女性ホルモンに翻弄される私たちの身体について、お笑いコンビ「フォーリンラブ」のバービーさんと、産婦人科医の遠見さんが自身の経験を交えながら、本音で対談!
前回(※)は、生理やPMS(月経前症候群)の悩みやそれぞれの対処法について語ってもらいました。今回は、バービーさんがこれまで試した最先端の生理グッズのことから、小学校の生理教育の問題、自分の身体に主体的にかかわっていくことの大切さなど、興味深い話題をたっぷり伺いました。
生理の問題は自分ひとりのものじゃない
── 生理のツラさというのは、なかなか人に話せないし、特に男性には理解が得られにくいものです。わかってもらえないツラさで余計イライラしてしまうことも…。お二人はどんなふうに考えますか?
バービーさん:私は、夫やパートナーがいるなら、生理の問題は自分ひとりのものじゃないと思っていて。妊娠や出産に関わることだから2人の問題だよねという話はしておきたいですよね。
生理のときはメンタルが不安定になりがちだから、毎日顔を合わせるような距離の近い人には、“感情がコントロール出来ない場合があるから、迷惑をかけてしまったらごめんなさい”と前もって伝えておくほうが快適に過ごしやすくなる気がします。もちろん開き直るのではなく、自分自身も最大限に努力する必要はありますけどね。
遠見さん:確かに、近しい人の理解があると、それだけでも気持ちがラクになりますね。最近は、女性の生理問題がメディアで取り上げられたり、フェムテック(女性の身体の課題をテクノロジーで解決する商品やサービスなど)の台頭で、以前と比べると、生理についてオープンに語られるようになってきました。
それに伴って、生理休暇や生理に伴う症状の治療の受診がしやすくなるなど、働く女性が快適に過ごせる取り組みが進んでいけばいいなと思います。ただ、一方で心の境界線(バウンダリー)は人それぞれですから、プライバシーの配慮も同時に進めていかないといけないなと。
選択肢が広がるフェムテック商品も自分に合うものを慎重に選んで
── バービーさんは、吸水ショーツや経穴カップといったフェムテック商品もいろいろと試されているそうですね。
バービーさん:吸水ショーツや月経カップ、その進化版の月経ディスクも経験済みです。月経カップについては、数年前に、生理用品がなかなか手に入らない開発途上国の女性たちにエコな生理ケアがあるという情報を知り、興味を持ちました。
ただ、個人的には使用感があまり合わなかったんです。そもそも月経カップはシリコン製のカップを腟内に装着して経血を溜める仕組みなのですが、爪が長かったり、太めの人にはフックがやや使いづらいかもしれません。逆にフックが掴みやすいタイプだとサイズが大きく、抜くときの“真空パック感”もちょっと苦手でした。
とはいえ、その後発売された月経ディスクは爪が長くても大丈夫だし、私の感覚では出し入れも簡単で圧迫感もなかったですよ。人によって「合う・合わない」があるので、気になる人は一度試してみるのも手だと思います。
── 月経カップと月経ディスクって、何が違うのでしょう?
