会社が変わらないなら、自分が変わる
——岩橋さんご自身も、第二子出産後に退職・起業・法人化に踏み切っています。大企業を辞めて起業した動機は何でしたか。
岩橋さん:
当時勤めていた会社の部署では、私がワーママ第1号だったんです。ところが、復職後に異動した人事部では、上層部や男性管理職の本音が徐々に透けて見えてきたんですね。
派遣社員の女性が妊娠報告すると、「おめでとう」と言いつつも次の契約は更新しないようにと暗に言われ、さらに「次の採用では妊娠の予定がなさそうな人を」と指示される。
もちろん、彼らも個人的な意地悪でそう言っているわけではないことは理解しています。チームで円滑に仕事を進めていくための合理的な判断だったのでしょう。
育休後の復職率の数字は上がっても、本当の意味での女性活躍にはほど遠いのが実情でした。
けれども、人事で4年働いて企業の本音と建前に触れたことが、結果的に私の場合は起業へのモチベーションにも繋がりました。
このまま会社が変わるのを待っていたらおばあちゃんになってしまう。会社が変わらないなら、自分が変わるしかありませんから。
次の10年、課題はジェンダーギャップの解消
——では、2020年代のワーママにはどんな課題が待ち受けていると思われますか。
岩橋さん:
2010年代は、大多数の女性が産後も働き続けられる社会へと変化した10年でした。ですから、本当の意味でのジェンダーギャップ解消へと向かうのが次の10年、2020年代の課題だと私は思っています。
「子育てしながら働き続けられるだけでも十分」「時短だから評価が据え置きされても仕方がない」という消極的な考え方から脱して、自らが責任を持って「変える側」に回っていく。そういう女性がもっと増えていくことが求められるのではないでしょうか。
この10年でワーママ全体の母数が増えたことを受けて、今後は起業する女性、管理職になる女性、リーダーになる女性が増えていく。それが組織の変革にも繋がっていくはずです。
一方で、ワーママであるがゆえにチャンスを貰えなかったり、経験を積ませてもらえなかったりしたまま、勤続年数を重ねた女性たちもいます。
これは今のアラフォー世代に多いと思うのですが、本人の努力不足ではなく、組織の構造上、経験を積めないまま40代になってしまった、というケースが多く見られます。
——時短勤務で復帰したものの、育児が落ち着いた後も第一線には戻してもらえない、という例ですね。
岩橋さん:
ただ、40歳前後で本人に意欲があれば、まだまだリカバリーは可能です。そこを踏まえて、企業側にはぜひ彼女たちにここからでもキャリアを再構築できるようなチャンスと教育の機会を与えてもらえたら。
このコロナ禍でオンラインでの会合や商談が普通になりましたよね。これは子育て世代にとっては、実はすごくいい追い風でもある。企業側も、これまでの常識や評価制度をどんどん見直していくべきタイミングが来ていると思います。
——これから子育てをする可能性のある若い女性たちが、今から備えておけることはありますか。
岩橋さん:
結婚・出産・育児といったライフイベントを、始まる前から必要以上に恐れなくていい、ということは伝えたいですね。
たとえば、小1の壁もそう。「壁」だと思ってしまうと、そういうネガティブな情報しか入ってこなくなるんですね。でも小学校入学後にどういうことが起きうるかを観察・予測して手を打っておけば、なんとかなることってたくさんありますから。
今回、いろんな方々の「#私のワーママ年表」ツイートを読んで感じたのですが、同じような出来事に直面していても、ポジティブに捉える人はどんなときもポジティブに、ネガティブに捉える人はどんなときもネガティブに捉える傾向があるんですね。
そういう意味では、出来事をどう受け止めるかは本人次第な部分も大きいのではないでしょうか。