痛みの強さ、痛む場所、痛み方、頭痛といってもいろいろなつらさがあります。「日常的に起こる頭痛の対処法はタイプによって異なるので、まずは自分の頭痛がどのタイプかを知ることはとても大切」と頭痛専門医の五十嵐久佳先生は言います。早速チェックしてみましょう。

デスクワーカーがなりがちな「緊張型頭痛」

日常的に起こる一次性頭痛として代表的なのは、「緊張型頭痛」「片頭痛」の2つです。

 

「一次性頭痛でもっとも多いのが緊張型頭痛で、ギューっと頭全体が締め付けられるような鈍い痛みが特徴です。日本人のおよそ5人に1人が経験していて、女性の経験者は男性の1.5倍にものぼります」

緊張型頭痛の特徴

  • 頭全体に締めつけられるような痛みがある
  • 軽度〜中度の痛みで、寝込むほどではない
  • 疲れやストレスがあると起こりやすい
  • 入浴や体を動かすことで、痛みがやわらぐ
  • 吐き気や嘔吐はない

 

緊張性型頭痛のもっとも大きな原因は、なんとストレスだそう。

 

「デスクワークやパソコン作業、車の運転など、長時間同じ姿勢をとっていると、体にストレスがたまります。すると、肩や首の筋肉が収縮して血流が悪くなりいわゆる『コリ』の状態に。肩や首の筋肉は後頭部の筋肉とつながっているので、頭全体が締めつけられるように痛むのです」

 

特に筋力の弱い女性は起きやすく、猫背などの姿勢の悪さも原因になるそうです。また、精神的なストレスも関係しています。

 

「職場や家庭でのトラブルやイライラを感じると、神経や筋肉の緊張が高まって、痛みを調節する脳の機能がうまく働かなくなり、頭痛が起こるのです。また痛み自体がストレスになるので、悪循環におちいりがち。慢性化させないためにも、早めに断ち切ることが大切です」

“光や音”が原因で「片頭痛」になることも

片頭痛は、ズキンズキンと強い痛みが起きるのが特徴です。

 

「片頭痛がなぜ起こるかは、まだハッキリとは解明されていませんが、最近の研究では視床下部から始まる可能性があります。片頭痛発生スイッチが作動すると、脳硬膜の血管を取り巻く三叉神経が刺激され、そこから神経伝達物質が放出されて、痛みが起こると考えられています」

片頭痛の特徴

  • 頭の片側(または両側)が、脈を打つようにズキンズキンと痛む
  • 痛みが強く、仕事や日常生活に支障が出る
  • 体を動かすことで、痛みがひどくなる、またはじっとしているほうが楽
  • 頭痛の前に、キラキラしたものが見える、生あくび、空腹、手足のむくみ、イライラなどの体調変化が起きることもある
  • 吐き気や嘔吐がある、光と音に敏感になることも

 

「片頭痛の起こる要因は、肩コリ、空腹、低気圧、人混み、ストレス、寝不足・寝過ぎ、月経など、人によってさまざまです。ストレスは緊張型頭痛と同じですが、片頭痛の場合はストレスから解放されたときにも痛みが起こることがあります」

 

2040代の女性に多い片頭痛は、女性ホルモンにも大きく関係していると考えられています。

 

「エストロゲンという女性ホルモンの血液中の濃度が低くなると、片頭痛が起こりやすい傾向があります。エストロゲンは排卵期をピークに月経中に最も低くなります」

 

つまり、月経前〜月経中は要注意の期間。

 

「よくPMS(月経前症候群)と思われがちなのですが、実は半数以上のケースは片頭痛です。月経前や月経中に強い頭痛がある場合は、頭痛外来を受診してみると良いでしょう」

両方の頭痛を併せ持つ「合併型」も多い

その時によって、ズキンズキンと片頭痛のように痛むこともあれば、締め付けられる緊張型頭痛のような痛みもあるといった「合併型」の方も少なくありません。

 

「合併型でも、普段は緊張型頭痛だけれど月経前には片頭痛が起こるなど、傾向があるはずです。どんな時にどんな痛みがあるのかを知り、適切な予防や対処法をとるためにも、頭痛ダイアリー(命に関わる頭痛、そうでない頭痛。その差は何だと思いますか?<※>で紹介)を活用してみてください」

 

次回は、薬に頼らずに頭痛をやわらげる対処法を紹介します。

※医師の取材監修をもとに記事を制作していますが、症状などには個人差があります。ご自身の体で不安な点があれば、最寄りの病院にご相談ください。 

5人に2人が頭痛に悩む

PROFILE 五十嵐久佳先生

1979年北里大学医学部卒業。北里大学客員教授。富士通クリニック、東京クリニックで頭痛外来を担当。日本頭痛学会認定指導医・専門医として、頭痛に悩む患者の話を丁寧に聞き、症状にあった治療、服薬指導を行う。監修に「頭痛女子バイブル」(世界文化社刊)など。

取材・構成/大浦綾子 イラスト/いしかわひろこ