寝不足な日本女性

日本人は世界的に見ても睡眠時間が短く、「睡眠不足大国」と呼ばれていることをご存知でしょうか?特に女性の睡眠不足は深刻で、大きな社会問題となっています。  

 

「思うように仕事がはかどらない」「イライラしてつい子どもに当たってしまう」「頑張りたくてもやる気が出ない」そんな症状に悩まされている人は、睡眠がたりていない可能性が大。世界中の研究機関の論文やデータからも、睡眠不足は、心身にさまざまな不調を与えることがわかっています。

 

CHANTOWEB9月のオピニオン特集は、こうした女性の睡眠問題についてとり挙げます。第1弾となる今回は、老舗寝具メーカー「昭和西川」の代表取締役副社長で睡眠研究家の西川ユカコさんに、近年の日本人の睡眠事情とその社会的背景についてお話を伺いました。

世界で一番睡眠不足なのは日本人女性          

——睡眠が大切なことは何となくわかっていても、毎日やることがたくさんあって長く寝る時間がない!というのが、私たちの実情です。やはりこの世代は、睡眠がたりていない人が多いのでしょうか。

 

西川さん:

そうですね、OECD(経済協力開発機構)加盟国のうち、日本人の睡眠時間は残念ながら最下位。先進国の中でもっとも眠れていないのが日本人です。

 

さらに、厚生労働省が発表した「国民健康・栄養調査」によると、男性よりも女性の方が睡眠時間は少ない傾向にあり、4050代女性の半数が1日の睡眠時間が6時間未満だと報告されています。

 

人種を問わず、2664歳の理想の睡眠時間は79時間。半数が6時間未満という現象は、かなり深刻な状況といえます。

 

——40〜50代の女性の睡眠時間が少ない背景には、どのようなことが考えられるのでしょうか?

 

西川さん:

晩産化が進み、30代で初産という人も増えているため、4050代の女性はまだまだ子育て真っ只中。それに加え、親の介護がはじまる世代でもあるので、「仕事」「育児」「介護」に追われ、睡眠時間が確保できない人が多いようです。

 

30代の働くママたちは、これからそういう現実が待っていることを念頭に入れ、将来を見据えた対策を考えておく必要があります。

 

——パートナーの協力が必要不可欠といえそうですね。

 

西川さん:

その通り。パートナーと負担を分け合うことが大切になってきます。しかし、OECD加盟国の中で、日本人男性は家事や育児をする時間が最低レベルであることがわかっています。

 

日本人が家事に費やす時間は、男性が41分で女性が224分、その差はなんと183分。世界で最も家事時間の男女差が短いスウェーデンは、男性が171分で女性が220分、その差は49分です。OECD加盟国の平均を見ても、男性が136分で女性が218分、男女差は82分なので、日本人男性がいかに家事をしていないかが、このデータで浮き彫りになっています

(OECD加盟国のうち、非公表の一部地域を除く数値を編集部で集計)。

 

女性の社会進出が進んで働く女性が増える一方で、諸外国に比べて男性の家庭進出はなかなか進まず、共働きなのにワンオペ育児に近い状態の家庭が多いのが実情なのだと思います。

 

——なんだか残念な結果ですね。世界的に見ても、男性より女性の方が睡眠時間は少ない傾向にあるのでしょうか。

 

西川さん:

男性より女性の方が睡眠時間の長い国もたくさんありますよ。ただ、家事や育児の負担が女性に偏っている国ほど、女性の睡眠時間が短いという傾向が出ています。

 

OECDの調査によれば、インドや韓国などは男性よりも女性の方が睡眠時間が短く、欧米諸国では女性の方が睡眠時間が長いことがわかっています。インドや韓国も、長年女性が家事を担ってきた文化圏ですので、そうした国ほど女性は眠れていないということが、この調査で明らかになりました。