共働き時代に合った私らしい生き方・働き方を模索するCHANTO総研。

 

「働きやすさは、社員一人ひとり異なっています。だから声を聞きながら対応していく日々の繰り返しです」と話すのは、株式会社ダンクソフトの代表取締役 星野晃一郎さん。20年前から社員が主体となった職場環境づくりを進めています。

 

ダンクソフトでは、「自由な働き方」の実現を追求してきた中で、年20日間の「育児・介護有給休暇」をはじめ柔軟で活用しやすい就業規則やワークスタイルを生み出してきました。そのきっかけや具体的な内容について、今回、星野さんと社員の方々からお話を伺いました。

  

制度名:育児・介護有給休暇


導入年月:2019年頃

(※2009年に導入した「育児有給休暇」の条件を見直して改定)

対象者:社員 

臨時休校も対象に。社員の声で進化していく「育児・介護有給休暇」

ダンクソフト代表取締役・星野さん
代表取締役の星野晃一郎さん。1984年7月に株式会社デュアルシステム(現株式会社ダンクソフト)に入社し、1986年7月、創業者の夭逝にともない代表取締役に就任。2003年頃からは社員を主体にした組織改革に着手。ペーパーレス化を徹底するなど、情報をインターネットにのせることでリモートワークを推進しながら、各地にサテライトオフィスを設置。時代を先取りした環境整備やデジタル事業展開で注目を集めている。

 

── ダンクソフトでは、社員の声に合わせた働く環境づくりを進めているそうですね。取り組みは始まったきっかけは何だったのでしょうか。

 

星野さん(ダンクソフト):

20年前、ニュービジネス協議会という経営者団体のプログラムで「定常的に15%成長する」という目標を設定しました。達成するためには何が必要かを長い期間考えた結果、「社員にとって安心して働ける環境をつくることがサービスや事業をより良くし、組織の成長にもつながるだろう」と、就業規則を一から作り直しました。

 

といっても、僕はダンクソフトに入社した翌年、創業者が急逝して代表取締役に就任したので、就業規則を作った経験がありませんでした。だから、まわりの社員に相談しながら作ったんです。今もあるのですが、意見を言いやすいように「言い出しっぺ制度」

(※)という仕組みを作ったりしながら。その方法が今の職場環境づくりのベースになっています。
ダンクソフト・オンライン取材の様子
オンライン取材の様子。左上から時計回りに、代表取締役・星野晃一郎さん。栃木県在住のエンジニア・大川慶一さん。広報外部スタッフ・松原さん。WEB運用を主に担当する徳島県在住の久米まつりさん。リモートワーク第一号の企画チーム ダイバーシティ推進マネージャー・中 香織さん。首都圏以外で働く社員第一号のプログラマー/開発チームマネージャー・竹内祐介さん(写真下中央)、筆者。 

 

── 社員に相談しながら就業規則を作り直していった経験が、「一人ひとりの声に耳を傾ける環境づくり」に活かされているのですね。では、就業規則の制定を主に担当されている中さんにお聞きします。就業規則の中で特徴的なものを教えてください。

 

中さん(ダンクソフト):

「育児・介護有給休暇」です。有給休暇とは別に、育児や介護などで年20日間、有給休暇が取得できます。子どもがいる家庭では、子どもが小学校を卒業するまで適用され、病気の看護や検診などで利用できます。

 

就業規則は毎年、社員の声を聞きながら細かく変更しているのですが、2019年にはこの「育児・介護有給休暇」の条件に「社員または配偶者が不妊治療を受ける場合」「社員または配偶者が出産のために通院する場合」を加えたことで、使える人を増やしました。2020年のコロナ禍では、幼稚園や学校の一斉休校になりましたよね。そのほか、台風も含めて、社員が子どもの面倒を自宅でみなければならなくなった場合も対象になりました。

 

── 子どもや介護などの緊急事態に、有給とはまた別に休めるのはありがたいですね。

 

中さん(ダンクソフト):

そうなんです。2020年の取得実績は17人中10人で、計58日でした。昨年は臨時休校の影響で取得日数が上がりました。私も臨時休校ではこの休暇を13日間取得しました。取得実績については、年2回全社会議があるので、そこで実績を報告しながら取得日数が上がるような働きかけをしています。

 

星野さん(ダンクソフト):

休校の場合の取得については、最初久米さんが日報に書いていたんですよね。竹内さんが開発したクラウド系の情報管理ツール「日報かんり」に竹内さんが開発をくわえたものがあるのですが、所感のようなものを毎日書くんです。そこに久米さんが「有給がたりなくなって困っている」と書いていて、それを僕が読んだのをきっかけに適用が決まりました。

 

おもしろいんですよ。久米さんの場合は相談事でしたが、毎日のBGMを書く人もいるし、その日の思いを表現する人もいるし。

 

── 何でも自由に書いていいんですね。そうやって意見や要望を共有しやすい環境がつくられているんですね。

 

星野さん(ダンクソフト):

一人ひとりの事情に会社を合わせていくことで働きやすさは形になっていくと思っています。今はそういった対応が必要な時代だと思います。長い目で見れば高齢化や少子化の問題の解決にもつながるし、介護の問題でも、介護のために会社を退職せざるを得なかった方が今、年間で20万人いると言われています。もしその問題を少しでも解決できる制度が会社にあれば、社員の方は安心して仕事ができるし、仕事の成果にもつながると思うんです。

 

それにいろいろな地域にいる多様な人たちと一緒に働けるのはおもしろいですよね。今いるメンバーとも20年前だと一緒に働けませんでした。10年前から各地域でのリモートワークにも挑戦してきましたが、徳島県や栃木県で仕事をしたいという方に「東京に来てほしい」とお願いしても難しいですから。 

 

 

記事中(※)の「言い出しっぺ制度」は特に発言の場を設けているわけではなく、何でも言い合ってあと押しできるような環境をつくっているそうです。このように自分の意見や気持ちを伝えやすい、お互いに助けあう雰囲気づくりが普段から工夫されているのだと感じました。次回は10年前から推進している「各地でのリモートワーク」について詳しくお話を伺います。 

【会社概要】
社名:株式会社ダンクソフト
従業員数:18名/パートナーシップ契約3名、パートアルバイト1名(2021年4月時点)
創業年月:1983年7月
業種: IT・情報通信
事業内容:WEBサイトのコンサルティング・制作・構築、経営改善コンサルティング、システム開発、クラウドサービス導入・運用支援、地方創生ICTサービス、クラウドサービス提供(ダンクソフト・バザールバザール他)、コンサルティングサービス(ペーパーレス・ストレッチ、テレワーク導入支援他)

取材・文/高梨真紀