共働き時代に合った私らしい生き方・働き方を模索するCHANTO総研。

 

「みんなが知ってるあのサービス、実はゆめみが作ってます」。サイトに記された言葉の通り、国内の名だたる企業のデジタル支援を行っている株式会社ゆめみ。最先端の技術で価値提供をし続ける企業ならではの革新的な取り組みが、ここにはあります。

 

それは、年次有給休暇とは別に有給休暇を無制限に取得できる「有給取り放題」と、業務時間の10%(3か月で48時間目安)であれば、自分の好きな研究に時間を費やすことができる「10%ルール」。同社を設立し、現在も代表取締役として活躍中の片岡さんにお話を伺いました。



育児も介護もリフレッシュも。無制限に有給取得可能な「有給取り放題」制度

制度名称:「有給取り放題」「10%ルール」 導入開始日:「有給取り放題」は2018年より、「10%ルール」は創業初期より 対象者: 社員(両ルールともに) 今までに利用した人数:「有給取り放題」は特に数値なし/「10%ルール」は全社員の4割程度

株式会社ゆめみ代表取締役 片岡俊行さん

京都大学大学院情報学研究科在学中の2000年1月、株式会社ゆめみ設立・代表取締役就任。在学中に100万人規模のコミュニティサービスを立ち上げ、その後も1000万人規模のモバイルコミュニティ・モバイルECサービスを成功させる。 また、大手企業向けのデジタルマーケティングの立ち上げ支援を行い、共創型で関わったインターネットサービスの規模は5000万人規模を誇り、スマートデバイスを活用したデジタル変革(DX)を行うリーディングカンパニーとしてゆめみグループを成長させた。

 

 

——「有給取り放題」という思い切りのよさにまず驚きました。本当に無制限なのでしょうか。

 

片岡さん(ゆめみ)

:はい、そうなんです。有給休暇を無制限に取得することができて、傷病、育児、家族の看護・介護など、休暇の目的は制限していません。もちろんリフレッシュのために利用することも可能です。

 

——導入のきっかけは何だったのでしょうか?

 

片岡さん(ゆめみ)

:ゆめみでは、個人事業主やフリーランスの方とも、パートナーとしてお付き合いをしています。以前、ご家族の看護・介護などの理由で働き続けられなくなったパートナーの方がいました。どれだけ本人が健康であったとしても、親御さんなどの看護・介護によって、本人が働き続けることが難しくなる。そんな事実を知り、「社員として働く人に対して、ゆめみは何を提供できるだろう」と考えた結果、有給取り放題制度が生まれました。

 

働く人の事情に寄り添う施策が功を奏し離職率が改善

——社員や働く人を取り巻く様々な事情に沿った制度として生まれたのですね。制度を始めてから、何か変化はありましたか?

 

片岡さん(ゆめみ)

:制度を導入した後、離職率が10%から4%に改善しました。もちろん、有給取り放題制度が離職率改善のすべての理由ではありませんが、制度が利用されている状況を見ると、理由の一つであることは確かです。

 

また、有給取り放題制度は入社して法定有給が付与される半年までの期間にお休みをする場合にも利用できるため、新しく入社した社員が気兼ねなく利用できていると思います。

 

——それは目に見える大きな変化ですね。

 

片岡さん(ゆめみ)

:「介護も育児もまだ先」と言っていた社員が、先日、病気で入院することになり、有給取り放題を利用していました。入院が長引く可能性もあったのですが、「有給取り放題があることで、療養に専念できた」と聞いています。とはいえ、いざ利用したい状況になっても、抱えている仕事との兼ね合いで利用を躊躇してしまう場面もまだ見られます。もっと気兼ねなく利用できるようにしていきたいですね。

 

なお、利用率は特に出しておらず、そういった意味でも社員たちの裁量にまかせています。実際、利用者が増えた結果、業務に支障が出るような事態には陥っておらず、健全に利用されていると思います。大事なのは、やむを得ない事情で休まなければならなくなった時にも安心して休める環境があることです。社員や家族が健康でいることが一番なので、利用者が少ないほうがいい制度と言えるかもしれません。

 

業務時間の10%を自分の好きな研究に使える「10%ルール」の取り組み

——「10%ルール」についても教えてください。

 

片岡さん(ゆめみ)

:「10%ルール」は、業務時間の10%(3か月で48時間目安)であれば、自分の好きな研究に時間を費やすことができます。研究開発や事業開発のために作った制度です。直接的に事業貢献、プロジェクト貢献につながらない研究であっても、中長期的な投資として10%は自分の好きな研究に時間を費やすことができるようにしています。

 

——業務時間で好きな研究に取り組めるというのは魅力的ですね。利用にあたって何か決まり事はありますか?

片岡さん(ゆめみ)

:「アウトプットする」をルールにしています。アウトプットの手段はnoteやQiita、社内勉強会での発表など、本人が決めることができます。学んだことをアウトプットすることで、自分が理解したことの整理につながり、さらに他の人のインプットにもつながります。もともとアウトプットすることへの抵抗がない人が多いので、ゆめみにマッチする制度だと思います。

 

——研究好きな人が多いのでしょうか。書籍やDVDの購入をはじめ研修やセミナーなどの費用を全額会社が負担する「勉強し放題」制度も利用率がとても高いと伺いました。

 

片岡さん(ゆめみ)

:そうですね。当社では業界を問わず様々なサービスの支援を提供しています。その際、社員一人ひとりが貢献できるように分野問わずインプットをする習慣が身に付いているんです。

 

制度に関するアンケート結果より。今回紹介した「有給取り放題」「10%ルール」以外にも、興味深い制度が多くある。

 

社内勉強会やイベントで「研究の土壌」が生まれる

——もともと研究好きな人が多いゆめみにおいて、「10%ルール」の導入にはどのような効果を感じますか。

 

片岡さん(ゆめみ)

:最近変わってきたなと感じるのは、オフィスでの勉強会や社内イベントで利用されるようになったことです。独学ではなく、アウトプットを中心にしたものが増えてきたということですね。20人以上を巻き込んだ社内イベントなども開催されていますが、みんな楽しそうなんですよ。

 

社内の人がどんな研究開発をしているのか目に触れる機会が増えたことで、他の社員への制度の利用促進につながっています。研究開発を行ってこなかった人が利用する機会も、徐々に増えています。

 

——一部の人のための制度から、社員全体のための制度へと変わりつつあるのですね。

 

片岡さん(ゆめみ)

:ゆめみでは企業のデジタル施策のサポートを行うことが多く、最先端の技術はもちろん、様々な知見が求められています。自己の能力向上に対する投資は必須です。そう考えると、全体で4割の利用というのはまだ少ない。社内での周知をはかって、利用者を増やしていきたいですね。

 


「有給取り放題」や「10%ルール」というユニークな制度で知られるゆめみ。自由度が高いワークスタイルを実現したこれらは、実は社員がパフォーマンスを最大限に発揮するために考え抜かれたものでした。これからも数々のアウトプットから生まれるサービスで多くの企業を支えていくのでしょう。

 


【会社概要】

社名:株式会社ゆめみ

従業員数:230名(契約社員含む)

設立年月日:2000年1月27日

業種:デジタル支援業

事業内容:モバイルサービスを主とした受託開発・制作・コンサルティング、オムニチャネルを中心としたデジタルマーケティング支援、スマホアプリ開発(iOS,Android)、デジタルメディアコンテンツ運用/自社サービス運営

 

取材・文/八田 吏(mugichocolate株式会社)