共働き時代に合った私らしい生き方・働き方を模索するCHANTO総研。

 

IT企業として成長を遂げている株式会社ダンクソフト。一方で、10年前から徹底したペーパーレス化を進め、首都圏だけでなく徳島県や高知県、栃木県など、社員一人ひとりが働きたい場所で働くリモートワークを実現しています。

 

ダンクソフトでは、各地のオフィスを拠点にした「スマートオフィス構想」も推進していると言います。どのような取り組みなのか、代表取締役の星野晃一郎さんと社員の方々からお聞きしました。

 

制度名:リモートワーク


導入年月:2010


対象者:社員 

徳島や栃木在住の社員も。個人の需要に合わせた「働く場所」

ダンクソフト・東京オフィス
東京・千代田区の東京オフィス。コロナ禍を経て、2021年3月にオンライン・オフラインをつなぎ、社内外の方々との対話を広げる「ダイアログ・スペース」を新設。

 

── リモートワークの取り組みついて教えてください。2006年に社員の方がアトピーになったのをきっかけに在宅勤務を導入されたそうですね。その後、2008年には静岡県・伊東市で別の社員の方のためにリモートワークの実証実験を行ったと聞きました。 

 

中さん(ダンクソフト):

当社は2010年に本格的にリモートワークをスタートしましたが、そのきっかけは、私の子どもが保育園に入れなかったことでした。2008年に出産後、約2年の育児休業を経て職場復帰しようとしたのですが、第一子が保育園に入れなくて…。育児休業を延ばせないか星野に相談したんです。そうしたら、「在宅勤務ならできるんじゃない?」と提案されて、2010年に神奈川県の自宅でリモートワークを始めました。

 

子どもは今年、中学1年生と小学3年生になりました。裁量労働制で働いているのもあって、子どもの急な行事や習い事にも対応できるのでとても助かっています。仕事は今、企画チームに所属しているほか、オフィス業務全般を担当しています。また、学童保育の勤怠管理や児童日報などのツールがそろった「学童保育サポートシステム」のシステム開発にも携わっています。

 

ダンクソフト・オンライン取材の様子

左上から代表取締役・星野晃一郎さん。栃木県在住のエンジニア・大川慶一さん。広報外部スタッフ・松原さん。WEB運用を主に担当する徳島県在住の久米まつりさん。リモートワーク第一号の企画チーム ダイバーシティ推進マネージャー・中 香織さん。首都圏以外で働く社員第一号のプログラマー/開発チームマネージャー・竹内祐介さん(写真下中央)、筆者。

 

久米さん(ダンクソフト):

私は2017年に入社しました。基本的に徳島県の自宅でリモートワークをしています。当初はアルバイト勤務だったのですが、今は正社員で働いています。フレックスタイム制なので月120時間以内の勤務で、朝9時から夕方4時を基本に勤務しています。子どもは小学6年生と3歳です。

 

私は結婚を機に夫の地元である徳島県に移り住んだのですが、スキルを生かせる場所が見つからなくて、悩んでいたときにダンクソフトと出会いました。

 

今年の春は、徳島県オフィスに阿南工業高等専門学校の卒業生が入社されたのですが、私も阿南市に住んでいるので、これからは学校をはじめ地域の方々と何か一緒にできたらと思っています。

 

竹内さん(ダンクソフト):

ダンクソフトにはスマートオフィスが東京、徳島県、高知県、栃木県、群馬県(開設準備中)にあって、地域のオフィスは社員の声から生まれたものです。私は今、徳島県で働いていて、首都圏以外で働く社員第一号になります。

 

2012年に入社しました。もともと徳島県に本社があるソフトウェア会社でプログラマーをしていたのですが、東京に本社を移すことになって私も転勤せざるを得なくなりました。ちょうど出産の時期と重なって、徳島に残りたかった私は、悩んだ結果、その会社を退職しました。

 

ちょうど同じ頃、ダンクソフトが徳島県神山町にサテライトオフィスを作っていることを聞き、東京にいる星野さんを訪ねて、雇っていただけないか直談判しに行ったんです。すぐに賛同していただき、その場で入社が決まって、私の入社に合わせて徳島オフィスを作っていただきました。入社して9年、1人目の子どもも9歳になります。

