共働き時代に合った私らしい生き方・働き方を模索するCHANTO総研。
「人財を徹底的に大切にする経営」で注目を集める日本レーザーは、多様なライフスタイルに応じた柔軟な雇用体制で、管理職の1/3を女性が構成しています。性別、国籍、年齢、学歴などに関係ないダイバーシティ経営をどのように実現したのか、近藤会長にお話を伺いました。
1000人リストラの修羅場経験から、人を大切にする経営にシフト
——「平成24年度ダイバーシティ経営企業100選」のほか、働きやすさに関する数々の受賞歴を誇り、人を大事にする経営が高く評価されています。「誰もリストラしない」、生涯雇用を実現されているそうですね。
近藤会長:
はい。成績にかかわらず、雇用は守ります。会社組織には、上位2割、中位6割、下位2割の法則があり、私は成績下位の社員こそ大事にするべきだと思っているんです。
突然の病気や家族の介護で仕事に打ち込めなくなるリスクは誰にでもありますから、成績が落ちても雇用が守られるとわかっていれば、会社に尽くしてくれるようになりますよ。
——どんな人材も解雇しない。なぜそのような考えをお持ちになったのでしょうか。
近藤会長:
私が大学卒業後に就職した日本電子が経営危機に陥ったとき、全体の1/3に当たる1000人の社員を削減することになりました。当時30歳で労働組合委員長をしていた私は、何百人もの組合員と退職面接をする立場。「どうしてオレが会社の犠牲にならなきゃいけないのか」と問い詰められることもあり、つらい経験でした。
また、米国法人に出向し、破綻処理や人員削減などの取り組みにも関わってきた経験から、企業は、お金だけではなく、人を見た経営を融合して、良い会社を作る努力をすべきだと考えるようになりました。
——米国から帰国後、債務超過で倒産寸前だった日本レーザーの再建を命じられ社長に就任されたそうですね。
近藤会長:
はい。厳しい環境でしたが、社員には、リストラはしないから私の方針に従ってほしいと宣言した上で、仕事の仕組みと制度を全面的に見直しました。
給料やボーナスを下げ、経費も削り、展示会にも出展しないなど、当初は社員も苦しかったと思います。不満を持つ者もいましたし、商権を持って退社した人もいました。しかし、結果的に1年で2700万円ほどの黒字決算を実現しました。
——その後27年間黒字経営を続けられてきたのは、どのような変革があったのでしょうか?
近藤会長:
当時の私は社長と親会社の取締役を兼任していたので、「どうせ親会社から来た当座しのぎの社長だ」と、社員に思われていました。それが社員の不信につながっていた。
そこで社長就任の翌年、日本電子の取締役を退任し、日本レーザー社長として会社の再建に全力を尽くそうと考えたのです。そこから社員の意識もガラッと変わりましたね。
また2007年に、親会社から、経営者と従業員が参加する会社買収MEBO(Management Employee Buyout)で独立しました。社員全員が株主となったので当事者意識が高まり、辞職率もほぼ0、黒字経営を続けるモチベーションになっていると思います。
——その後、「人は絶対に切らない」「子育て女性も再雇用シニアも活躍できる仕組み」を意識した組織改革に乗り出されたのですね。
近藤会長:
まずは、人を大切にすることです。社員の成長がなかったら会社は成長しませんから。
出産・育児に関わらず、誰もがガンや病気、親の介護といったライフスタイルの変化があります。だから弊社では、週3日はリモートワークにしたり、通院のために週3日短時間勤務をしたり、社員が希望する働き方で雇用を守っています。
社員が会社に大切にされているという実感と、雇用が守られる安心感によって、社員のモチベーションが上がるんですよね。