男女共用トイレという選択肢

──では、どのような学校のトイレならば性的マイノリティの子どもたちにも対応できるのでしょうか。

 

井尾さん

まずは、現在多くみられる男女別トイレだけでなく、男女共用トイレの設置があげられます。

 

女の子でも男の子でも、誰もが使える男女共用トイレという選択肢をもうけることで、性別で割り当てられたトイレへのストレスが減らせる効果はあるのではないでしょうか。

 

──「だれでもトイレ」「多目的トイレ」「ファミリートイレ」のような、性の区別なく使える名称のトイレは公共施設でもよく見かけるようになりました。

 

井尾さん

そうですね。ただ、男女共用トイレは唯一の手段ではなく、あくまで解決策のひとつです。性的マイノリティは男女共用トイレを使用すべき、と強要しているわけではありませんし、トランスジェンダーだからといって「男女共用トイレを使いたい」わけではないんです。

 

それに、教室近くに設置されるトイレはほとんどが男女別トイレです。「だれでもトイレ」のようなトイレは校舎の端のような不便な場に設置されるケースが多い。そうなると、性的マイノリティの子どもだけが毎日のトイレ利用で不便を感じる、という不平等なことにもなりかねません。

トイレがからかいの原因になることも

── 学校に「だれでもトイレ」があることは知っていても、「自分(たち)が使うトイレではないから空いていても使わない」と考える子どもも多いかもしれません。

 

井尾さん

これも学校ならではの課題なのですが、「だれでもトイレ」を学校に設置したよ、じゃあ使うね、とはならないんですね。

 

実際に誰もが使えるオールジェンダーなトイレにするためには、「ここはみんなが使っていいトイレなんだ」という認識を子どもたちに理解してもらうための教育、空気づくりが必要になります。

 

公共の場における多機能トイレのような男女共用トイレは、性的マイノリティの人だけでなく、親子連れや高齢者、介助や同伴が必要な人など、さまざまな人に必要とされています。

 

ところが、学校という顔見知り同士が過ごす空間では、常に男女共用トイレを選ぶことが「他人とは違う」とされて、からかわれる原因になってしまうこともあります。それがきっかけでいじめに発展するケースも、残念ながらありえます。