 

大川さん(ダンクソフト):

私は2015年に入社して、今は栃木県でリモートワークをしています。栃木県の実家で祖父の介護を両親が担うことになり、その手伝いなどで栃木県に戻ることになったのですが、システム開発のスキルを活かせる場所がなくて。たまたま出会ったダンクソフトで栃木県にもオフィスを立ち上げるタイミングだったので、それに合わせて入社しました。

 

その後は、在宅で仕事をしながら、家族の介護に関わることができました。私の子どもも、今、定期的な通院が必要なのですが、育児・介護有給休暇を使って安心して通院できています。

何のためのリモートワークか?みんなで考えながら進める

── 今、ダンクソフトでは、各地にあるオフィスを通して「スマートオフィス構想」を進められているそうですね。この構想について詳しく教えてください。

 

星野さん(ダンクソフト):

「スマートオフィス構想」は、仕事に必要な機能や情報をインターネットにのせて、それぞれのスタイルで、インターネットを上手に利用して、クリエイティブに仕事ができるビジネス環境のこと。いち企業の枠を超えて、連携・協働の広がりを目指すのが「スマートオフィス構想」の目的です。その環境で、社員が働きたい場所で働くことで、その地域の企業や地元の人たちと横のつながりを広げていき、将来的に社会の課題解決につなげていきたいと考えています。働く人一人ひとりがそういう意識を持って仕事や地域と関わってくれたら、より安心して暮らせる社会がつくられていくと思うんです。

 

ダンクソフトはIT企業なので、主にデジタルで課題解決につながることができたらと思っています。これからも、各地域で「スマートオフィス構想」の考え方を広めて、地元で働きたいという若い人たちが活躍できる場を一緒に作っていきたいですね。

 

── 昨年からリモートワークを取り入れる企業が相当増えましたよね。その流れについてどうお考えですか?

 

星野さん(ダンクソフト):

まず、何のためにリモートワークをするのか組織の人みんなで考える必要があると思います。たとえばダンクソフトは、「自由な働き方の実現」を一番重要視しています。デジタルをうまく使いこなせるようになると、メールなど時間差で情報交換ができて、事情が異なる人たちが一緒に働ける環境が可能になります。誰かがヘルプを出した時には助け合える仕組みも作ることができます。

 

大きな話で言えば、BCP災害対策として、何か災害があっても業務が推進できる体制が維持できるのは組織としても大きな意味があると思います。デジタルを使いこなす能力と、何のためにそれを使っているのかという意識を共有しないと、リモートワークを有効に活用し続けるのは難しいのかもしれません。

 

── リモートワークをはじめダンクソフトの職場環境づくりは、「社員一人ひとりの声を聞いていく」ことを大事に続けられてきました。20年続けてきて、その方法は合っていたと思いますか?

 

星野さん(ダンクソフト):

はい、思います。創業当時から比べると、明らかにダンクソフトは組織としての質が大きく向上しています。頼もしいし、僕自身も楽しいですね。チャレンジしてよかったし、社員の方の声を中心にした環境づくりを続けてきてよかったと思います。

 

 

「社員にとって働きやすい環境とは何か」というテーマに、経営者と社員が同じ目線で取り組み、実践してきたダンクソフト。一人ひとりの事情に合わせた多様な働き方を可能にしているそのベースには、お互いへの信頼関係があり、一人ひとりの思いを大切に何でも話し合える風土づくりがあるのだろうと感じました。星野さんが話していた「自分の弱い部分を見せ合える関係」が組織の成長につながっていることも環境づくりの参考になるのではないでしょうか。 

【会社概要】
社名:株式会社ダンクソフト
従業員数:18名/パートナーシップ契約3名、パートアルバイト1名(2021年4月時点)
創業年月:1983年7月
業種: IT・情報通信
事業内容:WEBサイトのコンサルティング・制作・構築、経営改善コンサルティング、システム開発、クラウドサービス導入・運用支援、地方創生ICTサービス、クラウドサービス提供(ダンクソフト・バザールバザール他)、コンサルティングサービス(ペーパーレス・ストレッチ、テレワーク導入支援他)

取材・文/高梨真紀