共働き時代に合った私らしい生き方・働き方を模索するCHANTO総研。

 

社内に産休や育休を対象とする社員がいないと、なかなか制度を確立させていくことは難しいこともあります。出産も育児も悪いことではないのに、いつしか女性自身も何だか悪いな……と遠慮してしまうこともあるかもしれませんね。

 

そんな風潮を一蹴したというワークスアプリケーションズ社。”理想の制度”を目指した今日までの道のりについて伺いました。

ワークスアプリケーションズの「ワークスミルククラブ」

制度名称:ワークスミルククラブ 導入開始日::2004年 対象者:勤続2年以上の正社員 今までに利用した人数:年間20~30名程度が利用

 

株式会社ワークスアプリケーションズ

CEO Office 広報 Department Manager

池内さやか さん

社員が“働くことを楽しめる”理想の制度”を目指した「ワークスミルククラブ」

──2004年からスタートした「ワークスミルククラブ」の制度とはどのような制度ですか?


池内さん:

ワークスミルククラブには様々な制度が含まれています。報酬(理論年俸)15%の職場復帰特別ボーナスの支給や、妊娠判明時から取得可能な産前産後休業 、子どもが3歳到達後の最初4月末まで延長可能な育児休業 、子どもが小学校を卒業するまで選択できる短時間勤務制 、子どもの病気やケガの看護が必要な場合の特別休暇などです。


──かなり広範囲のサポートが受けられるんですね!制度を導入した理由や目的を教えてください。


池内さん:

1985 年に「男女雇用機会均等法」、1991 年には「育児休業法」が 制定されるなど、女性が働くことに関して法律は整備されてきていたものの、当時まだ世論は「女性に育児を頼り、女性は家庭へ」という状況で、一般的に労働環境も整っていませんでしたよね。

 

そのため、有志で社員が集まって「いかに子どもと付き合い・向き合える制度にするか」という点を重要視し、 社員が“働くことを楽しめる”理想の制度を目指して、内容や運用方法を設計しました。



却下された苦労を経て、より良い制度へ

──制度を導入において苦労した点はありますか?

 

池内さん:

実を言うと、「ワークスミルククラブ」の制度案は一度却下されています…。当初は少数派である産育休を取得する社員に手厚い制度を作ることに、有志で制度企画に参加した女性社員たち自身が遠慮してしまっていたところがあったのです。

 

その後経営陣からの「産育休を取得した社員が100%復帰できる制度を作ろう」という強い想いを受けて、半年以上の議論を重ねて、またさまざまな会社の育児支援体制を参考にし、本当に社員に求められる支援制度を創り上げました。



──女性社員たち自身が遠慮してしまったんですか…現在の手厚いサポート制度からは想像ができませんね。

 

池内さん:

そうなんです。本当に良い制度は何かということを考える時間ができたからこそこそ「ワークスミルククラブ」は早期の職場復帰支援、長期の休業支援といった各々のライフスタイルやビジョンを尊重する選択肢を用意することができたと思っています。

 

一度で誰もが満足する完璧な制度を作るということは、ほぼ不可能だと思いますし。また、社員側から提案した制度案がスムーズに通らないということもあるでしょう。それでも諦めずに考え続けることが重要です。

制度設立から出産を理由に退職した人はゼロ!女性管理職率も2倍!

──社員の方の反応はいかがでしたか?

 

池内さん:

「保活」や「小1の壁」といった言葉がある通り、育児と仕事の両立は困難な場面が続きますよね。当社の取り組みは、労働基準法や育児・介護休業法で義務付けられている期間から大きく拡大し設定されています。

 

また本制度は対象者の多くが活用しており、その中には管理職の方も含まれます。 近年では男性の育児休暇取得も増えており、育児支援への理解が浸透しています。

 

──制度導入において、会社に起こったメリットはありますか?


池内さん:

制度設立以降、出産だけを理由に退職した社員はいません。また安心して長期間で働けるということで、採用においても優秀な人材が獲得できるなど良い影響に繋がっています。

 

一般的に情報通信業の女性管理職率が約8%ですが、弊社は約2倍の15.7%です。また情報通信業の女性の平均勤続年数は男性と比較し、9年ほど短いですが、弊社の男女差は1.5年と女性も男性と同様に長期でキャリアを築くことができています。その結果「WOMAN’S VALUE AWARD* 2019」”ICT部門 優秀賞” も受賞できました。

*WOMAN’S VALUE AWARDとは…女子学生による真の意味での「女性活躍」に取り組んでいる企業を讃える賞

──優秀な人材の確保など、結果もついてきているんですね。今後「働き方改革」にどう向き合っていく予定ですか?

池内さん:

現在はテレワークについて考えているところです。当社のテレワークはミルククラブを利用しているママ社員の中で希望者を対象に導入しておりましたが、2020年2月より全社員を対象といたし ました。合わせてオフィス環境やワークフロー見直し、完全テレワークでアルバイトの雇用を行うな ど、常に環境変化に寄り添い、多様な働き方を支援していきます。

 

また、ワークスミルククラブは今後海外事業所 ごとに各国の法律と照らし合わせ、最適な制度となるよう導入を検討しています。



その他にも、当社は女性のがんの罹患率が高い乳がんに対して検診費用を全額会社負担にする、研修や資格といった自己学習を支援する制度など多数の支援制度を設けています。当社はお客様へご提供する製品・サービスの原動力は従業員であると考えているので、高い問題解決能力を有した人材が長く働き続けられるような環境を作り続けていきたいです。

… 女性が少ないから制度は不要ではなく、制度を整えることで女性が増え、のちに女性管理職率も2倍に増えたワークスアプリケーションズ社。これから社会に入る女子学生が讃えた企業に選ばれたことこそ女性推進企業の証です。まさに働き方改革のロールモデルといえそうです。

 

【会社概要】

社名: 株式会社ワークスアプリケーションズ

従業員数: 2,353 名(連結) ※2020年9月末時点

設立年月日: 1996年7月

業種: 情報通信業

事業内容: 大手企業向けERPパッケージソフト「HUE」「ArielAirOne」の開発・販売・サポート

 

取材・文/ひなたきこ