1986年の男女雇用機会均等法の施行から34年。第一子の妊娠・出産で退職する女性社員の割合は、残念ながら当時と現在であまり変わっていません。時短勤務による周囲への罪悪感や、他の従業員へのしわ寄せ、社会や企業の体制面などさまざまな要因により、改善しないのが現状です。

 

そんな中、女性社員全員が育児休暇後に復帰し、産後離職率ゼロ、女性管理職3割を実現している企業があります。

 

10月のオピニオン特集「ママになっても働きやすい職場」第5回は、株式会社日本レーザー代表取締役会長の近藤宣之さんに、誰もが働きやすい職場の秘訣を伺いました。

 

職場に浸透した利他の精神が産後離職率ゼロを実現する

産休中に赤ちゃんを連れて遊びに来る女性社員も

 

——産後離職率がゼロだそうですが、出産しても働き続けるための仕組みや制度の工夫はありますか?

 

近藤会長:

女性だけでなく全ての社員に1つの業務を2人で担当する「ダブルアサインメント」の働き方をしてもらっています。

 

例えば、発注業務担当の女性2名は、週ごとに担当発注地域を入れ替えて兼務しています。「今週は私がヨーロッパ発注、あなたがアメリカ発注。来週は逆にしよう」というふうにね。互いの仕事を把握しているので、どちらかが産休を取っても、産休中に来る派遣社員の教育ができますよね。

 

会社にとっては、人がやめてしまうことが一番のリスクなので、リスクマネジメントでもある。そして社員にとっては、介護や出産など、ライフスタイルの変化に応じてカバーしあえる仕組みなんですよ。

 

——産後離職率が下がらない原因のひとつに、職場と上手くコミュニケーションが取れなかったから、というものがあります。妊娠・出産による体調の変化や、プライベートな事情を会社へ伝えることをためらう人もいます。御社ではどうでしょうか?

 

近藤会長:

弊社では「気づきメール」というのがあって、公私問わず、嬉しかったこと、悲しかったこと、トラブルなどの気づきを毎週上司に報告し、上司が返信しています。

 

介護の問題、子どものいじめの問題、パートナーのことなどのプライベートを互いに把握していますから、妊娠を報告しにくいとか、子どもの熱で休むためにうそをつくとか、そういうことはありませんよ。

 

子どもが熱が出たら、素直に休むと言えますし、みんなただ心配しますよ。

 

——普段から、社員のプライベートや人となりを把握することで、個人的な事情に配慮できるということですね。とてもわかりやすい考えですが、仕事とプライベートは分けたいという価値観の人はいないのでしょうか?

 

近藤会長:

私は、「会社は労働を提供した対価として給与をもらうだけの場」という考えでは、つまらないし、お互いの成長はそこまでかな、と思っています。

 

プライベートな事情もオープンにできる職場の方が、お互いの事情に配慮しやすいし、人間としての成長につながると思います。

 

——成長という言葉が出ましたが、「社員の成長」が企業理念の大きな柱だそうですね。

 

近藤会長:

はい、企業理念は「CREDO」として、社員の共通認識にしています。

 

そもそもCREDOとはラテン語で「信条」を意味する言葉です。ビジネスの場では、経営理念や行動規範のことを指し、わが社でも社員教育の一環として活用しています。

 

毎日の会議の初めと終わりに読み上げるほか、年に2回行う総合評価制度はCREDOに基づいたものになっています。

 

——どのような内容ですか?

一般社員の評価表。D.17-20には、CREDOに基づいた評価項目が。

 

近藤会長:

会社の経営理念を体現する人材の条件として、「笑顔、感謝、成長、利他、必然」の5項目を大事にしています。

 

この世に生まれ成長できる機会に感謝し、利他の気持ちで働く、そして周りで起こることは人のせいにせず、必然として受け止める。これらを会社と社員本人が能力として総合評価します。

 

——ママ社員の仕事をカバーする側の負担感・不公平感が、ママの働きづらさにつながっているという見方もあります。CREDOによれば、このカバーする側のいわゆる「利他」の行動も評価されるということでしょうか?

 

近藤会長:

はい、されます。誰かが産休に入り欠員が出たときは派遣社員に入ってもらいますが、その派遣社員の教育をする人は「利他」の評価が上がり、報酬につながります。精神力だけではできないですよね。ある程度制度的な裏づけが必要です。

 

こうした利他の気持ちが浸透する仕組みがあるからこそ、ママ社員に限らず、困っている人はみんなでカバーしあえるのだと思います。