日本のトイレは機能に特化しすぎる
── トイレ空間が進化していることがよくわかりました。そういった前提を共有できるようになれば、いずれは日本でもオールジェンダートイレが選択肢のひとつとして普通に使えるようになるかもしれません。
井尾さん:
私は、日本はトイレに非常にこだわっている国だと思います。温水洗浄便座が日本で進化したのもその象徴ですし、海外のトイレ文化と比較してもそれは明らかです。
ただ、先進的なのはトイレにまつわるピンポイントのテクノロジーばかりなんですね。トイレ文化の多様性といった側面では、まだまだ遅れているのではないでしょうか。
たとえば、公共施設であってもオムツ交換台がない男性トイレのほうがまだ圧倒的多数ですよね。
出先で子どものおむつを替えなければならないパパ、大きな荷物を持った人、車いす利用者、外からは見えない障がいを持つ人…そういった人たちがすべて「多機能トイレ」に集中せざるをえないのが日本の現状です。
それらの問題を解決していくためにも、男女別だけでなく、さまざまな種類のトイレを増やしていく、トイレに多様性をもたらすことが今後はますます必要になってくると思います。
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性別や性自認に関係なく、誰もがニュートラルに使えるオールジェンダートイレは、選択肢のひとつとして今後増えていくことが望まれます。
新たなトイレの選択肢ができるということは、安心して利用できる人が増えるということ。トイレの多様性の意義について、私たちはもっと学ぶ場が必要ではないでしょうか。
PROFILE 学校のトイレ研究会
児童や生徒が安心して使える清潔で快適なトイレを提案・普及していくことを目的に1996年に発足。トイレ関連企業6社が学校トイレの実態をソフト・ハード面にわたり調査・研究・啓発活動を継続している。研究誌(無料)は公式サイトで閲覧、取り寄せ可能。
取材・文/阿部 花恵