共働き時代に合った私らしい生き方・働き方を模索するCHANTO総研。
印刷・集客支援のシェアリングプラットフォーム「ラクスル 」をはじめ物流、広告事業なども手がけるラクスル。伝統的な産業のデジタル化に貢献しています。そんなラクスルの社内では、事業を推進する社員へのバックアップが充実化されています。
それは、社員のスキルアップに対する支援制度や言語学習サポート制度。携わっている業務とは直接的に関係がなくても、一人ひとりの「学びたい」という意欲を後押しする制度です。労務として働きやすい職場づくりに携わる、ラクスル株式会社 人事部の横須賀さんにお話を伺いました。
業務に直接関係ないチャレンジでも、社員のスキルアップをサポートする支援制度
制度名称:スキルアップに関わる費用の支援 導入開始日: 2014年以前から実施中 対象者: 正社員、契約社員
制度名称:技術書書籍購入支援 導入開始日: 2016年3月から実施中 対象者:エンジニア全員
制度名称:言語学習の支援 導入開始日: 2019年2月から実施中 対象者: 全社員
ラクスル株式会社 人事部 横須賀 心さん
——ラクスルには、社員のスキルアップのため様々な支援制度があると伺いました。どんな制度があるのか教えてください。
横須賀さん(ラクスル):
スキルアップを推奨しても、個人で行えることには限界があります。例えば、自費では負担が大きすぎる書籍の購入のほか、セミナーやスクールなどを断念する社員も多かったようです。会社として経費をかけて学ぶ機会を提供することで、会社にとっても個人にとっても大きな変化に結びつけたいと考えました。そこで、特に力を入れたい技術者向けの支援、全社員に向けたスキルアップの支援、言語学習を行っています。
まず、エンジニア全員を対象に、「技術書書籍購入支援」を行っています。エンジニア技術のスキルアップになる書籍費用を、上限なしで会社が負担しています。また、全社員向けに「スキルアップに関わる費用の支援」をしています。こちらの上限は年間一人1万5000円です。
いずれの場合も、業務内容に直接関係あるなしに関わらず、個人のスキルアップにつながる書籍であれば補助の対象としています。また、購入後はその人が保有して学び続けることも可能です。会社の経費を使えることが後押しとなり、購入に踏み切れた例も多いようです。
——直接業務に関係がないことでも支援してくれる、技術書においては上限もなしとは驚きです。この制度が作られた背景を教えてください。
横須賀さん(ラクスル):
「技術書書籍購入支援」はエンジニアの効率性を高めるために導入しました。エンジニアは技術知識を常にアップデートすることに高い関心を持っています。課題設定、制度設計、導入までをエンジニア主体で行いました。
こちらの支援対象は技術書に限定していますが、全社員向けの「スキルアップに関わる費用の支援」では、そのような縛りはありません。業務に直接的な関係がなくても、個人のスキルアップにつながる場合は年間1万5000円まで会社が負担しています。社員の積極的なスキルアップを応援したくて、支援制度を導入しました。一人ひとりが積極的にスキル向上に挑戦していくことは、それぞれ興味や業務の幅の広がりにつながると考えています。
——学びたい人にとっては非常にありがたい制度ですね。導入後、どのような効果を感じていますか?
横須賀さん(ラクスル):
「技術書書籍購入支援」は、個々のスキル向上に、また採用面でも意欲の高い人材の獲得に役立っていると考えています。全社員向けの「スキルアップに関わる費用の支援」も、結果として、業務の生産性を高め、会社に還元されていると感じています。
——意欲の高い人材が獲得できるのであれば、会社としてもお金をかける甲斐がありますよね。制度を利用した社員の反応はいかがですか?
横須賀さん(ラクスル):
「スキルアップに役立っている」、「今の業務以外の分野にも利用できるのはスキルの幅が広がってありがたい」などの感想が出ています。
——会社が応援してくれているからこそ、安心して挑戦できるのですね。制度における課題はありますか?
