社員が強くならないと雇用は維持できない
——年功序列ではなく、実力主義の給与システムを取り入れているのはなぜでしょうか
近藤会長:
TOEIC500点や、実力主義の給与査定システムは一見厳しく見えますが、会社が成長するためには、そこで働く人の成長が不可欠。企業が潰れて雇用が維持できなくなったら元も子もないですからね。
——それではパート社員にも成長のチャンスはあるのでしょうか。パートから正社員になった方はいらっしゃいますか?
近藤会長:
何人もいますよ。ある社員の産休代替として派遣で来た女性は、契約満了のとき直接雇用を志願してきました。彼女は派遣社員としていくつもの企業を見てきて、弊社をとても居心地がいいと感じてくれたんですね。
「年収は派遣の1/4になるよ、本当にいいの?」と聞いたら、 「はい。この会社は事業が伸びていて、いずれフルタイムで働けるはずだから」と。
彼女の上司もいい人でね。「正社員になるなら英語もできたほうがいいよ」と「今週の気づきメール」を英語で書かせて毎週添削してあげたんですよ。
当時彼女は43歳だったし英語が苦手で四苦八苦していたけれど、一生懸命やって2年ほど毎回TOEICを受け続けたら、昨年末に500点を超えましたよ。今年の1月1日付けで正社員採用です。
頑張りをきちんと評価する人事制度があるから、社員も信じて努力してくれるのかな、と思います。
——最後に「ママになっても働きやすい職場」を実現するために、企業はどう変わっていくべきか教えてください。
近藤会長:
人口減少が続き働き手が不足する中、今後企業は女性雇用におけるマインドを変えざるをえないと思います。
それは、働き手不足というだけではなく、多様化する社会を生き抜く秘訣でもあります。
「不易流行」という言葉があるように、制度とか仕組みの流行の部分は、状況によってどんどん変えればいい。
不易な部分というのは、人を大切にするとか、ライフスタイルや価値観にあった楽しい人生を送るとか、この会社で働いてよかったね、という社員の幸福感です。これがないと会社は続かないと思いますね。
・・・
「ママになっても働く」は、もはや女性だけの課題ではありません。近藤会長のように、意識と制度の両面で、リーダーが真剣に従業員の働きやすさを追求することが、結果的にママの課題を解決することになりそうです。
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PROFILE 近藤宣之さん
取材・文/早川奈緒子