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医療衛生用品や健康食品などの卸販売、さらに「ピップエレキバン」や「スリムウォーク」など自社開発商品の製造・販売する会社としても知られるピップ株式会社。医薬品などの業界では最前線で様々な挑戦を広げるピップは、2018年、ウエルネス経営宣言をしました。

 

これは、お客様の健康を促進するメーカーとして、社員の健康を増進するための取り組みです。その1つである「喫煙0推進運動」について、広報宣伝課の五十嵐さんにお話を伺いました。

2018年にウエルネス経営宣言。健康メーカーとして果たすべき役割を明確に

制度名称:  「喫煙0推進運動」 導入開始日: 2019年11月より実施中 対象者:全従業員 今までに利用した人数: 全従業員

 

 

ピップ株式会社 広報宣伝課 五十嵐未沙さん

地方テレビ局で企業取材や広告営業を担当後、2019年にピップ株式会社の親会社であるフジモトHDに初の企業PR担当として入社。2019年11月、組織改革によりピップ株式会社へ出向。新入社員の指導員として後輩育成に従事している。広報宣伝課では現在、ピップグループ企業広報と、ピップエレキバン・ピップマグネループといった血行改善ブランドの商品広報を担当。商品情報の発信に加え、企業としての取り組みも発信していくことで信頼感の醸成に努めている。

 

 

——健康にまつわる商品を数多く世に送り出しているピップでは、2019年から本格的に喫煙をゼロにする取り組みを始められたそうですね。とても大きなチャレンジだと思うのですが、どのようにして始まったのでしょうか?

 

五十嵐さん(ピップ):

当社は2018年にウエルネス経営宣言をしました。ウエルネス経営とは、従業員の身体と心の健康を軸にした経営のことを言います。

 

具体的には、ピップグループでは、「THE WELLNESS COMPANY」(人々の身心の健康に貢献する企業)の実現を目指すことを掲げています。それを実現するために、次のような経営課題に取り組むことを決めました。

 

1.従業員の健康の増進に努めます。

2.健康に貢献する商品の開発・普及に尽力します。

3.ウエルネス経営に、経営陣がコミットします。

4.ウエルネス経営の最高責任者は、社長とします。

5.ピップグループを挙げてウエルネス経営に取り組みます。

 

このウエルネス経営宣言をもとに、社員とその家族が身心ともに健康であるように、様々な取り組みを始めました。その1つが「喫煙0推進運動」なんです。

 

——全社をあげてウエルネス経営を実現するための制度なのですね。では、なぜ「喫煙0推進運動」なのでしょうか。禁煙場所と喫煙場所を分けている企業も多いように感じます。

 

五十嵐さん(ピップ):

当社でも、それまで社内に喫煙所があり、社外の方が来客される際にもご利用いただいていました。ただ、健康を守るメーカーとして、その存在に違和感を持っていたのも事実でした。

 

たとえば、学生向けの会社説明会。「健康経営」を訴えている一方で喫煙所がある光景が矛盾しているようで、採用担当も頭を悩ませていました。喫煙所は空気洗浄しているとはいえ、煙草を吸ってデスクに戻ると匂いが気になるという声や、喫煙所の近くで商談を行うのはお客様に失礼だとの声も上がっていました。

 

当社の商品は、「人々の身心の健康に貢献する」という想いのもと作られたものばかりです。様々なお困りごとにお応えすべく開発販売しているにも関わらず、違和感を持ったままで喫煙所を置き続けることは健康経営に反するという考えに至りました。その後、201910月から段階的に改革を進めています。

 

卒煙のサポートをしながら、禁煙の環境を実現

——健康の困りごとに応えるメーカーとして、納得のいく環境を実現しようとされているのですね。どのようにして段階的に進められているのでしょうか。

 

五十嵐さん(ピップ):

はい。まず、201910月に卒煙サポート制度を導入しました。これは禁煙外来受診料の一部を補助するものです。次に、20204月までに社屋内喫煙所を撤去し、20205月より敷地内を全面禁煙としました。202011月以降は、就業時間中の喫煙を禁止とする予定です。

 

さらに、新卒・中途での入社社員については、喫煙の有無を確認して、喫煙者は入社までに禁煙を徹底してもらうように指導することになっています。

 

——禁煙外来受診料の補助など社員の視点でサポートしながら、禁煙のための環境づくりを徹底されているのですね。その中で、喫煙していた社員はどのように変化しているのでしょうか?

 

五十嵐さん(ピップ):

当社では、喫煙は健康リスクが高いこと、受動喫煙で家族や同僚にも二次被害の恐れがあることを全社的に周知しています。そのため、喫煙をしないような風土が醸成されています。統計を取っているわけではないのですが、この風土自体が禁煙する後押しになり、禁煙に成功している社員も多くいるようです。

 

非喫煙者からは「社内の空気が良くなって快適」という声が上がっています。そのほか「お客様を気持ち良くお通しできるようになった」などの感想を寄せられています。

 

——社員の禁煙に確実につながっているのですね。お客様を安心して迎えられる環境が実現できているのも社内の健康に対する意識を高めますね。では、今後についてはどう進められていく予定でしょうか。コロナ禍の中で何か課題だと感じていることはありますか?

 

五十嵐さん(ピップ):

今後は、事業所内だけでなく、就業時間中の喫煙を一切禁止することを目指しています。その中で当社では、11月から選択式の在宅勤務制度も導入が決まっており、在宅での喫煙の状況をどこまで把握できるのかが今の課題です。

 

ただ単に「禁止する」だけではなく、喫煙のリスクや受動喫煙被害の実態への理解が社員の間に広がることで、自然と禁煙が成功している状態をキープできたらと考えています。

 

 

ウエルネス経営宣言をすることで社員の健康を守るための施策を多角的に実践しているピップ。「喫煙0推進運動」については、事業所だけでなく、就業時間中の喫煙をゼロにすることは簡単な取り組みではないかもしれません。それでも実現するため、地道に進めているピップの姿勢は、今後も多くの人の健康を守る商品を強くしなやかに生み出していくのだろうと感じました。

 

【会社概要】

社名:ピップ株式会社

従業員数:696名

創業年:1908年

業種:医薬品製造・販売事業

事業内容:医療衛生用品、健康食品、ベビー用品、ヘルスケア用品、日用雑貨、医薬品、医薬部外品、医療機器などの卸販売。自社開発商品の製造・販売

 

取材・文/高梨真紀