横須賀さん(ラクスル):
もっと気軽に制度を利用してほしいと考えています。「興味があるけれど、業務に関係ないことで制度を利用していいのか?」と相談を受けることもあります。私は「学んでみたいと思う気持ちが大切なのでぜひ利用してください!」と伝えています。
個々のスキル向上は、結果として生産性やモチベーション向上につながり、会社にも還元されると思っています。社員を最大限支援できるよう、今後も応えていきたいです。
英語を学ぶだけじゃない。英語を話す機会までも用意してくれる「言語サポートプログラム」
——スキルアップをうながす施策として「言語学習の支援」も行われているそうですね。詳しく教えてください。
横須賀さん(ラクスル):
企業の急激な成長に伴い、様々な国籍のメンバーが在籍することになりました。円滑なコミュニケーションのために、言語サポートプログラムを開始しました。
社員は、社内の英語講師による週1回の英語のグループレッスン・マンツーマンレッスンを無料で受講できることができます。日本語を学びたい外国人の社員は、外部の日本語学校のコースを無料受講することもできます。
——英語と日本語、双方の学習サポートがあることで、相互理解が深まりますね。
横須賀さん(ラクスル):
他にも、定期的に英語で会話を行うダイバーシティイベントを開催しています。楽しく、仲間と知り合い、英語の練習をすることを目的としています。参加費は無料です。
——英語を学習するだけではなく、英語を話す機会も用意されているのですか。これはうれしいですね。
横須賀さん(ラクスル):
はい。「気軽に英語を話せる機会があるのはありがたい」と、社員にも喜んでもらえています。「グローバル化を推進している会社だ」という声もあり、人事部の思いが伝わっていて私もうれしいです。
——制度の導入後は、どのような変化がありましたか。
横須賀さん(ラクスル):
社内で英語での会話が増えました。日本語がわからない社員にも正しく情報が伝わるように、英語で発信される社内報も出たり、社内イベントで英語の同時通訳をつけたりもしています。
少しずつではありますが、英語を基準に、全員が同じ情報を持ったコミュニケーションが取れるといった環境に一歩踏み出せていると感じています。
——様々な学びの機会を用意されていますが、今後の課題はありますか。
横須賀さん(ラクスル):
依然として言語の壁は感じています。現在も、外国人社員・海外拠点の社員、日本にいる社員が連携しながらその壁の払拭に日々取り組んでいますが、まだまだ、コミュニケーション不足な点も多いのが現状です。
まずできることから取り組んでおり、社内に発信するすべてのことを、英語を併記しながら適切に伝えていくことを地道に行っています。社内に英語が深く浸透し、完璧なコミュニケーションを取れる状態は、まだまだ道半ばだと感じていますので、引き続き会社としてもサポートを行っていきたいです。
言語の壁を完全になくすのは難しいとしても、最低限、全社員が同じ情報を持ち、正しい意思疎通ができる。そして、社内のすべてのメンバーがきちんとコミュニケーションを取れ、英語を使うことが当たり前という環境を目指していきたいです。
…
学ぶ機会だけでなく、実践する機会までも会社が用意するというラクスルの試みは、福利厚生の一環を超えて、社員一人ひとりの可能性も広く開拓する大きなチャレンジだと感じました。今後、言語の壁が取り除かれたラスクルが展開するプラットフォームは、さらに各業界の常識を塗り替えるサービスを数多く生み出していくに違いありません。
【会社概要】
社名:ラクスル株式会社
従業員数:313名(2020年7月末時点)
設立年月日:2009年9月1日
業種:インターネットサービス事業
事業内容:印刷・集客支援のシェアリングプラットフォーム「ラクスル」、物流のシェアリングプラットフォーム「ハコベル」、広告のプラットフォーム「ノバセル」の運営
取材・文/川口香織(mugichocolate株式会社)