バービーさん:腟内に挿入して経血をキャッチするという仕組みは同じですが、月経ディスクは、カップ型ではなく、円盤型で使い捨ても可能です。私の場合、きちんと装着できていれば、経血が漏れたりすることもありませんでしたね。
遠見さん:正しい知識を持ったうえで、こうしたグッズを選択するのもひとつの方法です。ただ、ごく稀なケースとして、タンポンを含め腟に挿入するタイプの生理用品は、ある細菌の毒素によってトキシックショック症候群(TSS)という疾患を引き起こすことがあります。万が一、使用中に突然の高熱を伴う発疹や嘔吐、下痢などが生じた場合は、その生理用品の使用をやめてすぐに病院を受診してください。ですから、長時間使用や取り出し忘れなどないように、清潔に正しく使うことが重要です。
生理を取り巻く今の状況に学校教育が追いついていない
バービーさん:自分の身体は自分のものだから、そういったこともきちんと調べて知識をもったうえで選択したいですよね。もっとみんなが自分の身体に関心と責任を持つようになればいいなあと。
遠見さん:おっしゃる通りだと思います。ただ、学校や家庭での教育の問題も大きいのかなと。私は修学旅行前にナプキンしか教わりませんでしたが、いまだに小学校で受ける生理教育ではナプキンがメイン。タンポンは性交経験がなくてももちろん使えるものですが、先生のなかには“タンポンを教えるのはまだ早い”という価値観の方がいたり、保護者の一部にも“挿入経験がない子どもにタンポンを教えるのはいかがなものか”という意見もあるそうです。
でも、今後はもっとニュートラルに、“ナプキンだけではなく、タンポンや月経カップやディスク、吸水ショーツなど、いろんな選択肢があるよ”という教育を整えていく必要性を感じています。自分で積極的に情報を取りにいける人ばかりではないので、女性の健康や生理、さらには産む選択・産まない選択など、適切な情報が広く得られる社会にしていきたいですよね。
女性ホルモンの変化や生理のことは、社会のなかでないがしろにされがちですが、私たち医師も疾患や病気だけを診るのではなく、“生理”という日常的な課題に対するヘルスケアといった部分をもっと積極的に発信したり、快適にすごせるような環境を整える必要性を感じています。
自分の体は自分のもの。責任をもってちゃんと自分で選ぶことが大事
── 確かに、病気じゃないのに受診していいのかなと病院に行くことを躊躇する人も多そうです。遠慮してしまうというか。
バービーさん:日本の女性は、“自分の体は誰かのためにある”と思っている人が多い気がするんですよね。“いつか産まれる赤ちゃんのために”“お母さんにこうに言われたから”とか。ときには、“自分の体はパートナーのもの”といった価値観を持つ方もいるようです。
でもそれって、自分で選択してないんじゃないかなって思うんですよね。男性側にも“タンポンしているときは気持ちいいんじゃないの?”と偏見を持っている人もいまだにいますし。正しい知識を教育現場で教えていかないとダメだと思うんです。
遠見さん:すごく共感します!身体的にも精神的にも社会的にも健康な状態で自分の体のことを自分で決める権利がある。こうした概念を「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖に関する健康と権利)」といいます。これまで、“自分の体は自分のもの”といったことについて語られることが少なく、気づくきっかけが少なかったけれど、今後はもっと主体的に自分の身体に関わっていくことが大切ですね。
バービーさん:私のYouTubeチャンネルで、生理用品の使い方について発信している動画があるのですが、お母さんやシングルファザーの方が子どもにその動画を見せているというコメントをいくつかもらいましたね。
遠見さん:バービーさんのように、女性の身体の問題について積極的に発信する方がどんどん増えるのは素敵なことですよね。私たち医師も含め、いろんな立場の人がいろんなアプローチで適切な情報を伝えていくことで、選択肢も広がるし、正しい知識が認知されていくんじゃないかなと思います。そしてそれが、性の健康や幸せにつながっていくといいですね。
PROFILE バービーさん
1984年北海道生まれ。2007年、お笑いコンビ「フォーリンラブ」を結成。FRaU WEBにてエッセイの執筆ほか、TBSひるおびコメンテーターや町おこし等にも尽力。2020年7月からはTBSラジオ「週末ノオト」パーソナリティを務める。また、2020年2月にバービーのプロデュースで話題を生んだピーチ・ジョンコラボ下着が好評につき第2弾決定。昨年末開設したYouTube「バービーちゃんねる」では300万視聴回数を超える動画もあり好評配信中。
PROFELE 遠見才希子さん
1984年神奈川県生まれ。産婦人科医。2005年、大学時代から“えんみちゃん”のニックネームで、全国700か所以上の中学校や高校で性教育の講演活動を行う。2011年、聖マリアンナ医科大学卒業。亀田総合病院、湘南藤沢徳洲会病院などで勤務。現在、筑波大学大学院社会精神保健学分野博士課程在籍。著書に「ひとりじゃない 自分の心と体を大切にするって?」、「だいじ だいじ どーこだ? はじめてのからだと性の絵本」(2021年7月刊行予定)。