お腹を痛がる女性

働きざかり、あるいは子育てまっただ中の20〜30代女性。体力、気力ともに充実した世代にもかかわらず、実は子宮頸がんの罹患率が高いことをご存知でしょうか? 

 

小さな子どもを残して亡くなる人も少なくないことから「マザーキラー」とも呼ばれる子宮頸がん。この病気の原因、症状について、関東中央病院産婦人科に勤務するかたわら、みんパピ!(みんなで知ろうHPVプロジェクト) の代表も務める稲葉可奈子先生に伺いました。

働きざかり世代や子育て世代を襲う子宮頸がんとは

2021年4月9日(子宮の日)に、みんパピ!が一つの動画を公開しました。2020年9月に子宮頸がんでパートナーを亡くした男性のドキュメンタリーです。

 

動画には、生前の彼女の映像を交えながら、2018年に子宮頸がんと診断がおりてからの治療の過程や、彼女の意思を継いで予防への啓発活動を行う男性の姿がありました。

 

子宮頸がんは、子宮の入り口にできるがんを指します。年間約10,000人が罹患し、約2,800人の命を奪う病。がんのイメージとは縁遠い若い世代に増えているのが特徴です。

子宮頸がんには自覚症状がない

「子宮頸がんは、罹患しても早期はほとんど自覚症状がありません。特に前がん病変といって、がんの手前の段階では、ほとんど自覚症状がないのが特徴です。全然関係のない症状をきっかけに産婦人科を受診した時や、検診時に判明するケースがほとんどです。

 

子宮頸がんの主な自覚症状は不正出血ですが、症状が出て受診した段階では、リンパ節まで転移している場合もあり、かなり進行しているケースも少なくありません。

 

女性の皆さんには、ぜひ子宮頸がんという病気を他人事ではなく、自分事として捉えていただき、予防のためのHPVワクチンや、検診についての正しい情報をしっかり知っていただきたいと思います」

進行次第では早産のリスク増、子宮全摘の場合も

万が一、子宮頸がんに罹患した場合、気になるのがそれからの妊娠・出産のこと。リスクは高まるのでしょうか。

 

「子宮頸がんになる前の段階である前がん病変で見つかったケースだと、レーザー治療も選択肢に入ってきます。レーザー治療であれば、早産のリスクも上がりませんが、病変を切除するためには円錐切除術という子宮頸部を円錐状に切除する手術が必要となります。円錐切除術後も妊娠や出産が可能です。

 

ただ、早産のリスクは上がります。自覚症状が出てから治療する場合になると、子宮の全摘出やリンパ節の切除にまで及ぶことがあります」

 

稲葉先生は、妊娠中に罹患が発覚するケースも少なくないと言います。

 

妊娠中の女性

「妊婦10万人あたり約10~50人が、妊娠中に子宮頸がんと診断されます。これは妊娠中に診断されるがんの中で2番目に多いものです。

 

もし治療を開始する時点で妊娠22週を超えていれば、帝王切開によって赤ちゃんを子宮から出した上で、子宮頸がんへの治療が開始されることもありますが、判断は患者さんの症状によってケースバイケースです。

 

とても悲しいことですが、進行具合によっては妊娠の継続を諦めなければならないケースも少なくありません。

 

新しい命を授かるという、幸せいっぱいの時に、同時に『子宮頸がん』と診断されるという状況は、想像を絶する辛さです。妊娠前から定期的に検診を受けていることで、そのような状況は回避することができます。女性のみなさんにはぜひ、妊娠前から自分のからだを大切にしていただきたいと思います」

子宮頸がん原因の95%がヒトパピローマウイルスの感染

妊娠や出産のリスクを高める可能性を持つ子宮頸がん。その原因の95%は、HPV(ヒトパピローマウイルス)です。

子宮頸がんはウイルス感染によって引き起こされる

「子宮頸がんは、がんの中でも珍しく、ウイルスの感染が原因となっています。子宮頸がんの原因となるHPVは主に性交渉で感染します。

 

性交渉経験のある人のおよそ8割が、生涯で一度はHPVに感染するといわれていて、男女ともに誰でも感染する可能性のあるありふれたウイルスです。

 

HPVに感染しているからといって、必ずしも子宮頸がんにかかるというわけではないので、感染していること自体を恐れる必要はありません。HPVに感染しても、なにも異常をきたさないこともありますし、一時的な感染でおわることもあります」

異形成と呼ばれる段階を経てがんに進行

子宮頸がんの前段階である、異形成は3段階。軽度、中等度、高度を経て子宮頸がんへと進行するケースがあります。異形成になったら必ず進行するわけではなく、自然に正常に戻ることもあります。

 

HPV感染から異形成子宮頸がんへの進行段階
提供:みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト

「まれに進行が早いケースもありますが、HPVに感染してから子宮頸がんに進行するまで一般的には数年から数十年かかると言われています。

 

定期的に検診を受けていれば、大抵はがんになる手前の前がん病変の段階で発見されることが多いですし、すでに前がん病変からがんに移行していたとしても、早い段階で見つけることができます。だからこそ、子宮頸がん検診はとても重要なのです」

 

「ありふれたウイルス」とはいえ、気づかぬうちに私たちの体を蝕んでいるかもしれないHPV。次回は、HPVについてより詳しく稲葉先生にお伺いします。

 

PLOFILE 稲葉可奈子(いなばかなこ)さん

稲葉可奈子先生プロフィール写真

医師・医学博士・産婦人科専門医。みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト 代表 。メディカルフェムテックコンソーシアム 副代表。予防医療普及協会 顧問。NewsPicksプロピッカー。 京都大学医学部卒業、東京大学大学院にて医学博士号を取得、大学病院や市中病院での研修を経て、現在は関東中央病院産婦人科勤務、四児の母 子宮頸がんの予防や性教育など、正確な医学情報の効果的な発信を模索中。

 

参考/みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト https://minpapi.jp