が基盤となって発症するものだということがわかってきました。

「生活習慣病を改善するには、食事・運動と普段の生活を見直す以外の方法は、正直いうとありません。体質の差はあれど、食事と運動が柱となってくるのは、間違いないのです」と、近藤先生。

 

「適度な運動」「バランスのよい食生活」とっても、具体的には何をすればいいのだろう…ということで、ピンポイントで気をつけるべきことを3つ、教えていただきました。

外出頻度が減る中、生活習慣病予防に今、できること

①ランチの後、10分だけ歩く

「運動をしよう」といっても、いろんなアプローチがあります。そして、普段運動をしていない人ほど、運動を習慣化するのは難しいことでもあります。そこで、私たちビジネスパーソンが実践できることについて聞きました。

 

「キツイ運動をしても、続かなければ意味がありません。だからこそ、生活習慣病を防ぐためには、運動しているという意識もないくらいの運動がいい。そこで、よく散歩が勧められますが、働いている人はなかなか散歩の時間が取れないですよね。

 

だからこそ、『ランチの後に10分ほど歩く』ことを意識してみましょう。外にランチに出るときに、10分ほど歩く場所にランチにいけばよいのです。血糖値の上がりやすい「ランチのすぐ後」に歩くのが、効果的です。というのが重要。それだけ血糖値の急上昇を防ぐことができ、だいぶ違ってきます」

 

そもそも私たちは、通勤で結構「歩く」ということを知らないうちにしていました。それがリモートになった瞬間それをしなくなった…となると、それは歴然とした運動不足となります。

 

「リモートワークはメリットも多いのですが、運動習慣が失われているのは確実。そこは意識して、例えば在宅ワークで自宅でランチをしたとしても、食後は外に出て10分間だけ歩いてください。これを習慣にするだけで、生活習慣病を遠ざけることができるのです」

 

散歩が運動!?と思いがちですが、それがポイント。運動していると意識しないような散歩で気分転換しつつポジティブに生活習慣を少しずつ帰ることが大切だそう。

②気をつけるべき食材は、ポテト

運動の次は、食べ物。

 

「生活習慣病は大きく分けても4つの病気があり、『これを食べてはいけない』と一概には言えません。ただ、食べ過ぎはよくないと言われているものは、摂りすぎに注意したほうがいのは間違いないでしょう。炭水化物、油分、塩分、味の濃いもの、などですね」

 

そんななかでも、避けたほうがいいとされるのが「ポテト」だとか。

 

「体重増加に関与しやすい食べ物を調査したところ、一番体重増加に関与したのがフライドポテトと、ポテトチップス。ポテトでも揚げていなければいいのかというとそうでもなく、ふかしたイモなども例にもれず。ジャガイモは、体重増加にとても影響のある食べ物という調査結果が出ています。ものすごく影響力が強いので。食べちゃいけないわけじゃないけど、量的なものは体重が気になっている人は控えたほうがいいですね」

 

ちなみに、体重増加を防ぎたいのなら、無塩ナッツや無糖ヨーグルトを積極的に摂取するとよいとのこと。

③結果がでなければ…ワークライフバランスを見直す

毎日ランチの後に10分歩いて、ジャガイモを控える。それだけで、少し変化の兆しが見えてきた!という場合はいいけれど、うーん、あまり結果が出ない…となった場合はどうしたら?

 

「もし、いままで運動をまったくしていなかったのにランチ後のウォーキングを習慣にして体重が減らなかったら、そのぶん多く食べているのでしょう。体重管理は、数学の世界。摂取カロリーと消費カロリーを考えてみましょう」

 

さらに、生活習慣は毎日携わる仕事と、とてもリンクしているそう。

 

「生活習慣を見直せないというのなら、それはいまの仕事のしかた(時間の使いかた)

にも起因しているのかもしれません。とくに30〜40代は、生活習慣は仕事とものすごくリンクしていると言ってもいいでしょう。

 

例えば、とても忙しい職場で食事や運動の習慣をキープできないこともあるでしょう。度が過ぎていたら、転職とまではいきませんが、仕事内容については再検討する余地があります」

コロナの前と後では「生活習慣病」は増えているの?

気になるのが、コロナ禍で生活習慣病の罹患者が増えているのかということ。

 

「データをまとめるのに少なくとも1〜2年はかかるので、コロナで増えているというはっきりとしたデータは、まだありません。ただ間違いなく、理屈から考えるとみなさん運動不足だろうし、ストレスもたまっているでしょう。罹患者及びその予備軍が増えていることは、容易に想像できます。生活習慣病には、心理的ストレスも大きく起因します。前向きな気持ちにならなければ散歩も運動できないし、代償作用みたいな形で暴飲暴食をしてしまいがち。ネガティブシンキングは、いい方向には働きません」

 

だからこそ、ポジティブな気持ちで「いま自分が」できることから始めるのが大切だそう。

 

30〜40代が陥りがちな落とし穴

最後に、近藤先生より私たちへメッセージをいただきました。

 

「自分の将来のこと、よく考えてほしいです。30〜40代は、若い頃と同じというわけにはいかず、そのジレンマに一番悩む世代といってもいいかもしれません。仕事も体も今までと同じというわけにはいかないですが、自分が変化していくことを受け入れることが大切です。年齢を重ねることは、ごく自然なことですから。自分が変化していくことを受け止められない人がまれにいらっしゃいます。『若いときはこんなの全然問題なかった』とか、言ってしまったことありませんか?変化は必ずするものなので、いかに賢く受け入れ変えるべき部分はどうしていくかを考えていくこと。ずっと同じことをしていては、ダメです。そこが、生活習慣病になるかならないかの分かれ道と言っても過言ではないです」

 

人間の体とは、ギリギリまで結構頑張って正常な状態を保とうとするのですが「一回防波堤がくずれると、もとに戻すのが難しい」とのこと。さらに人間の体は、加齢とともに状態が悪くなるのは当然のこと。いま始めるのが、一番条件がいいのです!

 

PROFILE 近藤慎太郎さん

1972年東京都生まれ。医学博士。日赤医療センター、東京大学医学部付属病院を経て、山王メディカルセンター内視鏡室長、クリントエグゼクリニック院長などを歴任し、現在は近藤しんたろうクリニックの院長。消化器の専門医として、これまで多くのがん患者を診療。医療についての情報を世の中により分かりやすく伝えるべく、特技のマンガを通じて啓蒙活動を行う。著書に、『ほんとは怖い 健康診断の C・D判定』『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』(ともに日経BP)

取材・文/松崎愛香