コロナ禍はなかなか収束の気配を見せず、私たちの心に暗い影を落としています。

 

なんとなく不安、心がざらざらする…。気づかないうちに心が疲れている子育て世代が増えているように感じます。あなたは今、つらさを抱えていませんか?パートナーや子どもはどうでしょうか?

 

心が壊れてしまう前にできることは何か。「現代の生きづらさ」の要因とともに考えます。

 

第1回目は、自殺予防学の研究者である早稲田大学の上田路子さんにコロナ禍が人々にもたらした社会的影響について伺います。

 

※本記事は自殺をテーマにしております。決して自殺を肯定する形で扱っているものではございませんが、メンタルに影響を与える可能性がございますので、閲覧する際はご注意下さい。

減り続けていた日本の自殺者数が増加

── コロナ禍が収まらない中、女性の自殺が増えているというニュースが話題になりました。

 

上田さん:

皆さん、コロナ禍の影響でつらい思いをしていますよね。特に、2020年2月末からの休校の影響は大きかった。私も9歳児の母ですが、大変な思いをしました。自宅で勉強するにも食事の用意をするにも親のサポートが必要など、細かいストレスがたくさんありました。

 

── 子どもが家にいたら外に働きに行けず、在宅ワークだとしてもはかどりません。エッセンシャルワーカーの方々は子どもの預け先が見つからず、収入が減ったママも多いです。そうしたことが関係しているのでしょうか。

 

上田さん:

女性の苦境についてお話しする前に、まずは日本の自殺者数について大まかに説明しましょう。もともと日本の自殺者数はとても多いものでした。90年代後半からの経済危機で自殺者数が年間3万人台になり、ピーク時は3万4427人に。そうした状況が10数年続きました。ただ、2009年ごろから徐々に減りはじめ、2019年には2万169人までになっていました。

 

── 10年のうちに3万人から2万人に減ったというのは大きな変化のように思えます。なぜでしょうか?

令和元年中における自殺の状況 資料|警察庁より編集部作成

 

上田さん:

はっきりとした因果関係は証明されていないのですが、景気が上向いたり、国や民間の自殺対策が実を結んだりしたからではないかと考えられています。ただ、コロナ禍によってその減少傾向に歯止めがかかり、また自殺者数が増え始めたというのが現状です。

 

── 「コロナ禍で女性の自殺が増えた」という情報に対して、SNSなどでは「男性のほうが自殺者数が多いのでは」という指摘もありました。どういうことでしょう?

 

上田さん:

どこの国にもいえることですが、自殺者数の男女比はもともと2対1ぐらいで、男性の方が多いとされています。だから現在でも人数でいえば男性の自殺のほうが多い。ただ、このコロナ禍になってから、女性の自殺者数の増加率が、男性を上回ったということなんです。