今の学校のトイレは明るく開放的

愛知県豊川市公立小学校のオールジェンダートイレ(画像提供:学校のトイレ研究会)

 

── ただ、男女別トイレに慣れている立場からすると、「男女が一緒のトイレだなんて抵抗や不安がある」という人は多い気がします。

 

井尾さん

まず、オールジェンダートイレがすべての正解であるとは私たちは考えていません。ですから、男女共用トイレを強要しているわけでも、もちろんありません。

 

ただ、「学校のトイレがオールジェンダートイレになることには抵抗や不安がある」と感じてしまうのは、おそらく「古いトイレ像」が前提にあるからではないでしょうか。

 

── 学校のトイレというと、薄暗い、汚い、閉鎖的、いじめの場に使われるといったあまりよくない印象がありますが…。

 

井尾さん

そういったイメージをお持ちの方は非常に多いのですが、新設校のトイレや近年改修した学校のトイレは、当時のイメージとは大きく変わっています。

 

今と昔の学校のトイレは何が違うかというと、照度がまずまったく違います。今の学校のトイレは昔のトイレよりもずっと明るい空間になっているんですね。

 

トイレと廊下を隔てる壁の上部を開ける、個室に小窓をつけるなど、自然光を採り入れるトイレ空間が近年は増えています。

 

また、人感センサー照明、明るい色調の壁紙や床シートの採用など、明るい空間にするためのさまざまな工夫がされています。

 

空間のあり方も大きく違います。昔はトイレと廊下の間はドアで締め切られていましたが、今は新設校などでは入り口に扉がないドアレスのトイレが積極的に採用されています。

ドアレスでもプライバシーに配慮

── 入り口のドアがなくてもプライバシーは守られますか?

 

井尾さん

入ってすぐの空間にスペースをもうけ、その先に多機能トイレや普通の個室を並べることで、誰がどのトイレを選んだのかが外からは見えにくい仕様にすることは十分に可能です。

 

また、トイレを危険な場と感じてしまう要因のひとつに閉鎖性がありますが、人の気配がわかるように入り口にすりガラスのような間仕切りをもうけるトイレが現在は増えています。

 

性別に関係なく、すべての子どもたちが安心して使える明るい空間であること。トイレの選択肢があること。教職員が見守りやすい設計であること。

 

これらの条件が揃っているのであればば、オールジェンダートイレにこだわる必要はないのではないでしょうか。