共働き時代に合った私らしい生き方・働き方を模索するCHANTO総研。
完全オーダーメイドのオリジナルウェディング事業「CRAZY WEDDING」を展開する株式会社CRAZY。2020年4月には、結婚式にかかる時間やお金を節約しつつ、記憶に残るお祝いの機会を提供するオンライン結婚式サービス「Congrats」をリリース。独自性が高い事業内容だけでなく、ユニークなサービスにも注目が集まっています。
社内においても、これまで実現してきた社内託児所制度や自分の要望に合わせて設計できる勤務形態などは、すべて利用する社員によって考案されたもの。社員が常にベストな働き方を模索し続けることで、少しずつ制度が変化しているといいます。そんな施策に対する柔軟な姿勢についてお聞きしました。
Profile 遠藤理恵さん
CRAZYの執行役員。現在は、CRAZY WEDDING、CRAZY CELEBRATION AGENCY事業責任者。組織作りにおいて特に女性のライフステージが変化しても、それぞれが身につけてきた能力を発揮し、価値を高め続けられる環境を整えるために日々奮闘している。創業当初から論理的観点だけではなく、自身の感性、感覚も大切にしながら経営に携わってきた。二児のママ。
Profile 武田亜希子さん
CRAZY WEDDINGのウエディングプロデューサー兼WEBディレクター。関わる人が 「自分の人生で良かった」と思える瞬間を増やしていきたいという思いを原動力に、結婚式から始まり、その後の人生にも細く、長く関わるライフプロデューサーを務める。母になった今、「結婚しても、子供が出来ても、ママが楽しければ家族も楽しい」という生き方で、日々挑戦中。2歳の息子のママ。
職場にいながら仕事と育児を両立できる環境を整備
——社内託児制度を設けていたそうですが、一般的なものとはちょっと違うそうですね。
遠藤さん:
オープンオフィスとは別にナニー(シッター)がいる育児用の部屋があるんですが、子どもたちもナニーもオフィスと部屋を行き来するのが当たり前でした。社員が真剣にミーティングをする横で誰かがオムツを替えていたり、子どもたちがケラケラと笑いながらお菓子を食べていたり。職場と子育ての場を切り分けず、職場で子育てしながら仕事をする感じです。
武田さん:
ナニーや親だけでなく、結婚していな社員も含め、みんなが子育てに関わってくれるんです。遊んでくれたり、叱ってくれたり、かわいがってくれたり。その環境がすごくいいなと思ったので、私は保活せずに生後4か月ですぐに社内の託児所を利用しました。
——子どもがいない方も子育てに協力的って素晴らしいです。みなさん子育てに理解があるのですね。
遠藤さん:
代表の森山の考えでもありますが、会社自体が、収益をあげることだけが大事なわけでなく、“人として生きていくこと”を大事にしているんです。「子どもを産み育てることは、人類としてすごく大きな仕事だ。勤務時間が短くなっても、家でそういう仕事をしているのだから、その分みんなで協力しよう」と、全社ミーティングでもよく話しています。その考えにみんな同感していたので、誰の子どももみんなで愛情を注いで育てる、という動きが自然に生まれるのだと思います。
——遠藤さんが託児制度を立ち上げたとのことですね。経緯を教えていただけますか?
遠藤さん:
私は母乳で育てたかったこともあり、子どもが1歳になるまで休職する予定でした。ところが息子が6か月のときに、会社から当時の経営メンバーから「理恵に一事業を任せたい。ただ、子供と1歳までは近くで育てたいということであれば、ナニーをつけるのはどうか?」と提案を受けました。「子どもと一緒に出社できれば、好きな仕事も続けられるし、いつでも授乳できる!」と思ったんです。保育士免許をもつ友人にナニーのことを相談したら引き受けてもらえることになり、社内で初めてワーママとして復職しました。
——託児制度を意図的につくったというよりは、個人的なきっかけから始まったのが興味深いです。
遠藤さん:
CRAZYでは創業時から大切にしている「Style for Earth」という企業理念をもとに、人がその人らしく生きるために必要なものを取り入れてきました。その結果として、気がついたら制度として形になっていることが多いんです。託児制度もまさにそれでした。
ただ、前例がないぶん、ベストな形を見つけるまではトライアンドエラーの繰り返しでした。最初は特に、私の働き方にナニーがとことん合わせてくれるので働きすぎてしまって。ナニーが出張に同行してくれ、子どもの寝かしつけもしてくれるので、お互い休みが取れなくなってしまいました。
そんななか、ワーママが増えてきたので体制を整え、制度化することにしたんです。子どもの人数に合わせてナニーを増やしたり、シフト制を導入したり。その後は月1回ナニーとワーママで集まり、子どもが安全で寂しい思いをさせない体制について意見交換を重ねました。
制度はつくって終わりではなく利用者の状況に合わせて見直すもの
——託児制度は今はいったん運用を停止しているそうですね。新型コロナウイルスがきっかけで終了したのでしょうか?
