
『ムーちゃんと手をつないで』は、初めて授かった娘が自閉症と診断され、葛藤しながらも前へ進んでいく家族の姿を描いた物語です。
「自閉症の子育てのリアル」を理解する足がかりにもなる同作は、みなと鈴さんの実体験がベースになっているとのこと。
ムーちゃんのモデルとなった中学1年生の長女と、定型発達(発達障害ではない)の小学1年生の次女の姉妹を育てる作者のみなと鈴さんに、お話を聞きました。
PROFILE みなと鈴さん

自閉症育児の実体験をマンガに

みなとさん:
長女のことをここでは仮で「ムー」と呼ばせてください。ムーが自閉症と診断されたのは、2歳4ヶ月のときでした。最近では診断名も変わって、自閉スペクトラム症とかASDと呼ぶそうですが、10年前は「自閉症」と呼ばれていました。現在、ムーは中学1年生になりました。好きなことは、iPadで手遊び動画や幼児番組を見ること。家にいるときは、紙をちぎったり、自分のアルバムを見たりして、のんびり過ごしています。学校では歌やダンスに積極的に参加しているそうです。先日の知能検査では知能レベルは2歳10ヶ月ほどと聞きましたが、納得しています。
食事はおおむね自分でできますが、排泄や入浴に関しては声掛けや着替えの手伝い等、介助が必要です。夜間や長時間の移動時には、まだ紙パンツを使用しています。
会話はイエスかノーで答えられるような簡単なやり取りはできますが、明日の予定を理解させるなど、それ以上のことはできません。
——6歳下の次女さんは定型発達児(発達障害ではない子ども)だそうですが、姉であるムーちゃんとどんなふうに接しているのでしょうか。
みなとさん:
仲良く遊んでいることもあれば、顔や腕をつねられて「ムーちゃんなんか嫌い!」と怒ることもあります。ムーに他人をつねったり叩いたりしてしまう他害行為(他人や器物を傷つける行為のこと。発達障害などを持つ子どもに多いとされる)がまだあるため、その対象が妹になってしまうことも多々あります。私や夫も気をつけているのですが、姉妹が一緒にいる時間が長くなるとどうしても防ぎ切れず…。
ただ、私がムーを叱っていると姉をかばったりもするので、他人や親子とは違う、姉妹だけの複雑な情があるのかな、とも感じます。