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今回は、毎年1か月の長期休暇を取れるアレックスソリューションズの「フリーバカンス休暇」について代表取締役である大野さんに教えてもらいます。

アレックスソリューションズの「フリーバカンス制度」

制度名称:フリーバカンス制度 導入開始日: 2008年 対象者:全社員 今までに利用した人数:50名(社員180名中)

アレックスソリューションズ 

代表取締役 大野雅宏さん

1975年東京都生まれ。大学在学中にエジプト・アレクサンドリアに語学留学。帰国後、学習塾英語講師を経た後、システムベンチャー企業にて社員教育部門に従事。2007年3月に退社、同年4月に株式会社アレックスソリューションズを設立。経営理念は「留学生を活かす」。せっかく身に付けた語学力が活かせないと嘆く留学生たちに、ITエンジニアという道を示す。

1ヶ月の長期休暇を1年勤務するごとに利用できる!「フリーバカンス制度」とは

──長期休暇が取れるという「フリーバカンス制度」とは、一体どのような制度なのでしょうか?

 

⼤野さん(アレックスソリューションズ):

「フリーバカンス制度」は2008年から当社に導入された制度です。ひとつのプロジェクトを終えて次のプロジェクトに参画するまでのあいだに1か月間の長期休暇をとることができます。当社独自の制度で、他の会社にはないかもしれません。1年以上勤務した社員を対象としています。

 

──とういうことは、2年目の若手社員も1か月の休みを取れるのですか⁉︎ それは確かに他社ではなかなか聞かないですね…。

 

⼤野さん(アレックスソリューションズ):

そうなんですよ(笑)。一度「フリーバカンス制度」を利用したら、次に利用できるのは1年後です。 1年勤務するごとに1か⽉間の⻑期休暇を法定の年次有給休暇に上乗せして付与する形ですね。

 

──毎年長期の休暇が取れるのは嬉しいですね。なぜ「フリーバカンス制度」を導入しようと思われたのでしょうか?

 

⼤野さん(アレックスソリューションズ):

当社には留学⽣だけでなく、ボランティア、ワーキングホリデー経験者、バックパッカー*など、さまざまな海外経験者が在籍しています。私もそうですが、海外での生活を経験した人のなかには1年も仕事をしていると、フッと旅に出たい衝動に駆られることがあるんですね(笑)。

 

しかし会社員として仕事をしていると、長期休暇はなかなか取りづらくなってしまいます。社員が「旅に出たいから会社辞めます」ということにならないために、この「旅の⾍」をなんとか収める法はないか?ということで「フリーバカンス制度」を考えつきました。そしていっそ会社の福利厚生にしてしまおう、と。

*低予算で国外を長期個人旅行する旅行者のこと

──なるほど!「フリーバカンス制度」のアイデアはゼロから考えられたのですか?

 

⼤野さん(アレックスソリューションズ):

参考にした制度があります。ヒントはヨーロッパの「サバティカル」という制度です。ヨーロッパを中心に、⻑期勤務者に対し1か⽉〜1年の⻑期休暇を付与するという制度があり、これを採⽤する企業は少なくありません。もとは旧約聖書で神が6⽇間働き世界を創造した後、7⽇⽬を安息⽇(=サバティカス)とした故事にならったものです。

 

「フランス⼈のバカンスは長い」と聞いたことはありませんか?あれはバカンスを過ごすのも夏休みとサバティカルをあわせて利⽤するからなんですね。

 

──ヨーロッパでなじみのある制度がベースなのですね。自社で「サバティカル」を採用するときにアレンジしたところはありますか?

 

⼤野さん(アレックスソリューションズ):

せっかくの⻑期有給休暇なので、⾏き先は⾃由なのですが、海外を放浪することを奨励しました。その結果、普段時間がなくて行けない場所に行く社員が増えましたよ。

 

──実際にどのような場所へ行かれているのですか?

 

⼤野さん(アレックスソリューションズ):

たとえばボリビアのウユニ湖やメキシコ・テオティワカン、バルト3国周遊、中にはオーロラを⾒に⾏く社員もいましたね。 会社にとっては退職防⽌の対策ではありましたが、社員にとっても、会社を辞めることを覚悟してまで旅に出る必要がなくなり、離職の⼼配をせずにもっと気軽に旅を楽しむことができるようになったのではないでしょうか。

「フリーバカンス制度」は会社にどのような恩恵をもたらしたのか

──これまで何名くらいが「フリーバカンス制度」を利用されましたか?

