コロナ禍はなかなか収束の気配を見せず、私たちの心に暗い影を落としています。

 

なんとなく不安、心がざらざらする…。気づかないうちに心が疲れている子育て世代が増えているように感じます。あなたは今、つらさを抱えていませんか?パートナーや子どもはどうでしょうか?

 

心が壊れてしまう前にできることは何か。「現代の生きづらさ」の要因とともに考えます。

 

前回の「コロナ禍のいま、女性たちに何が起きている?」ではコロナ禍における女性の自殺増加の社会的背景について、自殺予防学の研究者である早稲田大学の上田路子さんに教えていただきました。第2回目は、働くママ特有の課題について。引き続き上田さんに伺います。

 

※本記事は自殺をテーマにしております。決して自殺を肯定する形で扱っているものではございませんが、メンタルに影響を与える可能性がございますので、閲覧する際はご注意下さい。

コロナ禍で働くママが苦境に

── 自殺のリスク要因として挙げられる「経済状況」。これまで女性にはこの影響はあまり見られなかったのに、コロナ禍で状況が変わったというお話を前回伺いました。共働きの家庭が増えたことで、女性も経済状況の変化にプレッシャーをより感じるようになったということでしょうか。

 

上田さん:

それはあると思います。また、働く女性が増える一方で、残念ながら日本では、まだ家事・育児の負担が女性に大きくかかっていることも影響しているかもしれません。「第6回全国家庭動向調査」(※A)によると、共働きで妻がフルタイム勤務であっても、約6割の妻が家事の80%以上を担っています。

 

── 稼がなきゃいけない、家事・育児のほとんどを担わなきゃいけないで、しんどい思いをしているママの声は編集部にも数多く届いています。

 

上田さん:

休校のときも、子どもの預け先がないことによる影響を大きく受けたのは、やはりお母さんだったと思います。

 

もともと共働きの人は本当にみんな、私もそうですけど、いっぱいいっぱいでやっているんですよね。そこにさらにコロナ禍が蔓延し、心身共にきつかったお母さんはたくさんいたんじゃないでしょうか。

他人事じゃない!悩みは抱え込まない

── 自分や家族の命を守るため、家庭でできることはありますか。

 

上田さん:

「いのちの電話」などの相談窓口もありますが、身近な家族のケアが必要不可欠です。ただ、自殺の原因というのはさまざまで、「これをやったら効く」という対処法はありません。

 

追いつめられている人は一人になったときが危ないので、できるだけ一人きりにしないのが理想ですが、とはいえ、24時間一人にしないというのも難しいところです。ですから、家族の様子に普段から気をつけて、「学校に行きたくない」「仕事に行きたくない」といったいつもと違う様子があったら、本人が悩みを抱え込まないよう家庭で声をかけるのが第一歩になります。 

 

── 「自分はひとりだ」と思わせないよう声をかけるのですね。そうやって家族をケアしつつ、自分自身も大切にしなくてはいけませんよね。

 

上田さん:

はい、まずは自分を一番大事にして欲しいです。お母さんがハッピーじゃないと家族はハッピーじゃないですから。私は以前アメリカに15年ぐらい住んでいたのですが、アメリカのお母さんって、自分の時間や夫婦の時間をすごく大事にしてるんですね。例えば毎週金曜日に子どもをベビーシッターに預けて、夫と一緒に2人だけで出かけたりするんです。

 

── 日本では「子どもを預けてまで」と自分を責めてしまいそうですね。

 

上田さん:

日本のお母さんは奉仕精神が強く、「子どもが一番」という人が多いですよね。ただ、子どもに集中するあまり自分のケアがおろそかになってはいないでしょうか。自分のケアはとても大切です。自分や夫婦の時間を豊かにすることは、総合的に見ると家族に恩恵があると思います。個人的には「お母さんの元気が一番」だと感じています。

 

── 「理想のママ」にこだわらないほうがいい?

 

上田さん:

仕事をしながら、ご飯もちゃんとつくるし、家も綺麗だし、子どもの勉強もみて、そこまでお母さんだけが頑張らなくてもいいと思います。もうちょっと力を抜いてもいい、そういう意識が浸透してくると、世の中のお母さんたちも少しは楽になるのではないでしょうか。