女の子は女子トイレ、男の子は男子トイレ。

 

性別でそう二分されるのが当たり前だった学校のトイレに、近年変化が起きています。

 

性の多様性が語られる時代に、男女2種類のトイレだけではたりない?自分の性別に違和感がある子でも、安心して使えるトイレのあり方とは?

 

1996年の発足以来、学校トイレの実態をソフト・ハード面にわたって調査してきた「学校のトイレ研究会」事務局の井尾加奈子さんにお話を伺いました。

学校のトイレが抱える課題とは?

── 性別で分けられるのが一般的な学校のトイレですが、近年はどのような課題があるのでしょうか。

 

井尾さん

家庭や商業施設のトイレと違って、学校のトイレには「学校」という空間ならではの課題があります。

 

家庭内では性別に関係なく、家族が同じトイレを共有しますよね。対して、デパートなどの商業施設は、性別で分けられたトイレを不特定多数の知らない人たちが使います。

 

学校のトイレはこのどちらとも違っていて、知っている人間同士が特定多数で使う、いわば生活の場です。当然、誰がどのトイレに入ったのかも容易にわかってしまう。それが学校のトイレならではの特徴です。

 

しかし、身体の性別に違和感を持つトランスジェンダーの子どもの中には、「性別で決められたトイレを使いたくない」と感じている子もいます。

8割の教職員が「男女共用トイレが必要」

── トランスジェンダーや、性自認が男女のどちらにも当てはまらないXジェンダーなど、性的マイノリティの子どもにとっては、女性用/男性用と区分されたトイレに抵抗を感じてしまうのですね。

 

井尾さん:

ただし、性的マイノリティとされる子ども全員が「性別で分けられたトイレが嫌だ」と感じているわけではありません。

 

男女別にされる空間といえば更衣室も同様ですが、その子の感じ方、学校の状況によって、それぞれ要望は異なります。

 

一方で、子どもたちに日々接している教職員からも、性的マイノリティとされる子どもに配慮したトイレ整備を望む声はあがっています。

 

公立小中学校を対象にしたアンケート調査では、教職員の約8割が「性別に関係なく使えるトイレが学校にある方がいい」と回答しています。

(※1)
「性別に関係なく使えるトイレが学校にある方がいい」61%、「どちらかといえばある方がいい」24%、8割以上の教職員が「あるといい」と回答した