共働き時代に合った私らしい生き方・働き方を模索するCHANTO総研。
現場主導による“3つの改革”で生産性を飛躍的に向上させることを目指す「爆発的生産性向上プロジェクト」通称「爆生プロジェクト」。前回記事「現場の声を生かして会議時間25%削減!パナソニックの『爆発的生産性向上プロジェクト』」では、従来の会議のあり方を大きく変えた“会議改革”を紹介しました。後半は、“コミュニケーション”と“学び”の改革について、引き続きプロジェクトメンバーの氣谷さんにお話を伺います。
Profile 氣谷英里さん
パナソニック モバイルソリューションズ事業部 法人営業1部に所属。モバイルPC「レッツノート」やサービス商材「しごとコンパス」などの販売を担当。入社8年目で、8月に結婚したばかり。
リモートワークの最大の悩み“コミュニケーション”にもいち早くメスを
──コロナ禍での職場内のコミュニケーション不足に関する悩みはよく耳にします。御社の“コミュニケーション改革”について教えていただけますか?
氣谷さん:
チームで成果を出すにはコミュニケーションが大切ですが、テレワークだと“ちょっとした疑問を相談しづらい”などの声は当社でも上がっていました。そこで、会話を増やすために、メールでのコミュニケーションではなく、Microsoft Teams(チームズ)というチャットを積極的に活用するようにしています。
──メールではなく、チャットを活用することでどういったメリットがあるのでしょう?
氣谷さん:
メールの場合、「お世話になっております。法人営業一部の〇〇です」などの挨拶から始まり、特に上司に対しては書き方も丁寧になるため、意外に時間がかかりますよね。でも、チャットなら「ちょっと良いですか?」と気軽に質問でき、要点だけをやりとりできるので、限られた時間で生産性が上げられるんです。チャットで伝わらない場合も想定して、直接電話をする“クイックコール”も設定しました。これらのツールによって問題を早期に解決でき、意思決定の実行スピードも上がってきています。
──顔が見えないと、「今、電話してもいいのかな」とためらってしまいませんか?
氣谷さん:
まずはチームで共有しているOutlookのスケジュールを確認します。“今、空いていそうだな”と思ったら、「ちょっと良いですか?」とすぐにチャットで連絡をしてから電話、という流れです。こうした直接的なコミュニケーションもテレワークの状況では、すごく大事だと思っています。それだけでなく、会議の冒頭2分間には雑談タイムを設けて、全員が話しやすい雰囲気を作るようにしているんですよ。
──様々な取り組みによって、テレワークでも社内にいる時と変わらないコミュニケーションがとれるように工夫されているのですね。
氣谷さん:
スムーズなコミュニケーションを可能にするには、“ここでは何を話しても安全”と思えるような“心理的安全性”を担保することが重要だと考えています。チームズのチャット数も利用率が4倍に増えており、以前よりコミュニケーションが活発になってきていることがわかります。
社員が講師を務める“学び部屋”で社内スキルを共有
──「爆生プロジェクト」の3本目の柱として掲げられている「学び方改革」では、どういった取り組みをされているのでしょうか?
氣谷さん:
これは、「業務が忙しく学びの時間が取れない」「社内スキルの共有が難しい」といった現場の課題からスタートした取り組みです。オンラインの“学び部屋”を設定し、社員が講師となってそれぞれの専門分野についてレクチャーします。
──社員が講師を務めるのはユニークですね。どういった講座があるのですか?
氣谷さん:
前回記事で触れた「会議改革」のファシリテーション講座もそのひとつです。ほかにもタイムリーなテーマが多いんですよ。ちなみに、第1回目の講座は「非接触IC技術について」でした。コロナ禍で非接触での支払いが増えるなか、非接触端末や顔認証などの技術やノウハウについて、SE部門の社員が講義を行いました。こうした内容は社内で共有されていて、講座に参加できなかった社員にも情報をシェアしています。
──社内の技術やノウハウなどの知見を共有できるオンラインの場があると、学びがグッと身近になりますね。
氣谷さん:
参加率も非常にいいんですよ。アンケートによると、この6か月で学びの時間が270%増加し、90%のメンバーが「学ぶことでモチベーションアップにつながった」と回答しています。
働き方を可視化できる「しごとコンパス」がワークライフバランスを考えるツールにも
──御社では、テレワークでの働き方を可視化できる「しごとコンパス」というツールも使っていらっしゃいますよね。これはどのようなものですか?
氣谷さん:
「しごとコンパス」は、以前から弊社で提供している働き方支援ツールで、私たち自身も活用しています。PCの操作ログから労働時間を集計したり、Outlookのスケジュールと連携させることで、“誰がどんな仕事にどれだけ時間をかけているか”がグラフ化されます。それによって“自分の働き方を見直すことができたり、データをもとに上司とコミュニケーションすることで、的確な指導を受けられるんです。
私も自分のしごとコンパスのデータを見ながら「パワーポイントを使っている時間が多いな。資料作成に時間を使い過ぎているかも」とか「エクセル作業が多いから、効率化する方法を考えよう」というように、生産性を向上するにはどうすればいいかを常に考えるようになりましたね。
──自分で課題が発見でき、改善していくことができるんですね。
氣谷さん:
この「しごとコンパス」は、仕事と育児を両立しているママ社員にとっても、有効なツールになっています。例えば、幼稚園のお迎えで1時間ほど中抜けし、帰宅後に1時間ほど仕事をするというようなフレキシブルな働き方にも対応可能です。あらかじめ上司に伝えておけば、気おくれすることなく予定を優先できます。それに、しごとコンパスで成果が可視化されるので、「“たとえ時短でも成果を上げている”と示すことができるので、気持ちの上でも快適に働ける」というママ社員の意見もありました。
──「爆生」
氣谷さん:
「しごとコンパス」を使って、グループ全体の傾向分析をし、
──氣谷さん自身、「爆生」プロジェクトにより、今後の働き方や意識の面で変わったことはありますか?
氣谷さん:
“限られた時間でいかに成果を出すか”ということに、より集中するようになりましたね。私自身、今年8月に結婚し、家庭と仕事の両立がいかに大変かを実感しているので(笑)。さまざまな取り組みが推進され、働きやすい環境、学びながら成長していける環境が整うことで、今後、子育てをしながら今の仕事を続けていくイメージが描きやすくなりました。
…
リモートワークによるコミュニケーションの低下や、上司のケアが行き届かないリスクを回避するためのパナソニックの様々な工夫には、今すぐ真似できるものも。今後も継続して現場の声を取り入れ、ますます働きやすい環境を整えていくことでしょう。それが画期的な商品づくりにつながっていくのではないでしょうか。
取材・文/西尾英子