「教育費や老後資金を考えると早く働きたいけど、保育園がなかなか空かなくて…」

 

「うちの職場は残業や休日出勤を断れない状況だから、子どもが生まれたら辞めるしかないかな…」

 

など、さまざまな理由で、働きたい気持ちはあっても働けない育児中の女性はまだ多いと考えられています。

 

この状況を改善すべく、これまで国からは2度の対策プランが行われてきましたが、2021年にはその第3弾として「新子育て安心プラン」が実施されます。

 

この記事では「新子育てプラン」とはどういうものか、以前のプランとどう変わったのかなどを、ママ・パパ目線で解説します。

まずはおさらい!「新子育て安心プラン」とは

「新」というくらいだから、もともとの「子育て安心プラン」があるの?

 

と思った方もいるでしょう。

 

そのとおりで、実は今回の「新子育て安心プラン」の前には2013年にスタートした「待機児童解消加速化プラン」があり、2018年からは「子育て安心プラン」と名を変えて現在にいたります。

 

いずれも、厚生労働省が打ち出した計画で、おもに保育園に通う年齢の子どもがいる女性が待機児童が原因で働けない…という状況を改善するためにスタートしました。

 

しかし、それでは子どもが保育園に入りさえすれば親は安心して働き続けられるのか?というと、そうではないことが次第に明らかになってきます。

 

たとえば次のような場合は、近所に住む祖父母などに頼れない人は行き詰まってしまう可能性もあります。

 

  • 子どもが急に熱を出した時のお迎えはどうするのか
  • 残業や休日出勤で保育園が開いていない時間はどうするのか
  • 配偶者の転勤などで引っ越した先でふたたび待機児童に戻ってしまう など

 

そこで、待機児童問題を含めた課題を総合的に解消しつつ、女性が安心して仕事を続けられるように…という観点から「子育て安心プラン」というネーミングが使われるようになりました。

具体的な目標と変わった部分は

「プラン」というからには、最終目標があるはずですよね。

 

「新子育て安心プラン」の具体的な目標は「2025年までに、25~44歳の女性の就業率(なんらかの仕事に就いている人の割合)を82%にすること」とされています。

 

直近の平成31年のデータによると、上記の年代の女性の就業率は77.7%で、旧「子育て安心プラン」での目標就業率は80%。予算もそれに合わせて組まれていました。

 

しかし「新子育て安心プラン」では、就業率82%を実現するため予算を増額しています。

 

2025年までの4年間で待機児童14万人分の受け皿を確保するとともに、ベビーシッターや潜在保育士・地域の幼稚園の空き部屋・送迎バスなど、保育の助けになる人や施設にも投資をしていくということです。

具体的には何がしてもらえるの?

まず、一番の課題となっている「待機児童」はどのように解消する計画なのでしょうか。

 

現在、全国的には少子化・人口減の影響で待機児童は減少しており、80%以上の自治体で待機児童ゼロを達成しているそうです。

 

現在、待機児童が多いのは東京・大阪を中心とした都市圏で、全体の63.5%。しかし、人数は99人以下の自治体がほとんどで、「あと少し」という状況だといえます。

 

この「あと少し」を満たすため、「新子育て安心プラン」では次のような対策に予算を追加するとされています。

 

  • 仕事量が多く勤務時間が長いなど、保育士の働き方・待遇を改善し、保育士数を確保する
  • 幼稚園の預かり保育拡充や認定こども園への転換で、預かる時間(働く時間)を増やす
  • 残業・夜勤・休日出勤などに対応できるよう、ベビーシッターの利用ハードルを下げる
  • 自治体の窓口に「保育コンシェルジュ」が常駐し、相談支援を拡充する
  • 保育園の送迎用巡回バスを新規に配備または増便する

 

保育士さんはやりがいがある反面、早朝から夜までのハードな勤務で、特に出産後は時間的にも続けられず退職せざるを得ない状況が続いています。

 

待機児童のいる地域では規制を緩和して1人の常勤保育士から2人の短時間保育士でも可とすることで、辞めてしまう人を減らし、地域の潜在保育士(資格はあるが、条件が合わず保育の仕事に戻れない人)を呼び戻すことを目指すそう。

 

ベビーシッターについては、これまで、自治体の助成を受けてベビーシッターを利用した場合の助成額が「雑所得」として計算され、翌年の税金が高くなってしまう…という問題点が指摘されていました。

 

しかし「新子育て安心プラン」ではこの助成額が非課税になります。安心して助成を受けながらベビーシッターさんに依頼できそうですね。

「新子育て安心プラン」の注意点は?

なお、ここまで紹介した施策は「新子育て安心プラン」参画に応募して認められた自治体のみで実施されています。

 

もちろん「しっかりと子育て支援ができていて待機児童もゼロだから必要ない」という理由で参画していない自治体もたくさんありますが、引っ越し先の対応が知りたい…といった時は、以下の厚生労働省のページにまとまっていますので利用してみて下さいね。

 

各市区町村の「子育て安心プラン実施計画」(平成30年度) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_01174.html ※データは平成30年度のものです。不明点は各自治体へ問い合わせるなど直接確認して下さい。

おわりに

この「新子育て安心プラン」は、基本的には「育児中の女性が職を離れたり諦めたりすることをなくそう」という目的で行われていて、保育園などの利用が前提となっています。

 

しかし理想をいえば、もう一歩踏み込んで、数年間は子育てに専念したい女性や、お子さんや本人の持病・介護などのため外で働けない女性も含め、みんなが安心して子育てができるような支援が受けられると一番ですね。

 

また、保育士さんを確保するための手段として「時短勤務」「職場の魅力を広く発信」という案が挙がっていますが、「給与を引き上げる」という記述がどこにも見当たりません。

 

コロナ禍で医療や事業者への支援が急務となり予算が苦しい中ですが、保育士さんの給与の改善はぜひ含めてほしかったところです。

 

「新子育て安心プラン」については以下の資料に詳細が記載されていますので、一度目を通してみてはいかがでしょうか。

 

文/高谷みえこ

参照/厚生労働省「新子育て安心プランの概要」 https://www.mhlw.go.jp/content/11922000/000707805.pdf
厚生労働省「新子育て安心プラン」参考資料 https://www.mhlw.go.jp/content/11922000/000707811.pdf