共働き時代に合った私らしい生き方・働き方を模索するCHANTO総研。
マンションの管理業務を行う三井不動産レジデンシャルサービス株式会社(レジサ)は、2016年に自分で休日を設定できる「セルフ勤務計画」という制度を営業部門で導入しています。この制度ができたおかげで、営業スタッフの働き方が大幅に改善されたといいます。
実際にこの制度を使って働く営業部門の劒持さん、渕上さん、山﨑さんと、制度の構築に携わる人事の藤原さんにお話を伺いました。
「休日だから」と平日にも堂々と休めるように
──レジサの営業部門は自分で休日を決められる「セルフ勤務計画」という制度があると聞きました。どのような制度なのでしょうか?
藤原さん:
「セルフ勤務計画」は、いわゆる月間変形労働時間制で、前月20日までに次月の休日を自分で設定することができる制度です。
これまでは部署にかかわらず、一律で土日祝日が休日だったのですが、2016年にこの制度が導入されたことで、営業部門では平日にも休日を取得できるようになりました。もし休日に設定していた日にお客様とのアポイントが入ってしまった場合は、休日出勤扱いになり、代休が発生します。
──「セルフ勤務計画」を導入された背景にはどのようなことがあったのでしょうか?
藤原さん:
当社では2013年の「ノー残業デー」導入を皮切りに働き方改革を推進してきたのですが、当時は、「残業時間が多い」とか、「土日に休みが取れない」という声が出ていました。当社の営業スタッフはお客様とのアポイントがどうしても土日に入ってしまうことが多く、休日出勤せざるを得ないケースが非常によくあるのです。
もちろん、休日出勤した分は代休として取得することができるのですが、実態としては代休をきちんと取り切れていないケースも散見されていました。代休は3ヶ月以内に取得することになっていて、最終的に取得できなかった分は会社が買い取るという形になります。従業員にとっては給料が増える反面、しっかり休めていないということがあったんです。こうした状況を是正し、自分で設定した休みについてはしっかり取ってもらおうと考え、生まれたのが「セルフ勤務計画」です。
この制度であれば、仕事の繁閑によって休みをいつ取得するか、自分で調整できるんです。例えば、忙しい週は1日だけ、余裕がある週は3日休むというように、その月のトータルの休日数が合うように取れていればいいということなんです。
──営業部門の皆さんは、実際にこの制度を使ってみていかがですか?
渕上さん:
一番変わったのは意識の部分ですね。これまでは代休が発生してからいつ代休を取ろうか考えていましたが 、この制度ができてからは、仕事のアポイントが決まったタイミングでいつ休みを取るのか考えられるようになりました。意識的に自分でやりくりしていくので、個人的にはいいなと思っています。
お客様とのアポイントや状況は自分で把握していますし、前月の20日までにはアポイントがある程度固まっているので、急な予定変更以外で変わることもほとんどありません。申請画面ひとつで簡単に申請できて、基本的に申請した通り取得できています。
劒持さん:
本社スタッフや事務職は平日が出勤日なので、以前は平日に代休を取るとなんとなく申し訳ないという気持ちがあったり、実際問い合わせがきたときに「なんで担当者がいないの?」みたいなプレッシャーもあって、気持ちの面で休めないことも正直ありました。でも「セルフ勤務計画」が導入されたことで、平日でも会社として認められた休みなのだから、堂々と休んでいいんだと気を使わなくてもよくなりました。
山﨑さん:
私は営業部門で事務をしているのですが、事務側からしても本当は休日に電話するようなことはしたくありませんでした。でも問い合わせがきてわからないと、営業スタッフに電話せざるを得ませんでした。
それが、年々、事務職だけでなく営業スタッフの人たちも「休日は絶対邪魔してはいけない」という認識に変わっていって、その日いる人だけで協力して対応するようになっていったんです。最近は世の中的にも働き方改革が進んできているので、お客様にも平日に休みをもらっている事情をご説明するとご理解いただけることが増えてきましたね。
──制度を使う人たちの意識も変わっていったんですね。皆さんお子さんがいらっしゃるとのことですが、子育てやご家庭への影響はいかがですか?
渕上さん:
やはりプライベートな予定を立てやすくなりました。休みだけでなく、遅くなる場合の時間なども事前に共有できるので、妻側からしても自分の予定を立てやすいのかなと思います。
私の場合は平日に休みを取ることが多いんですけれども、ある程度お客様とのやり取りの中で予定を調整できるので、できるだけ土日のどちらかにアポイントをまとめて、どちらかは休むようにしています。いまはコロナのこともあるので、外出先で密になる環境はできるだけ避けたいと思うと、平日に休めるのはいいですね。
新たな制度の導入には反対意見も出たが…
──とてもいい制度のように感じますが、導入はスムーズに進んだのですか?
藤原さん:
制度導入までは1〜2年くらいかかっています。 セルフ勤務計画を受け入れるための勤怠システムに変更したり、制度設計などに時間を要しました。また、制度を導入した直後は「うまくいかないんじゃないの?」とか、「給料減るじゃん」など、否定的な声もありました。
劒持さん:
極端な話、代休を取らなければその分お金になりますから、休みをきちんと取った分、年収が下がるということは営業スタッフの中で問題になりました。でもきちんと休むと、やっぱり体も心もリフレッシュするんです。いまは営業スタッフもきちんと週に2回、だいたい火曜・水曜に休むようになりました。
藤原さん:
やっていく中でそれぞれが自分なりの使い方を見つけて、自分のライフスタイルに合わせて使ってもらえるようになりました。当初、セルフ勤務計画に否定的だった人から、「いまは休みがきちんと取れてプライベートも楽しんでいる」という話を聞くと嬉しくなりますね。
──これまで休日出勤して対応していた分の仕事はどうしているのですか?
劒持さん:
人事で働き方改革を進めることになったときに、営業部内では、このままでは仕事が回らないと気づき、業務効率化の横割りチームを作るなど、業務の見直しに取り組んだんです。すると、それまで当たり前のようにやっていたルーティンにも実は無駄があったり、まとめられる業務があったりと、細かく見ていけば効率化できることがたくさんあったんですよね。営業部だけでなく、総務部でもペーパーレスに取り組むなど、全社で働き方改革と業務効率化、ペーパーレス化を一斉に進めました。
あとは従業員一人ひとりの意識の問題もありましたね。当初は、積極的に制度を活用している人たちを見て、「あの人ばっかり早く帰って。他の人の仕事も手伝ってよ」という雰囲気がありましたが、だんだんとそういうこともなくなっていきました。部門長が率先して早く帰るようにしてくれたことが大きかったと思います。いまは「残業している人が偉い」という空気感もなくなってきましたね。今後も、働いた時間ではなく、効率よく生産性を上げる人がより評価されるようになることを期待しています。
…
職種や部門によって働きやすさは異なります。休みも取らず、がむしゃらに働くことがいいと考えられていた時代もありましたが、いまは仕事もプライベートも大切にする時代。自分の業務に合わせて休みを設定できる「セルフ勤務計画」は、柔軟に働かなければならない人に寄り添う制度と言えるのではないでしょうか。 また制度を作るだけでなく、それを活用する従業員の意識改革も重要なのだということが取材を通してわかりました。
取材・文/田川志乃 取材協力/三井不動産レジデンシャルサービス株式会社