「食べグセ」というのは文字通りくせもので、当たり前になると、それをしないと落ち着かないという心理状態になってしまいます。

 

それならば「確実にヤセられる食べグセ」をつければいいのでは…と考え、実際に年間8kgのダイエットに成功したのが美容外科医の櫻井夏子先生。著書『食べグセ リセットダイエット』でも明かされた、健康的に痩せる秘訣とは——。

食べないダイエットで拒食や過食に苦しんだ過去

あなたは今までにどんなダイエットをしてきましたか?

 

ダイエットに熱心になればなるほど、人は「●●を食べない」「△△は減らそう」と制限に走ってしまいがち。しかし、それでたとえ体重は減ったとしても、美しさを手に入れることはできません。

 

今では健康そのものの私も、じつは拒食や過食に苦しんだ過去があります。きっかけは大学入学。

 

生まれて初めてのダイエットでは、ダイエットセオリーどおりに、まずは間食をやめ、炭水化物をカット。そして肉も魚も……と、食べる量を少しずつ減らしていったら、もっと、もっとと拍車がかかってしまい、最終的に体重は38㎏に。家から出られなくなるほど体が衰弱し、生理も止まってしまったのです。

 

私たちの体は、自分が食べたものでつくられています。そして生きるために必要な栄養を摂らなければ本末転倒、命すら脅かされてしまいます。

 

ムリな食事制限で栄養が偏ると、生理が止まったり、若くしても骨粗しょう症になるなど、健康上のデメリットをこうむることになりかねません。

 

ダイエットをしていてもしていなくても、生きている限り私たちは「五大栄養素」を必要とします。すこやかで美しくあるために、炭水化物、たんぱく質、脂質、ミネラル、ビタミンをバランスよく摂るという前提を忘れないようにしましょう。

“食べて”無理なく痩せる「食べグセ」のコツ

栄養バランスを踏まえた上で、次に考えたいのが、食事方法。「太る食べグセ」をやめて「ヤセる食べグセ」に変えることができれば、食べてもラクにヤセることができるだけでなく、一生、リバウンドの心配もありません。

 

ダイエット成功のシンプルルールはただひとつ、「継続できること」。私が日々心がけている「食べルール」をご紹介します。

「朝食には青魚」がベストな食事

ご飯に味噌汁、焼き魚……典型的な「日本の朝ご飯」が、ダイエットや美肌づくりにとってはベストな食事です。

 

キーになるのはイワシやサンマ、サバ、アジといった、背の部分が青緑がかっている「青魚」。

 

青魚の油には、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)と呼ばれる成分が豊富に含まれていて、脂肪の合成を抑えたり、血液をサラサラにしたり、炎症やアレルギー症状を抑えたりなど(一日4g のEPAを摂取すると紫外線による肌の⾚みが抑えられるという報告も)、体に良い機能が国内外で注目されています。

 

青魚の油は、夕食よりも朝食に食べるほうが、吸収が良くて効果的だといわれています。

 

また、ダイエットを成功させたいなら、食物繊維を積極的に摂ることは基本中のキホン。

 

糖の吸収を穏やかにし、血糖値の急上昇を防ぐのが食物繊維。さらに、先に食べれば満腹感も得られやすくなるので、糖質の量そのものも、摂りすぎずにすみます。

 

食べ過ぎない工夫で脳を騙す

上の2つの絵を見比べてみてください。皿に描かれている黒い円の大きさは左右ともまったく同じ。でも右のほうが大きく見えますよね。

 

これは視覚のトリック。私たちが大きさを判断するとき、まわりにあるものに影響されることを示すもので、デルブーフ錯視と呼ばれています。

 

料理の量感は、皿の大きさに左右されるだけでなく、同じ量でも小さい皿で食べると、脳が「たくさん食べた」と錯覚してくれるので、満腹感を得られやすくなります。

 

食事の時間は、口に食べ物が入っている時間だけを指すのではありません。よくかんで、ゆっくり食べることは、ダイエットの鉄則ともいえるでしょう。

 

そこでおすすめしたいのが「ひとくちごとに箸を置く」。

 