 

⼤野さん(アレックスソリューションズ):

社員180人中50人くらいですね。

 

この制度は1年勤務をするごとに利⽤権利が発⽣しますが「フリーバカンス制度」を利用するには、もちろんお客様に迷惑をかけないことが⼤前提です。前回休暇を取得した時から1年経ったからといってプロジェクトの途中でも「フリーバカンス制度」を利用してプロジェクトを抜けて休暇を取っていいわけではありません。

 

社員はひとつのプロジェクトが終わり次のプロジェクトへ移⾏する際に、リフレッシュをかねて「フリーバカンス制度」を利用した休暇を取るので休暇利⽤者は年間20⼈ほどですね。この割合で、順次全社員が取得することを⽬指しています。

 

──「フリーバカンス制度」を取った社員の方々には、どのような変化がありましたか?

 

⼤野さん(アレックスソリューションズ):

⼀旦仕事を離れることで⾃分の仕事を再確認することができる、という話をよく聞きますね。 「⾃分は何のために働くのか」「⾃分にとって⼈⽣の中で優先順位が⾼いものは何なのか」「⾃分はこれから何をしたいのか」など、仕事を離れて海外のビーチや⻘空の下で、もう⼀度⾃分の仕事に対するスタンスを確認し、理解した上で復帰する社員もいるでしょうね。

 

自分を客観的に見直すことができる社員は「フリーバカンス制度」を利用して旅行などをすることで、どんな研修よりも成⻑して戻ってくるように感じます。 働き⽅を変えるなら働き⽅へのマインドを変えることが重要であり、「フリーバカンス制度」は働き⽅のマインドを変える絶好の機会になっているんです。

 

──「フリーバカンス制度」を導入したあと、会社の雰囲気や業績に変化はありましたか?

 

⼤野さん(アレックスソリューションズ):

単なる海外旅⾏よりも深い海外体験が会社にいながら実現できるようになったようです。その結果、仕事への意欲やリフレッシュ効果が得られ「また旅に出られるようにがんばろう」という勤続意欲も増加したんです。

 

実際に離職率が⼤幅に改善され、業績も⼤幅に拡⼤しました。求⼈応募の数も増加し、1か⽉分の給料をほぼ休業にも関わらず全額⽀給しても、余り有る業績が出ています。 

 

──素晴らしい成果ですね。「フリーバカンス制度」はこれから会社にとってどのような位置づけになっていくと思いますか?

 

⼤野さん(アレックスソリューションズ):

当社の業務はさまざまな国籍のエンジニアとプロジェクトを進めることが多いです。そのため「フリーバカンス制度」を利用した長期休暇での多様な地域への滞在経験は、各国のエンジニアの特性や⽂化を理解するのに役立っています。さまざまな⽂化への理解があることで、プロジェクトの進捗度合があがり、労働⽣産性も⾼まり、お客様からの⾼評価につながっています。

また「フリーバカンス制度」を知り「⾃分もフリーバカンス制度を使って仕事をしながら旅したい」という⼊社希望者が増え、採⽤率も向上しました。⼈材不⾜と⾔われる中、当社は毎⽉4、5⼈を新規採⽤しています。⼈材確保策としても、「フリーバカンス制度」は有効な手段となりつつありますね。 「フリーバカンス制度」は、当社にとっては単なる休暇制度の延⻑でなく、⼈事戦略、採⽤戦略、成⻑戦略の要となっていますよ。

 

… プロジェクトが終わったタイミングで、1年ごとに利用できる「フリーバカンス制度」。雇用が確保されているからこそ、自分の仕事のやり方や働き方を客観的に見直すことができるのでしょう。「フリーバカンス制度」は会社員の働き方を大きく変える有効な手段となっていくのかもしれません。

 


【会社概要】

社名:株式会社アレックスソリューションズ
従業員数:180名
設立年月日: 2007年
業種:人材サービス
事業内容:グローバルエンジニアリング、海外研修事業

 

取材・文/新井しのぶ