武田さん:
会社に託児があっても、住んでいる場所や通勤状況によっては連れてくることが難しいということもあり、コロナが問題になる直前の2020年12月でいったん終了しました。息子は2歳になるまでたくさんの大人にかわいがってもらい、人見知りしない子に育ちました。今度は同年齢の子どもと多く関わらせたいと思い、保育園に切り替えたんです。
遠藤さん:
利用者が武田だけになったとき、今後託児所をどうするかについて、妊娠中やプレママの社員とざっくばらんに話し合ったんです。すると、会社に預けたくても一緒に出勤するのは難しいという人がけっこういて。ナニーたちの結婚や出産なども重なり、それならいったん終了し、また必要になったタイミングでまた考えよう、ということになりました。
——託児制度の始まりも終わりも、状況に応じて柔軟に対応しているんですね。
遠藤さん:
もともと制度ありきで始まったのではなく、自分たちで制度をつくっていったのがよかったのかなと思います。人事や総務が決めたことに従うのではなく、利用する自分たちでその都度ベストな形を更新していく。その流れがあったので自然といったん終了という選択ができたのだと思います。
——託児制度が終了した後、武田さんはどういう働き方をされていますか?
武田さん:
息子が4月から保育園に入れることになったので、それまでの4か月間は在宅勤務に切り替えました。私はもともと復職が早かったので、息子と一緒にいる時間を持ちたくて。
——子どもを保育園に預けないで在宅勤務というのは、かなり大変そうですが…。
武田さん:
確かに(笑)。社内でもイレギュラーな勤務体系でしたが、上司の遠藤に相談したところ、OKをもらえました。
遠藤さん:
私も相談された時は「本当に大丈夫!?」と思いました(笑)。でも、子どもの近くで働きたいという気持ちはよくわかるので。仕事と子育ての両方を大事にできているときの幸福感に勝るものはないんですよね。武田は基本のスキルがあるので、イレギュラーな環境でも業務を完遂できると思い、彼女が望む働き方にトライしてみることにしました。
そもそもCRAZYには復職後の働き方のルールが特にないんです。なので、復職前にメンバーと話し、それぞれの希望をしっかり聞くようにしています。子どもとどのくらいの時間一緒にいたいか、フルタイムか時短か…など。その希望をかなえられるよう、上司が体制を整えていく感じですね。
——社員の声をすくいあげるために、密なコミュニケーションをしているんですね。武田さん、在宅勤務期間中はいかがでしたか?
武田さん:
息子の成長が著しい時期にずっと一緒にいられたことは、すごくよかったです。もちろん大変なこともありました。私の仕事のタイミングと、息子が遊びたいタイミングが重なったり、仕事で22時までに寝かしつけられなかったり…。全部完璧にやろうとすると苦しくなってしまうので、息子と一緒にご飯を食べ、お風呂に入れたらその日は息子にしっかり向き合うことができた、と思うことにしました。すごく気がラクになりましたね。
リモートだからこそ雑談でコミュニケーションを深める
——2020年の10月には両国のオフィスを手放し、今はリモートワーク中心に移行したとのことですね。リモートワークが定着するなか、何か問題点を感じていますか?
遠藤さん:
リモートワークは集中して打ち合わせができるので、業務の効率自体は上がりました。その分、雑談のような会話が減っているのは問題と感じています。
特に女性って話すのが好きですよね。話して共感してもらえたら嬉しいし、感情を出すことでスッキリする。オフィスにいれば、「嬉しいことがあったんだけど!」という具合に、他愛ないことを気軽に話すことができますが、リモートワーク中はそういう場がありません。この状況が積み重なると、違和感や改善したいことがあっても言い出せないということが起こりうると思います。
そこで、仕事以外のことも気軽に話せるよう、コロナ対策をしつつ集まる機会を定期的に設けることにしました。回数は少ないですが、ただ顔を合わせておしゃべりするだけでも「元気になりました!」という声が寄せられています。今後もこういった機会は大事にしていきたいですね。
これまでもこうしたコミュニケーションが社員の要望をあぶり出し、型にとらわれない柔軟な施策を生んできました。リモートワークでも、人間らしい生き方や働き方を実現するためには雑談が必要だと改めて感じています。
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制度は一度つくったら終わりではなく、利用する側の状況に合わせて更新すればいい。見落としがちなことに改めて気づかされました。次回はCRAZYの“自由度の高い働き方”の原点となる取り組みについて、詳しく伺います。
取材・文/小松﨑裕夏