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withコロナを見据えた働き方としてテレワークの導入が進むなか、「オンラインでの会議やコミュニケーションに苦戦している」という声も多く聞きます。今回は、そんな課題を解決すべく現場主導でスタートしたパナソニックの取り組みに注目!その名も「爆発的生産向上プロジェクト」。いったいどんな内容なのか、プロジェクトメンバーの氣谷さんに話を伺いました。  

 

Profile 氣谷英里さん  

パナソニック モバイルソリューションズ事業部 法人営業1部に所属。モバイルPC「レッツノート」やサービス商材「しごとコンパス」などの販売を担当。入社8年目で、8月に結婚したばかり。「働きながら家事をすることの大変さを実感する毎日です(笑)」

 

現場の声をとことん生かす!「爆発的生産性向上プロジェクト」

──御社が実践している「爆発的生産性向上プロジェクト」はボトムアップの取り組みとして注目されていますね。詳しく教えていただけますか?

 

氣谷さん:

「爆発的生産性向上プロジェクト」通称「爆生プロジェクト」は、働きがいと生産性を上げるために、現場主導でスタートした働き方改革です。さらに、withコロナにおいて、どのように生産性をあげたらいいのか、誰もが模索しているなか、まずは自分たちが生産性向上に取り組み、その内容をお客様に横展開して業務向上に貢献するという目的もあります。

 

具体的な取り組みとしては、「会議改革」「コミュニケーション改革」「学び改革」の3つがあります。まず最初に着手したのが「会議改革」です。

 

現場の声を拾ったところ、「会議が多い」「ダラダラ長引いて予定通りに終わらない」などの不満がありました。そこで、時間を従来の60分から45分に短縮し、さらに、あらかじめ会議の目的を明確にしてメンバー間で共有。“情報共有”“意思決定”“アイデア出しのブレスト”など、会議のタイトルの頭にイニシャルをつけ、事前に確認できるようにしたんです。実際の会議では、時間配分を考え、決定しなければいけない事項を優先して扱うことを目指しました。

 

 

──目的があって会議をやるはずなのに、いつの間にか会議自体が目的になってしまっていることもありますよね。目的を明確にすることで、事前の準備や心構えも違ってきますし、アウトプットの質も上がりそうです。

 

氣谷さん:

そうなんです。会議に参加してから議論がスタートするのではなく、あらかじめ目的に応じた準備をすることで、内容がブレたり、決定事項が決まらないということがなくなりましたね。私自身、以前は、会議に入ってからテーマについて考えることも多かったのですが、今は事前準備に力を入れるように。自分の意見をパワーポイントで1枚にまとめ、事前にチャットでメンバーに共有。会議では、より建設的なやりとりができるようになったと思います。

 

──会議の短縮で生まれた「15分」はどんなふうに活用されていますか?

 

氣谷さん:

会議のフォローアップやアクション事項のまとめ、次の会議の準備などに充てるケースが多いようです。

 

──他の企業でも同様の悩みを抱えていそうですが、これまでの慣例を変えるのはなかなか難しい面もありますよね。最初からスムーズにいきましたか?

 

氣谷さん:

確かに、関わった当初は「簡単ではないな」と私自身も実感していました。だからこそ、“どうやったら効率よく進められるだろう”と、メンバー皆で日々考えるようになりましたね。例えば、“この会議は議論することが多いからアイデアもたくさん出そうだな”という時には、先にチャットで議論を進めておき、会議では決めるだけという状態にしておく。そういった意識づけが徹底されるようになりました。

 

──取り組みながら、少しずつブラッシュアップされているのですね。

 

氣谷さん:

当初は私たち自身も、オンライン会議をどう進めればいいのかわからないところも多かったんです。なので、会議前と会議中、会議後のノウハウを資料にまとめ、共有するようにしました。さらに、会議ではメンバー全員が持ち回りで「ファシリテーター」を担当するルールにしました。会議中に話がズレてしまう人がいたら軌道修正をしたり、皆の意見をまとめるなど、時間配分を見ながらゴールに向けて会議を進めていきます。社員全員がファシリテーションのセミナーを受け、会議の質を高めるようにしています。

 

こうした取り組みは今年1月からスタートし、3月くらいから本格化したのですが、この6か月間で会議時間を25%削減できました。

2人のママ社員が発起人となり“インフルエンサー”社員と共に推進 

──「爆生」プロジェクトに熱意を持って関わる人がいなければ、ここまでの結果は残せなかったのではないかと思います。メンバーはどのようにして決まったのですか?

 

氣谷さん:

このプロジェクトの発足人は、爆生のプロジェクトリーダーを務める営業企画部主務の30代のママ社員です。この女性がさまざまな部門から“積極的にプロジェクトを進めてくれそうな人”“組織を変えていこうという思いのある人”“インフルエンサーになってくれそうな人”を選び、声をかけてメンバーが決まりました。現在、プロジェクトメンバーは13人いて、男女比は半々くらいですね。

 

 

──通常、働き方改革の取り組みは、人事などが主導するトップダウン形式がほとんどですが、やはりどこかで“やらされ感があったり、実際には現場が回らず、不満の声が上がることも少なくありません。

 

氣谷さん:

爆生プロジェクトには、“働き方は自分たちで変えていく”という思いがあります。トップダウンの改革ももちろん必要ですが、自分たちが課題だと感じることを自分たちの手で解決することで全員が真剣に取り組みますし、実際に仕事がやりやすくなって、私自身もたくさんのメリットを感じていますね。 

 

 

現場に問題意識があっても、なかなか全社的な解決が難しい場合もあります。パナソニックでは現場の声を丁寧に拾い、ボトムアップによって自主的な問題解決を狙うプロジェクトが有機的に機能しているようです。次回は“コミュニケーション”と“学び”に関する改革について、詳しく伺います。

 

取材・文/西尾英子