ウィズコロナ時代、これからの家族のあり方は?
──ステイホーム中、家族といることがストレスになり、そんな自分に罪悪感を覚える人もいました。
山極さん:
家の中に家族がこもっていてストレスがたまるのは、実は当たり前のことなんです。家族というのは、体の能力や心が違う人たちの集まりであり、個性の違う者同士が一緒にいるにはお互いに自分を抑制しなくてはなりませんから。だからそれを解消する出口や隙間が必要です。
もともと、たくさんの大人が共同で子どもを育てるようになっているのが人間です。家族というのはそれだけで閉じこもっていられる社会単位ではないんです。家族は常に開かれていて、ほかの家族と付き合うのが自然なのです。
昔は隣近所や親戚と付き合って暮らしていましたよね。子どもたちは隣の家で気軽にご飯を食べさせてもらったり、そこの子どもたちと一緒に遊んだりできました。その分、親もストレスを紛らわすこともできたし、自分の悩みを相談できる相手もいた訳ですよね。今はそういう近所付き合いはなくなってしまっているから、なるべく家族が複数で付き合えるような場に行くことを考えてみるといいでしょう。
スマホにのめり込み過ぎないよう注意しながら、最新機能を上手に使って、他の家族、仲間たちと映像や音声でつながりを保ちましょう。とにかく子育てを親だけが抱え込まないことです。家族は孤立しちゃいけないんですよ。
──家事に育児に忙しく、疲れているママ、そしてパパに励ましの言葉をいただけますか。
山極さん:
僕も子育てをしたけど、後から考えると一生の中で一番貴重な時間を過ごしていたなぁと思います。子どもが一番可愛い時だし、反面憎たらしい時でもある。でも子どもにとっては、親がすべてという時で。そういう日々は一生の中でわずかしかないので、「子どもに時間を奪われている」のではなく、「子どもの時間を与えられている」と捉えてみてはどうでしょう。今だけの、かけがえのない時間を大切にしてくださいね。
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今回のコロナ禍による「ステイホーム」期間は、働き方だけでなく、オンラインコミュニケーションについても考えるきっかけになりました。子どもの非言語コミュニケーション力を伸ばせるよう、音楽・ダンスや工作、自然と触れ合う機会を積極的に作っていきたいですね。
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取材・文/鷺島鈴香 撮影(山極寿一氏分)/楠本涼