共働き時代に合った私らしい生き方・働き方を模索するCHANTO総研。

 

新型コロナウイルスの影響でリモートワークを導入する企業が増えていますが、2014年の創業当初から全メンバーでリモートワークを実現している会社があります。日本初のオンラインアシスタントサービス「CASTER BIZ」をはじめ、現在15の事業を展開し、成長を続ける株式会社キャスターです。

 

広報と人事を担当する勝見さんに、リモートワークをする上で大事にしていることを伺いました。

 

PROFILE 勝見彩乃さん

PR/人事 執行役員。創業期のアトラエに参画し、求人サイトgreenの立ち上げや人材紹介事業に従事。その後入社したワークスアプリケーションズでは、人事として新卒・中途・海外大生採用を始め様々な採用に携わり、プロジェクトリーダーを務め、年間数千名規模のインターンシップ・数百人規模の採用に貢献する。ベンチャー企業での人事・広報部の立ち上げを経て、2017年に株式会社キャスター入社、2020年1月執行役員に就任。人事・総務部、PR部を統括し、リモートワークの組織作りと普及に奔走。パラレルワーカーでもある。

 

──緊急事態宣言を受け、リモートワークを導入する企業が増えましたが、キャスターは創業当初からほぼ全員がフルリモートワークをされているんですよね。

 

勝見さん:

そうなんです。当社は「リモートワークを当たり前にする」というミッションを掲げて創業した会社なので、そもそもリモートワーク前提で事業がスタートしているんです。

 

なぜこのようなミッションを掲げたのかというと、当社の代表である中川が当時勤めていた会社で、クラウドワーカーの方々と一緒に仕事をする機会があったのですが、すごく優秀なのに時給に換算すると100円未満という人がたくさんいて。オンラインだとそのスキルを十分生かす仕事がなかったり、不当に時給が低くなっていたんですね。

 

そのことに衝撃を受け、誰でも当たり前にリモートワークという働き方をしながら、当たり前に仕事ができる状態を作っていきたいと思い、この会社を立ち上げたのです。

 

──勝見さんは2017年入社とのことですが、なぜキャスターを選ばれたのですか?

 

勝見さん:

キャスターを知ったのはちょうど結婚を決めたタイミングだったのですが、結婚すると自分の時間が少なくなるイメージがあって。その中でいかに効率的に仕事をしていくかを考えたときにフォーカスしたのがリモートワークだったんです。

 

──以前勤めていた出社型の働き方と比べていかがですか?

 

勝見さん:

私にはリモートの働き方がすごく合っているので、正直なところ、フルタイムでフルに出社するという働き方にはもう戻れないなと思っています。身支度をして出勤する時間、だいたい毎日23時間がまるっと他のことに使えるので、生活がすごく効率的になりました。入社前からパラレルワークをしたいと思っていたので、浮いた時間をパラレルワークに当てられるところもすごくよかったですし、子どもが生まれてからは保育園のお迎えや日常を一緒に過ごす時間を持つことができ、子どもとちゃんと向き合えるのもいいなと思いながら過ごしています。

 

デメリットに感じているところはあまりなくて、強いてあげるなら、ついでの外出が減ったことと、運動量が減ったところですね。

 

──リモートワークでの運動不足は世間でも話題になっていますが、御社ではオンラインフィットネスを導入されているんですよね。

オンラインフィットネスに参加する様子。現在、フィリピン在住のトレーナーが指導している

 

勝見さん:

社内アンケートをとってみたところ、約8割のメンバーが「リモートワークで運動量が減ったと感じている」ことが分かったんです。そこで20197月にオンラインフィットネスを導入し、月に数回、130分を2サイクル、プロのトレーナーに筋トレやストレッチの仕方を教えてもらっています。

 

スケジュールは人事が決めていて、参加したい人は予約シートに記入し、時間になったらZoomで参加します。30分で終わりにしてもいいし、2サイクルやってもいい。自分の姿は映さなくてもいいので、気軽に参加することができます。

 

メニューは、座りっぱなしのPC作業からくる腰痛や肩凝り解消のための下半身・上半身強化を重視したトレーニングが中心ですが、同じ姿勢で体が固まって頭が痛くなることもあるので、頭痛解消に特化したものを行うこともあります。

 

参加したメンバーからは、「運動するいいきっかけになった」「この制度を使うことで運動不足が少し解消できた」といった声をもらっています。

 

──フルリモートの会社でありながら、部活動もあると聞きましたが、どのような活動をされているんですか?

