共働き時代に合った私らしい生き方・働き方を模索するCHANTO総研。

 

名刺を起点としてビジネスの出会いを変えることを目指し、クラウド名刺管理サービスを開発・提供しているSansan株式会社。働くママ社員のリアルな声を集約した革新的な制度がここにあります。

 

それは、保育料から保育園の通園タクシー代までも補助する制度「MOM」。制度設計を主導した人事部副部長の我妻さんに話を伺いました。

育休明けにスムーズに復帰できるための制度「MOM」

制度名称:MOM(産前産後休業・育児休業取得者の早期職場復帰を後押しする支援) 導入開始日:2017年10月より実施中 対象者:産前産後休業・育児休業を取得した社員 今までに利用した人数: 計25名(保育園費用補助:17名、保活コンシェルジュ利用8名)

 

教えてくれたのは…

Sansan 株式会社 人事部 副部⻑ 我妻小夜子さん

神田外語大学卒業後、商社に入社し窓口営業を経験後、人事部総務部で新卒採用に従事。2013 年 12 月に Sansan 株式会社に入社し、社内制度を中心に、人事評価関連、障がい者採用などを担当。人事部 Employee Success Group の責任者を経て現職に。

 

 

——Sansanでは、産休・育休を取得したメンバーがスムーズに職場復帰できるための様々な補助が受けられる制度「MOM」があると聞きました。これはどんな制度なのでしょうか。

 

我妻さん(Sansan):

保育園料の補助やタクシー代補助を通して、認可保育園に比べて高額な預け先や、自宅から離れた預け先への入園・通園支援を行います。対象者は産休・育休を取得した社員全員です。

 

——保育料の補助とは、子育て世帯には非常にありがたいですね。具体的な補助内容を教えてください。

 

我妻さん(Sansan):

保育料に関しては、認可・認可外に関わらず、満3歳を迎える月までの保育園料を全額補助しています。タクシー費用は保育園が通勤ルートから外れる場合に、月額4万円まで補助を受けられます。

 

併せて、保育園は入るまでの費用もサポートしています。認可外保育園への入園申込みにかかる予約金は10万円まで、外部サービスの保活コンシェルジュ(保活代行サービス)は全額会社負担で利用できます。

 

子どもの預け先の確保は、会社にとっても喫緊の課題

——保育園に入れるかどうかは、働くママにとって大きな悩みの種。保活サポートもあるとは手厚いですね。この制度が生まれた背景には何があったのでしょうか。

 

我妻さん(Sansan):

当社は、「出会いからイノベーションを生み出す」というミッションのもと、クラウド名刺管理サービスの開発・提供を行っています。当社のすべての人事制度は、社員の生産性や創造性の向上を通して、このミッション実現につなげることを目的に設計しています。

 

社員の平均年齢が 30 代前半ということもあり、産休・育休を取得する社員が年々増加していました。社員が多く居住する都市部では保育施設の入園倍率が高く、早期の職場復帰を社員本人が希望した場合でも、子どもの預け先が見つからないことを理由に長期で休業せざるを得ないケースが発生していたんです。

 

事業成長において、社員一人ひとりが大きな役割を担っています。子どもの預け先の確保は、会社にとっても喫緊の課題となっていたため、制度として後押しができないかとリサーチやヒアリングを重ね、「MOM」が誕生しました。

 

預け先の選択肢が広がり、スムーズに復帰できるケースが増えた

——社員の生産性を突き詰めて考えたからこそ、ここまで全網羅的なサポート制度ができたのですね。「MOM」を導入してからはどのような効果が出ていますか?

 

我妻さん(Sansan):

認可外の保育園や、自宅から離れた預け先も選択肢に入れられるようになり、スムーズに復帰できるケースが増えました。「ママでも思い切り働きたい」という希望を会社としても後押ししたい——その思いが制度を通して社員に伝わるので、エンゲージメントの向上にもつながっています。

 

また、早期復帰支援策は「会社が自分を必要としてくれている」というメッセージに繋がり、長期間職場を離れていた“浦島太郎”的な疎外感や不安が緩和され、復帰時の立ち上がりのよさを後押ししていると感じています。

 

——育休明けに職場に戻ることはただでさえ不安要素が多いと思います。その中で、保活問題などに会社も向き合ってくれる仕組みなんですね。利用した社員からはどんな声が聞かれますか?

 

我妻さん(Sansan):

「保活コンシェルジュに保育園情報をリサーチ、レポートを代行してもらえて他の仕事や家事に時間をあてられた」、「補助のおかげで高額でもアクセスの良い希望の施設に預けることができた」、「タクシー補助があることで、会社と逆方向にある施設に預けられた」などの声があがっています。

 

——「MOM」の制度は、子どもの預け先の選択肢を広げてくれるのですね。今後はどのようなことが課題になるとお考えでしょうか。

 

我妻さん(Sansan):

組織が急拡大フェーズにあり、社員が増えればさらに多様なケースが出てくると想定されます。また、コロナのこともあり、世の中全体の働き方やライフスタイルが急激に変化しました。組織の状況と時流、それぞれに応じ、制度のアップデートは必要になった際には迅速に対応していきたいです。

 

 

わが子を安心して任せられる保育環境を選びたい——復職の際は誰もがそう願うもの。「MOM」の制度によって、妥協することなく納得のいく選択ができることで、社員の会社に対する信頼度は増すに違いありません。社員の思いに寄り添った現実的なサポートこそが、会社への貢献意識を高め、事業成長や利益を生み出していくのではないかと感じました。

 

 

【会社概要】

社名:Sansan 株式会社

従業員数:713名(2020年5月末時点)

設立年月日:2007年6月11日

業種:インターネット

事業内容:クラウド名刺管理サービスの企画・開発・販売

 

取材・文/川口香織(mugichocolate株式会社)