パンにパスタにホットケーキ…手軽でおいしい“自宅ごはん”が気分を落ち込ませる原因に?自宅時間増加で増えた糖質過剰を抑制して「コロナうつ」に打ち勝つコツとサプリメント術を、ひめのともみクリニック院長の姫野友美先生に聞きました。
“家時間”の増加でうつ症状が増加!?
コロナ禍によって女性の自殺が増加しています。警視庁の統計によれば、2020年9月の自殺者数は対前年比8.6%増で、女性の自殺者数は27.5%と大幅に増えました。自殺はうつと深く関連があり、自殺者の8割はうつだったのではないかと専門家が指摘しています。
また別の調査から、うつ症状のある人がコロナ禍以前と比較して倍増していることや、女性の産後うつが増加していることもわかっています。これらの事態を受け橋本聖子・男女共同参画担当相は「新型コロナの影響は女性に特に強く表れている」とコメントを発表。家族が自宅で過ごす時間が増え、女性の家事や育児の負担が増加したことも、女性の自殺増の要因の一つとみられています。
「もともと女性は男性に比べてうつが多く、コロナ禍でさらにじわじわ増えてきました。私は栄養学の観点から心の健康維持に取り組んできましたが、『コロナうつ』に打ち勝つためにも、糖質過剰の食生活の見直しを推奨したい」と姫野先生はいいます。
パンにパスタ…手軽な食事に注意!
「炭水化物のメニューは一皿で満足感があるうえに手軽。家族をお腹いっぱいにするために、こういったメニューに頼る場面も増えたのではないでしょうか」
炭水化物は糖質を多く含みますが、なかでもパン、麺類、コメなどは糖質の多い食材の代表です。糖質の多い食事をとると血糖値が急上昇し、その血糖値を下げようとインシュリンが大量に放出され、一気に血糖値が下がります。
インシュリンによって一気に血糖値が下がると、今度は「血糖値が下がりすぎるのは緊急事態」と脳が判断し、下がった血糖値を上げるためにアドレナリンやノルアドレナリンを分泌させます。これらのホルモンは興奮や攻撃性を高める働きがあり、イライラしたり不安になったりして気持ちが落ち着きません。中にはパニック発作を起こす人もいます。
糖質過剰で心の不調が生まれ悪循環へ
このように血糖値が急上昇・急降下を繰り返す不安定な状態が続くと、「機能性低血糖」になります。機能性低血糖になると夜間もインシュリンがだらだらと分泌され続け、その働きで下がった血糖値を上げようと、睡眠中もノルアドレナリンなどが分泌されます。
睡眠中に興奮作用のあるノルアドレナリンが放出されるわけですから、眠りが浅くなったり、短時間で目が覚めたり、悪夢にうなされるなど、熟睡を妨げます。やがては自律神経も乱れさせ、眠気や集中力の低下、疲労感が続くようになります。
ノルアドレナリンの分泌を抑制するため、セロトニンが消費されます。ストレスから甘い物を食べたり、お酒を飲んで、さらに血糖値の乱高下が始まる悪循環に陥ります。この状態を放っておくとうつやパニック障害などの心の病気や、さらには糖尿病や動脈硬化など生命にかかわる病気を引き起こします。
ビタミンB群で糖質分解を促進!
コロナ禍によるさまざまな環境の変化が女性のうつ増加を誘引したとすれば、姫野先生は「女性の予防手段として、糖質過剰を改善する生活習慣を取り入れて」といいます。
「予防手段のひとつとして考えたいのが、ビタミンB群をしっかり摂取して、糖質の代謝を促進することです」
ビタミンB群は基本の栄養素の一つタンパク質を代謝するだけではなく、糖質の代謝にも不可欠な栄養素です。ビタミンB群が不足すると糖質をきちんとエネルギーに換えることができません。