 

勝見さん:

発起人が部長となって部員を募り、一定数以上集まったら部活動化するというものなんですけれども、現在30グループくらいあるんです。活動時間は、基本的に日中の休憩時間や就業時間後で、オンラインで集まったり、部活ごとのチャットグループで会話したり。部活といっても定期的な活動が定まっていることはほとんどなくて、空き時間に好きに活動してもらっています。

 

ちなみに私は「パパママおしゃべり部」と「オンライン飲み会部」に入っています。例えば直近では、学校や保育園の休校・休園があって、子どもを持つメンバーは家に子どもがいる状態で仕事をするケースがほとんどだったんです。当社では仕事の生産性を上げるために、勤務中は子どもを保育園や学校に預けてもらっているのですが、今回は非常事態。やはり、仕事をしている間、子どもに何をしてもらったらいいか、すごく苦労していました。でも、部活のチャットグループで「トランポリンがよかったよ」「ダンボールで工作してたよ」というように子どもの過ごし方のアイデアを共有できたことで、「お互い頑張ろう」という気持ちで過ごすことができました。

 

──同じような状況下にいるメンバー同士が励まし合えるのっていいですね。子どもがいるとやはり働く上で大変な部分もあると思いますが、ベビーシッターの補助制度もあると聞きました。

 

勝見さん:

託児所がある会社さんもあると思うんですけど、当社のメンバーはいろんな地域に住んでいるので、自宅での保育をサポートするためのものとしてベビーシッター代を上限3万円まで会社が負担するという補助制度があるんです。私も普段は子どもを保育園に預けているのですが、ちょっと熱があって預けられない時など、病児保育可能なシッターさんにお願いして、自宅で子どもを見てもらいながら仕事をすることができています。 シッターさんの単価は高いので保育園代わりには難しいのですが、一時的な補助にするとか、病児保育の代わりとして使うとか、そういう使い方ができるのは助かりますよね。

 

──保育園以外の選択肢を持てるのは、いざという時にも安心ですね。フルリモートワークだとコミュニケーションがあまり活発でないイメージもありましたが、部活動やフィットネスなど楽しそうですね。

 

勝見さん:

当社ではコミュニケーションをとても大切にしていて、創業当初からすごく気をつけているんです。

 

オフィスの中での会話は大きく分けると、一般的な業務連絡、プライベートな雑談、これらの中間に位置するちょっとした相談の3種類に分けられると思うのですが、リモートワークでは雑談とちょっとした相談が減る傾向にあります。その要因のひとつは、Zoomのようなウェブ会議システムを使わずに、メールと電話だけで連絡しているというようなツールの問題があります。電話だと11のコミュニケーションに限定されてしまうし、メールだとちょっとした連絡はしにくかったりしますよね。

 

もうひとつの要因としてはツールの使い方の問題があります。個別チャットだけ使って、グループチャットを使わないケースが実は結構あるんです。個別チャットをオフィスに置き換えると、いきなり別室に連れて行かれて話すようなもの。それってちょっと怖いですよね(笑)。なので、当社では部門ごとのグループチャットを作って、その中で会話をすることを推奨しています。グループチャットなら誰がどういう話をしているのか周りもわかるので安心です。あとは雑談用のチャットグループも作って、プライベートな話もしやすいよう工夫しています。

 

リモートワークで諦めた方がいいのは、察せないし、察してもらえないということ。例えばちょっと体調が悪くても、上長や周りにはその苦しんでいる姿が見えないわけですから察することってできませんよね。メンバーには、「今日はちょっと体調が悪いです」とか「早めに休みます」など、自分の状況や思ったことなどはちゃんと言ってほしいと伝えています。

 

──リモートワークだからこそ、意識的に雑談などをする場を設けることが大切なんですね。

「cluster」の中にイベント空間を作り、イベントを開催する

 

勝見さん:

当社では、全社的なイベントもオンラインで行います。年2回、一般的にホテルなどで行うような全社総会をバーチャルイベント空間「クラスター」の中にイベント会場を作って、そこでみんなで集まるんです。経営陣から会社の方針を話したり、業績の発表をしたり、クイズ大会などもします。

 

アバターでみんなが集まって面白いんですよ。普段はあまり会社の規模を実感することもないので、「こんなに仲間がいるんだ」って視覚的に見ることができるいい機会にもなりますね。自分のリアクションを出したりすることもできるので、場としての一体感も生まれるんですよ。

 

・・・ リモートワークだからこそ、コミュニケーションを意識的に取ることや、仲間意識を醸成する仕組み作りの大切さがわかりました。

 

リモートワークで孤独を感じる人もいる中、キャスターの取り組みは参考になるのではないでしょうか。

 

取材・文/田川志乃 取材協力/株式会社キャスター