箸で料理をとり、口に運ぶ一連の動作も時間のうちですから、箸を置くことは、満腹中枢が作動するまでの「時間稼ぎ」になります。

 

実際にやってみると、箸を置くことで落ちついて食事ができ、ひとくちを味わうことにも気持ちを向けることができます。箸を置くだけでダイエット効果が得られるのですからもうけものです。

食べ物を口にする時間を10時間以内に

ダイエットをするとき、食べる量のことばかり気にしすぎてストレスがたまってつらい、という人は、量のことをいったんわきにおいて、その日の「最初の食事」(朝食時刻)と「最後の食事」(夕食時刻)に着目してみると、ラクに取り組めるようになるかもしれません。

 

米国で興味深い実験がありました。メタボリックシンドロームと診断され、かつ、一日のうちで最初と最後の食事時刻の幅(一日の“食べ物を口にする時間帯”)が14時間を超える食事習慣の人が、食べ物を口にする時間を10時間以内にしたところ、総摂取カロリーも減らすことができたのです。

 

この実験で注目するべきポイントは2つ。ひとつ目は、いつ食べるかは自由で、朝食べないなど、食事を抜くことは禁じていた点。ふたつ目は、サポートツールとして導入したスマホで生活習慣を管理するアプリによって、目標としていた食事時刻の幅を10時間以内に達成できたという点です。

 

ダイエットで行き詰まった場合は、「朝、最初に食べ物を口にする時刻」と「夜、最後に食べ物を口にする時刻」に意識を向けてみるのもひとつの方法です。

リセットを意識して持続可能な「きれい」をつくる

一食あたりの食事の目安量は「手のひら」をイメージするとわかりやすく量ることができます。

  • 主食のご飯、パン、麺類(炭水化物)は「にぎりこぶし1個分」
  • 肉、魚(たんぱく質)は「手のひらのふくらみにのる分」
  • 油は「人さし指の第一関節分」
  • 野菜は「手のひらに山盛り」

 

野菜は、食事の最初に食べておけば、主食やおかずの食べすぎを防ぐことから、ダイエットにとっても大歓迎!加熱するとかさが減り、たくさん食べることができます。

 

もし煮物などで多めに根菜を食べるときには、少し主食を控えめにするとバランスがとりやすいでしょう。

 

また、煮物にはお砂糖を多く使う場合があるので控えめにするか、ラカントを代わりに使用したいところ。ダイエット中は、炭水化物が多く含まれるポテトサラダ、カボチャサラダよりも、できるだけ葉物がメインの取り合わせを選ぶのがポイントです。

 

外食などで炭水化物を食べすぎてしまった場合は、

基礎代謝や朝、昼、夕と、一日3回の食事をトータルでみたときに、「摂りすぎの栄養素がない」か意識してみてください。

 

たとえば昼に脂質の多いものをちょっと食べすぎたら、夕食は油を使っていないメニューにして、脂質を控えるようにする。一日のうちで帳尻が合わなくても、3日間くらいで調整するイメージで工夫すればOK。

 

女性の寿命がのびるなか、少しでも長く、健康美をキープするために、栄養バランスのよい一日3回の食事と、無理なく「痩せる食べグセ」を意識した持続可能なダイエットで、美しい体づくりを目指しましょう。

 

プロフィール 櫻井夏子(さくらいなつこ)

美容外科医。東京女子医科大学医学部卒業。TAクリニック医師。「NASM(全米スポーツ医学アカデミー)」のスポーツトレーナー。大学時代、自分の体にコンプレックスを感じたことから「食べないダイエット」にはまり不健康なヤセ型に。大学卒業後は整形外科医として勤務、月320時間の激務と不規則な生活によって今度は18キロの体重増になる。正しい食事への向き合い方・美しい体づくりを自ら実践するために健康美を追求。ベストボディ・ジャパン2020ジャンル別大会[ドクター部門]でグランプリを受賞。現在は女性の美しさをさらに追求するため美容外科へ転身。医師として6年間で1万人に食事、健康指導を行っている。著書に『手のひらひとつで変わる! 美ボディ医師が教える 食べグセリセットダイエット』(主婦と生活社刊)。